韓国の本質:なぜ競争するのか?
一見、バラバラに見える韓国社会のさまざまな側面、例えば
- K-POP文化
- サムスンやヒュンダイなどのグローバル企業
- 熾烈な受験戦争
などは、「集中と競争」というキーワードを通して見ると一本の線でつながってくる。

この記事では、地理的・歴史的な背景から現代の韓国までを「集中と競争」という視点で掘り下げていく。
朝鮮半島の特性・前提
「集中」に向かう地理的条件
朝鮮半島は、地理的に決して恵まれた土地とは言えない。

地形 | 国土の約7割を山が占め、平野部が限られている。東側は山が海沿いまで迫っており、港として活用するのが難しい地域が多い。西側には比較的なだらかな地形もあるが、国全体で見ると人が暮らしやすい平地は限られている。 |
気候 | 夏は暑く湿気が高い一方、冬はシベリアからの厳しい寒波にさらされる。(→食料の保存が課題になり、冬を乗り越えるための保存食としてキムチ文化が発達) |
資源 | 北部を除けば鉱産資源は乏しく、産業に必要な原材料やエネルギーを国内だけでまかなうのは困難。 |
隣国 | 強力な国家「中国」が隣にある。 |
こうした地理的な条件の中で、朝鮮半島は、限られた土地と資源を効率的に活用する必要に迫られた。
また、山が多く、平野が小規模に分かれて点在する地形では、大きな独立した地方勢力が育ちにくい。
そのため、社会のあり方も、「分散してそれぞれが強くなる」より、「力を一箇所に集中させる」方向に進みやすかった。
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「集中」の伝統・歴史
実際、朝鮮半島は長く統一王朝の歴史を歩んできた。
7世紀に新羅が朝鮮半島を統一して以来、朝鮮半島は基本的に分裂することなく、中央集権型の国家体制が続いた。李氏朝鮮時代には、中国の影響を受けた儒教の教えに基づき、王を中心とする官僚制度が確立された。
こうして、地方は中央の決定に従うという価値観が社会全体に根づいていった。

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危機が加速させた「集中」と「競争」
20世紀に入ると、朝鮮半島は大きな試練に直面する。

日本の植民地支配を受け、第二次世界大戦後に日本の支配から解放された後は、南北に分断されてしまう。ここで「北朝鮮」と「韓国」が誕生する。そして1950年、朝鮮戦争が勃発。
1953年に朝鮮戦争が休戦した時点では、朝鮮半島は「豊かな北朝鮮と貧しい韓国」という構図だった。
北朝鮮 | 資源に恵まれ、日本統治時代に工業インフラが整備されていたうえ、ソ連や中国から援助を受け、重工業中心の経済を推進。韓国より豊かだった。 |
韓国 | 日本統治下で自前の資本や産業が育っておらず、戦争で都市や産業基盤が壊滅。経済の土台は脆弱だった。 |

韓国は、この危機的状況を乗り越え、北朝鮮との競争に勝とうとした。
アメリカの支援を受けつつ、権力を中央に集めて独裁体制を敷き、特定の企業に資源を集中させ、復興を加速させる。
この集中支援を受けたのが、現在のサムスンや現代(ヒュンダイ)といった財閥である。韓国経済の奇跡的な成長は、「選ばれた少数の企業」への集中戦略によって実現したのだ。

また、朝鮮戦争が「休戦」で終わったことも重要である。
北朝鮮との緊張状態が続いているため、国の防衛・外交・経済を一手に担える強力なリーダーシップが求められ、大統領への権限集中が正当化された。
とくに朴正熙政権は「反共主義」を掲げて長く政権を維持し、経済政策と安全保障を強力に推し進めた。
つまり、朝鮮半島の地理・歴史が育んできた「集中」志向に、朝鮮戦争という非常事態が拍車をかけたのである。
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現代の韓国に根付く「集中と競争」
現在の韓国を見ても、「集中と競争」という特徴は色濃く表れている。
ソウル一極集中
韓国の首都ソウルには、政治・経済・文化のすべてが集中している。
「ソウルに行かないと成功できない」という考えが広がり、地方から若者が流入。その結果、ソウルは人口過密、住宅価格の高騰、深刻な交通渋滞といった問題を抱えるようになった。

貧困問題
ソウルに投資が集中し、様々な機能が集中する中で、農村からソウルへ仕事を求めて移住したものの大企業に就職できなかった人々は、貧困層として都市に取り残された。映画『パラサイト 半地下の家族』では、そのような貧困層の生活が描かれた。
また、ソウルに集まる若者は、高騰する家賃の中、貧しい生活を強いられている。しかし生活の質を犠牲にしてでもソウルにとどまらなければならない。ソ全てがソウルに集中し、「ソウルに行かないと成功できない」からである。

競争社会
ソウルで成功するには、財閥企業に就職することが一つのゴールとされている。そのためには、名門大学に入学しなければならず、熾烈な受験競争が繰り広げられている。
学生たちは幼い頃から学習塾に通い詰め、親も多額の教育費を費やす。この競争のプレッシャーは、結婚や出産を控えさせる一因となり、少子化問題を加速させている。

若者文化と「生き抜く工夫」
この厳しい競争社会は、若者たちの間で生まれた新しい文化とも関連しているかもしれない。
食文化 | 安い価格でお腹を満たせる屋台グルメや、炭水化物と油多めな食品の流行は、韓国社会の格差を反映している? |
美容 | 美容整形やコスメは、競争社会を勝ち抜くための武器であり、同時に自己実現の手段でもある? |
K-POPアイドル | 完璧なパフォーマンスをするアイドルは、厳しい競争を勝ち抜く努力を見せるとともに、閉塞感のある時代に若者に希望を与える存在になっている? |

韓国のこれから
これからの韓国に求められるのは、ソウル一極集中、そして社会の閉塞感を解消することだろう。
「集中と競争」で築いた力を、いかに「分散と共生」につなげるか。