西アジア(中東)の未来と課題:西アジア諸国は何を目指しているのか?
西アジアの未来を考える上で、特に注目すべき4つのポイントを見ていこう。

石油ビジネスの行方
西アジアは、世界の原油埋蔵量の半分近くを占める。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などは、今も石油収入を国家の柱としている。
しかし、近年、その地位は揺らぎ始めている。
世界的な脱炭素の流れや、シェールガス革命によってアメリカが世界最大の産油国に返り咲いたことなど、外部環境が大きく変化しているからである。
この状況に危機感を抱く西アジア諸国は、石油に依存する経済からの脱却を迫られている。
世界のハブ化競争の行方
石油に代わる新たな柱として、西アジアの産油国がこぞって目指しているのが「世界のハブ(拠点)」である。
この地域は、ヨーロッパ、アジア、アフリカの3大陸を結ぶ交通の要所に位置している。特に、今後の成長が期待されるアフリカ市場への玄関口としても重要。

この地理的優位性を活かし、ドバイはすでに金融や物流の拠点として成功を収めている。
- MENA
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「Middle East(中東)」と「North Africa(北アフリカ)」
しかし、今はサウジアラビアがネオム(NEOM)のような巨大未来都市計画を打ち出し、エジプトも新行政首都を建設するなど、多くの国がハブ化を狙っている。
果たして、この地域に複数のハブが必要なのか、そしてどの国が競争を制するのか。
アラブ首長国連邦(UAE)
アブダビ
UAEの首都であり、豊富な石油資源を持つ。
文化的なハブとなることを目指している。
ドバイ
石油依存からの脱却を最も早くから進めてきた。
観光、金融、物流のハブとしての地位を確立している。多国籍企業のアジア・中東地域統括拠点としても機能。

サウジアラビア
リヤド
「ビジョン2030」の中心として、金融、ビジネス、観光のハブ化を目指している。ドバイに対抗。
※キディヤ(Qiddiya)
ネオム(NEOM)
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が主導する、紅海沿岸に巨大未来都市を建設するプロジェクト。


エジプト
新行政首都(NAC)
現在の首都カイロの人口過密や老朽化問題に対処するために、カイロの東部で建設中。
政府機関や大使館、商業施設などを移転させ、新しい行政・ビジネスの中心地となることを目指している。
地域の紛争や戦争の行方
西アジアは、今も複数の紛争が続く地域である。
イスラエル・パレスチナ紛争
ユダヤ教の「約束の地」であるイスラエル。そこに昔から暮らしてきたアラブ人(パレスチナ人)。
両者が「ここは自分たちの土地だ」と主張してきた。非常に解決が難しい。
イラン
イランはシーア派イスラムの中心地として、中東のスンナ派諸国(特にサウジアラビア)と対立することが多い。
関連:イスラーム教のシーア派とスンナ派の違いとは?本質をわかりやすく
シリア
民主化を求める市民運動をきっかけに、2011年からシリア内戦が続く。
多くの人が難民として国外に逃れ、周辺国やヨーロッパにも大きな影響を与えた。
トルコ(クルド人問題)
クルド人は、イラン・イラク・トルコ・シリアにまたがって暮らす民族。
人口3000万人以上を抱える世界最大の「国を持たない民族」とも言われる。
社会のあり方の行方
民主化
2011年の「アラブの春」は西アジアに民主化の希望をもたらしたが、その後の状況は足踏み状態である。
一部の国では民主化運動が内戦へと発展し、湾岸諸国では依然として王族中心の政治体制が続いている。
西アジアの国々について
イラン
サウジアラビア
アラブ首長国連邦
イスラエル
パレスチナ
シリア
レバノン
イラク
トルコ
キプロス
その他
カタール
バーレーン
クウェート
オマーン
イエメン
ヨルダン
アゼルバイジャン
アルメニア
ジョージア