ベトナムの地理についてまとめました。
これくらい理解しておけば高校地理レベルとしては十分!
…なはず(リスクヘッジ)
※もっと突っ込んだ内容や理解の仕方・教え方の工夫については、別ブログ「社会科プラス」でまとめます。ぜひそちらもご覧ください!
ベトナムの地形と位置
ホン川とメコン川
北のホン川(紅河)、南のメコン川。
東南アジア最長の河川であるメコン川の方が圧倒的に重要です
細かい知識なので受験的には覚えなくていいと思いますが、
ホン川は首都ハノイのすぐそばを流れます。
メコン川は経済都市ホーチミンから南に80kmくらい離れたところを流れます。
※メコン川の河口部にはものすごく大きな三角州(デルタ)が発達しています。治水が大変すぎる+砂の堆積により水深が浅く港が作りにくいから、メコン川の河口部には大都市ができなかったのかも?
※ホーチミンにはサイゴン川が流れます(受験的には重要ではないですが、サイゴン川が流れていて物流面で便利だったのでホーチミンが発展した、という意味でサイゴン川は重要河川です)
大きな山脈があるところとないところ
- 現在、中国との国境となっている地域(北東の方角)には大きな自然障壁がありません。(←大山脈がない)
- ベトナムとラオスの間には大山脈があります。
- 中部には山脈が広がっています。
- ベトナムとカンボジアの間には大山脈がありません。
だからこそ…
- 紅河デルタを中心とする北部地域は中国の影響(圧力)を受けやすかった
- 西方向の防御は固い
- 山岳地帯に住む独自の社会集団が形成されやすかった(チャンパー)
- タイ、カンボジア、ホーチミン付近は一体的に支配されやすかった(アンコール朝)
→中高地理レベルでは覚える必要はありませんが、ベトナムは北部・中部・南部の3つの勢力に分かれている期間が長く、1800年ごろにやっと統一されました(→現代のベトナムとほぼ同じ領域)。
赤道が通る場所
ベトナムは赤道から結構離れています。
ベトナムは北緯20度〜北緯10度くらいに位置する(北ベトナムと南ベトナムは北緯17度線で分割されました)
狭まる境界からは離れている
ベトナムは変動帯からは割と離れています。
ユーラシアプレートとインド・オーストラリアプレートの境界、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界
なので、地震や火山活動は少なめです。
ベトナムの気候
北部:温帯夏雨気候(Cw)
南部:サバナ気候(Aw)
※雨季は5〜10月(スコールあり)
ベトナムの歴史
全土の統一
ベトナムは長いこと北部・中部・南部に分かれていましたが、
阮福映という人が1802年に全土を統一しました。(阮朝)
フランス領インドシナ連邦としてフランスの植民地に
1887年、ベトナムはカンボジアとともにフランス領インドシナ連邦として支配されることになってしまいました。(1899 ラオス編入)
この影響で、現在でもフランスの文化が残っています。
「ほら、だからフランスパンを使った料理(バインミーっていうサンドイッチ)が国民食なんだよ!」ってのはベトナムの定番ネタです。
フランスはフランス本国への奉仕のために植民地の経済構造を再編しました。
北部・中部・ラオス・カンボジア | 鉱山開発、コーヒーやゴムのプランテーション |
---|---|
南部 | 輸出米の生産 |
※ベトナム南部のメコンデルタは世界三大米輸出地になった
独立運動
フランスの植民地支配から脱却するため、ベトナム人は数々の抵抗運動を起こします。
情勢が大きく動いたのは、第二次世界大戦の頃。
大東亜共栄圏だと息巻いて東南アジアにに進出してきた日本が降伏したタイミングを見計らって、ベトナム人はベトナム民主共和国の独立を宣言しました。
しかしフランスは認めず。そして国際社会からも承認されず。
連合国は日本軍の武装解除のため、北緯16度線を境として北部に中国国民党軍、南部にイギリス軍を進駐させました。
インドシナ戦争(1946〜54)
1946年、ベトナム北部にフランスが戻ってきたのを機にベトナムとフランスの間で戦争が起きました。
- 1949年10月、中華人民共和国が成立
- 1950年、中華人民共和国・ソ連が北ベトナムの勢力(ベトミン政府)を承認し支援
- 1954年、ディエンビエンフーでフランスが大敗
1954年にジュネーヴ休戦協定が結ばれ、フランスはベトナムから撤退。
北緯17度戦を暫定的軍事境界線としてベトナムは南北に分割され、2年後に南北統一選挙を行うことが約束されました。
アメリカの介入とベトナム戦争
ところが!ベトナムで統一国家が誕生するかと思いきや・・・
アメリカ合衆国はジュネーヴ休戦協定の調印を拒否します。
そして「共産主義勢力の拡大を阻止するぞ」と息巻いて、1955年に南ベトナムにゴ=ディン=ジエム政権を樹立します。(ベトナム共和国)
この結果、北ベトナムと南ベトナムの間で戦争が勃発。(ベトナム戦争)
ベトナム戦争は泥沼化。。
アメリカの撤退
1973年、ベトナム和平協定(パリ協定)が結ばれ、アメリカのニクソン大統領はアメリカ軍を南ベトナムから撤退させました。
パリ協定では平和的な南北ベトナム統一が想定されていましたが、、、
ベトナム社会主義共和国の誕生
1975年、北ベトナム軍は南ベトナムの中心都市サイゴンを占領します。(←協定違反)
そして1976年に南北統一が実現し、ベトナム社会主義共和国が成立しました。
※その後、ベトナムはカンボジアに侵攻します…(カンボジア・ベトナム戦争)
ベトナムの人口と人口構成
ベトナムの人口は約1億30万人(2023)。
「vietnam population pyramid」で検索するとヒットするPopulationPyramid.netは超便利です!
主な都市
首都ハノイと経済都市ホーチミン・シティは必須。
人口はホーチミン・シティの方が多いです
※ホーチミン・シティは昔サイゴンと呼ばれていました。現地ではサイゴンと呼ばれることが多いです。
※ホーチミンって呼んでも、ホーチミン・シティって呼んでもOK。ただ、ホーチミンだとベトナムの国民の父ホーチミンさんと紛らわしいので、ホーチミン・シティって呼んだ方がわかりやすいです(Ho Chi Minh Cityを略してHCMCって表記することもあります)
※ハノイから日帰りで行ける距離にハロン湾というタワーカルストで有名な景勝地があります
ベトナムの文化
フォーとバインミーが国民食
フォーは米粉から作ったライスヌードル+あっさりした味のスープとパクチーなどの香草
バインミーはフランスパンにパテを塗って肉やら野菜やらを詰め込んだサンドイッチ
カフェ大国
ベトナム人はコーヒーが大好き。
ベトナムはコーヒー豆の生産が盛んで、輸出量は世界第2位です。(2019)
※フランス植民地だった時代に、コーヒー栽培が始まった
※苦いコーヒーに練乳(コンデンスミルク)を入れて飲むのがベトナムスタイル。
※「ベトナムにコーヒーのイメージないなあ…」「なんで練乳を入れて飲むの?」→社会科プラス)
ベトナムの経済
経済発展が遅れた
ベトナム戦争やカンボジア・ベトナム戦争のせいで、シンガポールやタイ、マレーシアよりも経済発展が遅れました。
ドイモイ政策で経済発展
1986年、市場経済化と対外開放政策を推進するドイモイ(刷新)政策が実行されました。
ドイモイ以前
- 土地、資本などの生産要素は国有化、集団化されていた
- 国営部門、集団部門以外の企業を自由に設立することはできない
↓
1980年代半ばに行き詰まる
(理由)
- 農業生産の停滞による食糧不足
- アメリカの経済封鎖(←カンボジア・ベトナム戦争)
- ソ連・東欧諸国からの経済援助の激減(←カンボジア・ベトナム戦争)
↓
ドイモイ
- 価格における市場メカニズムの導入
- 個別農家の経営権、耕地使用権が保障された
- 国有企業に対する補助金の削減・廃止
コメの輸出が盛ん
ドイモイ政策により農民の生産意欲が高まり、コメの生産が拡大しました。
ベトナムはコメの輸出で世界第2位です。(2021)
コーヒー豆の輸出が盛ん
1990年代以降、ベトナム南部の高地にコーヒー農園が拡大しました。
今ではコーヒー豆の輸出で世界第2位です。(2019)
※ドイモイで市場経済を導入したから、「今がチャンスだ!」と思ったコーヒー関連の多国籍企業がベトナムに進出しました。
※コーヒー企業には「ベトナムをコーヒー豆生産の拠点にしよう」という狙いがあったわけですが、なぜベトナムはコーヒー豆生産と相性が良かったのでしょうか…?→社会科プラス
労働集約的な工業が盛ん
1986年のドイモイ、1995年のASEAN加盟により、
安価な労働力を求める日本・韓国・シンガポールなどからの投資が増加し、工業化が進展しました。
(ベトナムが得意な工業)
- 繊維、衣類
- 電気機械
天然資源
北部に鉱産資源が集中しています。
- 原油
- 天然ガス
ベトナムの政治
社会主義共和国
共産党の一党支配体制です。
ベトナムの社会問題
交通渋滞と大気汚染
(日本製の)大量のオートバイが街中をブンブン走っています。
2021年にハノイで都市鉄道が開業
2024年にホーチミンで都市鉄道が開業
※どちらも何度も何度も開業延期を重ね、ようやく開業した
南沙諸島の領土問題
もっと突っ込んだ話は
→社会科プラスで
※中高生は、とりあえず本記事の内容を理解するべし。この記事の内容をわかっておけば、高校受験や大学受験の共通テストならそれなりにいける…はず
(もっとリアルなことを知りたい人は社会科プラスへ)
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