社会の解説

インドってどういう国?わかりやすく解説

モチオカ(望岡 慶)

インドのフィールド(自然環境)のポイント

気候

インドの気候は多様だが、全体的に温暖。モンスーンの影響で雨季と乾季がはっきり分かれている地域が多い。

モチオカの解釈

気候が多様(かつ地形も多様)だからこそ、インドは様々な農作物を生産できる。

高温な地域も多いので、スパイス栽培にも適している。

自然豊かで定住しやすい場所

ヒマラヤ山脈という険しい山脈があり、モンスーン地帯で降水量が多いため、大河川が流れる。

  • インダス川
  • ガンジス川
  • ブラマプトラ川

特にガンジス川が運搬した土砂が堆積して形成された平野であるヒンドスタン平原は、水資源が豊富な大農業地帯。定住する上で魅力的な場所だった。

だからこそ工業が発展した現代においては、ヒンドスタン平原あたりは貧しい地域になっているのだけれど。。

北と東には険しい山脈

  • 北:ヒマラヤ山脈
  • 東:パトカイ山脈

→インドは西からの脅威にさらされるのが宿命(アーリア人の侵入、パキスタンとの対立)

モチオカの解釈

インドとミャンマーの間にある山岳地帯は、陸路での移動を困難にし、インドから東南アジアへの影響を限定的なものにしていたはず。

→だからこそヒンドゥー教はインドより東には広まらなかったし、「南アジア」と「東南アジア」の区分けができた。

西端、東端、南端は辺境でやや生活しにくい

  • 西:パキスタン(←砂漠)
  • 東:バングラデシュ(←洪水、高潮)
  • 南:デカン高原(←やや乾燥)
モチオカの解釈

インド社会の中での下位グループは生活しにくい場所に追いやられた。

  • 先住民→デカン高原に
  • イスラム教徒→パキスタンとバングラデシュに

インド北西部・パキスタンには乾燥帯が分布するのは、緯度的に亜熱帯高圧帯の影響を受ける地域で、降雨をもたらす上昇気流を起こす地形が近くにないから。そのため、夏に湿った季節風が吹いてもそこまで雨が降らずに、蒸発量が上回ってしまう。

デカン高原がやや乾燥しているのは、西ガーツ山脈と東ガーツ山脈に囲まれていて、雨陰になりやすいから。

インド洋に突き出している

アラビア海とベンガル湾を隔てる形で、インド亜大陸はインド洋に突き出ている。

それゆえに、インドはアフリカ・中東・東南アジアを結ぶ海上交通の要所として機能してきた。

インドの歴史のポイント

アーリア人の侵入とカースト制度の成立

紀元前1500年頃、アーリア人が北西からインドに侵入し、先住民を支配。のちにカースト制度が成立した。

紀元前5世紀頃、バラモン中心の社会に対して釈迦やマハーヴィーラが新たな思想を唱え、仏教やジャイナ教が誕生した。

モチオカの解釈

カースト制度という身分制度は、インド社会の格差を説明するための理論として発明されたのだろう。

インドに侵入して現地人を追いやったアーリア人(「高貴な人」という意味)が上位に位置し、先住民を下位に組み込むための思想として都合が良かったはず。

「なぜ自分たちが支配されなければいけないんだ」「なぜ自分たちは貧しい生活をしなければいけないんだ」という不満が爆発すると面倒なので、「人には身分があるんだよ、そういうもんなんだよ」ということにした・・・ってことだと思う。

おそらく仏教は「そんな宗教は認められない!ヒドイ!」ってことで新たに考え出された宗教。ただ、仏教は格差を否定するというよりも、「他人のことを羨ましがるのはやめよう」っていう方向性の教え。

一方、のちにインドにはイスラム教が広がることになるが、これは「神の前での平等」という考え(格差を肯定しない考え)が人々に受け入れられたからだろう。

イスラム勢力の進出と統治

8世紀以降、イスラム教徒が北インドに進出。

13世紀にはデリー・スルタン朝、16世紀にはムガル帝国が成立し、タージ・マハルに代表される独自の文化(ムガル文化)が発展。

モチオカの解釈

ヒンドゥー教徒が多数を占めるインドにイスラム教徒が外から侵入したことで、以後のインドでは「ヒンドゥー教徒とイスラム教徒がいかに共生するか?」が大きなテーマとなった。

少数派であり支配者層であるイスラム教徒が、多数を占めるヒンドゥー教徒に配慮していた時代はうまく共存できていたが、配慮を欠いた時代は対立が激化した。

イギリスの植民地支配と独立

18世紀からイギリス東インド会社が勢力を強め、19世紀にはイギリスの直轄植民地に。1947年、ガンディーらの独立運動によりインドは独立。

インド独立時にヒンドゥー教徒主体のインドとイスラム教徒主体のパキスタンに分離独立した。

インドはヒンドゥー教徒中心の国家となった

モチオカの解釈

イギリス植民地時代、イギリスはヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立を利用・助長し、インド社会が一つにまとまるのを防ごうとした。その結果、両者の共生関係に大きな溝が生まれた。

インドの経済のポイント

インドはなぜ急速に経済成長しているのか?

人口の多さと若さによる有望な市場

人口約14億人と世界最大級の市場を持ち、特に若年層が多いため、消費と労働力の両面で魅力的。

1991年の経済自由化以降、外国資本を積極的に誘致した

国営主導から市場経済へ転換し、外国企業の参入やIT産業などの成長が加速した。

インドの経済自由化(新経済政策)

海外への出稼ぎ労働者からの送金(外貨獲得)

インドは世界有数の出稼ぎ労働者からの送金受取国。

  • オイルショック以降、建設労働者などの需要が急増した中東諸国への出稼ぎが増加
  • 経済自由化以降、欧米諸国へのIT・エンジニア人材の進出が増加

ドバイは「キレイなインド」

ドバイに労働者が集まる理由

インドが強みを持つ産業

モチオカの解釈

世界的に影響力があるインドの産業は、身分制度や人件費の安さ、貧困といった、ある種の不平等な構造(と、「それは運命なのだ」「自分さえ良ければそれでいい」とでも言わんばかりの他者の生活への無頓着さ)を背景に発展してきた側面がある。

  • 情報通信技術産業の発展の背景には、カースト制度という身分制度からから逃れ、新しい産業(IT)に活路を見出そうとした人々の存在がある。これは、IT産業が能力主義的で、出自に左右されにくい職業領域だったことと関係している。
  • ダイヤモンド加工業はインドの人件費の安さが国際競争力の源泉となっている。
  • 化学産業は環境汚染や健康被害のリスクを伴いながらも、安全管理や環境規制が十分でなかった時期に成長した側面がある。
  • ジェネリック医薬品産業は薄利多売ビジネスゆえにインドの人件費の安さが国際競争力の一因となっている。。もちろん理系人材豊富さや高い技術力も重要な強みだが。
  • バイオ産業、特にワクチン製造が盛んなのは、公的医療制度がまだ十分に整備されていない中、無料の治験に参加することで医療にアクセスしようとする貧困層の存在が、治験を実施しやすい環境を形成していたことが一因。

もちろん時代が進むにつれて人権意識や倫理基準は向上しているだろうが、「インドでは相対的に生活や命が軽視されやすい層が一定数存在してきた」という現実が、一部の産業がグローバルに活躍できる産業へと成長する下地となった、というのはあながち間違いでもないと思う。

情報通信技術(ICT)産業

南部のバンガロールがICT産業の中心地。

  • 理数系教育の充実で優秀な低賃金労働力が豊富
  • 新経済政策のもとで外国企業を誘致
  • 道路や鉄道などのインフラ整備が不十分でも事業運営がしやすい業種
  • 英語力や米国との昼夜逆の時差を背景に米国企業からソフトウェア開発を受注

ダイヤモンド加工業

高品質なダイヤモンドを担当するイスラエルとは異なり、インドは低中級のダイヤモンドを担当する。

輸入した原石を安価な労働力で研磨加工する。

ダイヤモンド産業

化学産業

英領時代、インドには欧州の化学技術や製造法が早期に導入されていた。

インド政府は独立直後から、石油・肥料・化学薬品を「戦略産業」として支援。

→ジェネリックの有効成分を国内調達できる

※化学工業は環境への負荷が大きい。

日本がインドから輸入している「有機化合物」「揮発油」にまつわる疑問

ジェネリック医薬品産業

インドは世界の製薬工場

バイオ産業

インドは世界最大のワクチン製造国。世界中の子ども向けワクチンの約60%がインド製。

南部のハイデラバードがバイオ産業の中心地。

インドで注目の産業

自動車産業

1981年に日本のスズキ(当時は鈴木自動車工業)とインド政府の合弁による会社が設立された。

インドの首都デリーはスズキの車だらけ。(2024.12撮影)

なぜ製造業が弱い?

インドの製造業はGDP全体に占める割合が低い(15%程度)。

2014年に発足したモディ政権は、中国に依存しないサプライチェーンの構築するために(←経済安全保障)「Make in India」制作を掲げている。

インドで製造業が伸び悩んでいる理由の考察

インドの農業

インド農業は生産性が低く、農家は貧しい。

北西部のパンジャブ州やハリヤナ州は緑の革命が成功して生産性が大きく向上した。

  • インダス川流域に位置し、灌漑施設がすでに整っていた
  • 大きな平野が広がっているため、機械化に適していた
  • 農民の教育水準が高かった
  • 緑の革命を成功させるため、政府がモデル地域としてパンジャブ州に重点的に支援を行った
  • 道路や鉄道などのインフラが比較的整備されていて、市場へのアクセスが良かった
モチオカの解釈

ガンジス川流域(インド北東部)の農家の生活が特に苦しいっぽい。ガンジス川流域は大きな川が流れているから豊かなのでは?と思っていたが・・・。

教科書に載っている地図を見ると、ガンジス川流域は特殊な事情を抱えていることが読み取れる。

  • ガンジス川流域は一人あたり州内純生産額で最も低い水準
  • ガンジス川流域からの人口移動(都市への流出)が多い
  • ガンジス川流域の出生率は高く、識字率は低め
  • ガンジス川流域にはイスラム教徒が多く居住

つまりガンジス川流域には、何かしら「経済成長しにくい理由」があったと考えられる。

パンジャブ州とガンジス川流域にはそもそも格差があり、緑の革命がその格差拡大を助長した、ということだろう。

→パンジャブ州とガンジス川流域の違いは?

インドの社会のポイント

インドの現状

経済格差

インドでは貧困や格差は当たり前にあるもの。いたるところに路上生活者がいる。

オールドデリーの様子。(2024.12撮影)

「経済成長著しいインド」の首都デリーで見た貧困層

過密

オールドデリーの風景。(2024.12撮影)

インドの首都デリーの風景

デリーの大気汚染

大気汚染の影響を最も受けるのは、医療へのアクセスが困難で路上で生活している貧困層。

ジャーマー・マスジドのミナレット(尖塔)からの眺め。(2024.12撮影)

インドの首都デリーの大気汚染

女性の人権侵害

インドの経済成長を阻む女性の安全問題(NHK国際報道)

インドはなぜ経済格差が深刻なのか?

参考:『インド―グローバル・サウスの超大国』

関連:インドについて学べるおすすめの本をまとめた

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モチオカ ケイ
モチオカ ケイ
社会科コンテンツクリエイター
関東で生まれる → 公立中学校 → 公立高校 → 1年間浪人 → 東大(教育学部) → 東大院(教育学研究科) → 修士課程修了(教育学) → 公立中学校の教員に → 退職 → ブログをがんばる → ?
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