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中国の本質:中国はずっと「分裂」の危機と戦っている

モチオカ(望岡 慶)

「どうすれば、この広すぎる土地と、多すぎる人々を1つにまとめられるか?」

これが、中国が何千年も向き合ってきた「宿命」とも言えるテーマである。

このことを理解することが、中国の歴史、そして現代中国を理解するカギとなる。

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中国は統一が難しいエリア

まず理解しておきたいのは、中国という地域そのものが「1つにまとまるのが難しい場所」だということ。

【気候】自然が豊かだからこそ、人がたくさん住める

中国の多くの地域は温暖で、モンスーンの影響で雨がよく降る。

この雨やチベット高原に蓄えられた水は、黄河や長江という大きな川になって東へ流れ、平野部に肥沃な土をもたらした。

このような環境は、稲作など多くの人を養える農業に向いていた。また、河川や運河を通じて、物や人の行き来も盛んになった。

つまり、中国は昔から多くの人が生きることができる場所だった。

中国の気候をわかりやすく

【地形】ちょうどよく分断される地形

中国の大地は、広くて起伏があり、さらに黄河と長江という2本の大河が流れている。この地形が、「たくさんの社会」を生む土台になってきた。

どういうことかというと、山や川によって自然に区切られた土地ごとに、人々が独自の文化や社会を築いてきた、ということ。

つまり、中国という地域は「いくつもの地域社会の集合体」である。

そのため、近い地域同士が合わさって1つの国になることはあっても、中国全体を1つにまとめるには、かなり強い力と意図的な動きが必要になる。

油断すれば、すぐに各地がバラバラの状態に戻ってしまう。それが中国の宿命のようなものである。

中国の地形をわかりやすく

中国の歴史をわかりやすく:現代中国の歴史上の立ち位置とは?

【地形】周囲との境界があいまい

また、中国は四方を完全に囲まれているわけではない。

  • 北はモンゴル高原(ゴビ砂漠)
  • 西は中央アジアの乾燥地帯
  • 南は東南アジアと地続き
  • 東は海だけど、船で外から来ることもできる

このように、完全に隔離されたわけではない場所だからこそ、外からの文化や人々が入り込んできやすい。離れた土地に行けば行くほど、文化・民族・言語がグラデーションのように変化していく。

現代でも、広東、チベット、新疆など、中国国内には言語も文化も大きく違う地域が存在している。同じ漢民族の地域ですら、日常的に話す言葉(方言)が地域によってかなり違うのが中国の特徴。

中国はその広大さと周囲との境界の少なさゆえに、単一民族・同一文化の社会にはなり得ない地域なのである。

中国の地形をわかりやすく

中国の民族をわかりやすく:多民族国家ゆえの悩み、少数民族の抑圧

それでも統一したくなる理由

ここまでを踏まえると、「じゃあ、わざわざ1つにまとめようとしなければよくない?」と思うかもしれない。

でも中国には、「それでも1つにまとめたい」と思わせる条件があった。

【地形】完全には分断されていない地形

中国の地形はたしかに起伏に富んでいて、山や川によって地域が自然に区切られている。でも、完全に遮断されるほどではない。

ヒマラヤ山脈のような超巨大な山がところどころにあれば、「じゃあこの山の向こうとは別々の国でいいよね」って話になっていたかもしれない。

が、現実はそうではない。「行こうと思えば行ける」という、中途半端な境界が中国には多い。

だからこそ、「せっかくだからまとめよう」という野望を持つ者が現れる。そのような人が、何度も何度も歴史に登場してきた。

現実的には広すぎるし、人も多すぎるし、文化もバラバラ。なのに、それでも「ひとつにまとめること」に挑んでしまう。

これこそが中国の悲しき宿命。もし統一を諦めるしかない地形だったら、こんな苦労はしなくて済んだのに・・・って感じ。

【価値観】統一を正当化する儒教の思想

さらに、中国の歴代王朝が重視してきた「儒教」の考え方も重要である。儒教では、こんな考え方が大切にされている。

「天命を受けた正当な君主(天子)が秩序ある世界(天下)を治めるべきだ」

「家族 → 村 → 国」というピラミッド型の上下関係が重んじられ、それぞれが自分の立場をわきまえて調和を保つのが良い社会、ということになっている。

儒教の「上に立つ者が全体を治めるのが正義」という思想が、中国という地域で統一を目指すための「価値観の土台」になっていたのである。

というか、中国を統一したいと考えているリーダーが「国家をまとめるための思想として便利だった」から儒教を採用した、と考えるのが妥当な気もするが。

だから中国は「分裂と統一」を繰り返す

ここまで見てきたように、中国という地域には

  • 地形的・民族的には分裂しやすい
  • だけど地形的・価値観的には統一したくなる

という矛盾した2つの条件が重なっている。

この相反する条件こそが、中国の歴史に「分裂と統一のくり返し」というサイクルを生み出してきた。

中国の歴史をわかりやすく:現代中国の歴史上の立ち位置とは?

現代中国は、分裂へのカウンター

中国という土地は、広すぎて、人が多すぎて、民族も文化もバラバラになりやすい場所でありながら、統一を諦めるほど分断はされていない場所である。

ゆえに、中国は常に「どうすれば、この広すぎる土地と、多すぎる人々を1つにまとめられるか?」という問いと向き合ってきた。

現代の中国では、中国共産党が強力な中央集権体制を築いている。

これは、「中国は放っておけば分裂してしまうだからこそ、強い力でまとめる必要がある。」という、歴史的な反動(カウンター)としての体制なのである。

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