日本史

新貨条例についてわかりやすく【日本の歴史】

新貨条例についてまとめました!

新貨条例とは

金融資料館@小樽 より

江戸時代の貨幣制度を改めて、日本全国で統一の貨幣制度を作ろうとした

  • 金(ゴールド)で貨幣の価値の裏付けをする(1円=金1.5g)
  • 単位は円・銭・厘
  • 外国人にもわかりやすい10進法

以上が新貨条例についての概要(教科書に載っていること)。

ちなみに用語集では以下のように書かれています↓

1871年公布。統一的貨幣制度を確立するための条例。金本位制の確立と弊制混乱の収集が目的。伊藤博文の建議により、1円金貨を原貨とする新硬貨をつくり、円・銭・厘の十進法を採用。1872年に不換紙幣の新紙幣(明示通宝札)も発行。金銀複本位制から銀本位制に移行した。

引用:日本史用語集 改訂版 A・B共用

これでなんとなくわかった気にはなれるかもですが、、、

しっかり理解するためには、この政策がどんな問題を解決するためのものだったのか?(=新貨条例の目的)を確認する必要があります。

ということで、ここからは新貨条例が制定される前の日本の状況(=どんな問題に直面していたのか?)について、簡単にではありますが説明したいと思います!

江戸時代の貨幣制度

【日本史39】田沼意次の政治について東大卒の元社会科教員がわかりやすく解説

江戸時代の貨幣制度は、金貨・銀貨・銭貨という3種類の貨幣で構成されていました(三貨制度)。

金貨・計数貨幣
・高額の取引に用いられる
・江戸などの東国で流通
銀貨・秤量貨幣
・高額の取引に用いられる
・大坂など西国と北陸で流通
銭貨・計数貨幣
・少額の取引に用いられる
・全国で流通

※計数貨幣=貨幣の個数(枚数)で価値を表す貨幣。今の日本の貨幣はこれ。

※秤量貨幣=貨幣の重量で価値を表す貨幣。

大事なのは、地域によって流通している貨幣が違った・・・という点です(江戸の金遣い・上方の銀遣い)。

この結果、金貨と銀貨の交換比率が定められ、貨幣の交換を行う両替商という職業が発達しました。

※ちなみに、幕府は藩が金属貨幣を発行することを認めていなかった

途中で様々な貨幣が作られたり、田沼意次が画期的な銀貨を作ったりしたけど、

以上が江戸時代の貨幣制度の基本的なあり方です。

しかし、江戸時代の貨幣制度が変更を迫られる重大な出来事が起きました。

それがペリー来航による開国です。

※厳密には欧米諸国との商売がスタートすることになった日米修好通商条約(安政の五カ国条約)

なぜ江戸時代の貨幣制度を改める必要があった?

【日本史43-2】日米修好通商条約とは?東大卒の元社会科教員がわかりやすく解説

「開国」により欧米諸国と付き合わなければいけなくなった結果、「国内での取引」のみを想定した貨幣制度は支障を来たすことになりました。

グローバル対応の必要性

日米修好通商条約(安政の五カ国条約)が結ばれ、欧米人が日本でビジネスをする=商売をすることになりました。

この条約には

  • 領事裁判権を認めた
  • 関税自主権がなかった

という問題があったことが有名ですが、他に江戸幕府が頭を悩ませることになったこととして、

同じ種類、同じ重さの金貨・銀貨はすべて同じ価値で使う

という約束がありました。

貨幣条項

  • すべての外国通貨は日本において流通し、同種類の日本貨幣の同量をもって通用する
  • 両国人は支払いに日本および外国の貨幣を自由に用いてよい

今までは日本国内で金貨と銀貨の交換比率(金と銀の価値の違い)がバシッと決まっていればそれでOKでした。

が、日本の通貨と外国の通貨の交換が解禁された結果、

  • 日本国内での金銀の交換比率
  • 国際的な金銀の交換比率

を合わせる必要に迫られたわけです。

なぜかというと、交換比率を合わせないと日本の金貨が流出してしまう恐れがあるから

例えば

  • 日本での金と銀の交換比率は重量比で金1:銀5
  • 欧米諸国での金と銀の交換比率は重量比で金1:銀15

だった場合、

【日本史43-2】日米修好通商条約とは?東大卒の元社会科教員がわかりやすく解説

外国の銀貨を4枚、日本に持っていく

→外国の銀貨4枚を日本の銀貨12枚と交換する

→日本の銀貨12枚を日本の金貨3枚と交換する(金1:銀5の比率)

→日本の金貨3枚を欧米諸国に持っていく

→日本の金貨3枚を外国の銀貨12枚と交換する

→外国の銀貨を12枚、日本に持っていく

→外国の銀貨12枚を日本の銀貨36枚と交換する

→日本の銀貨36枚を金貨9枚と交換する(@日本)

ってグルグル回したら超お得!錬金術だ!ってことになってしまうわけです。

こんなことを許したら(=日本での金銀の交換比率を国際基準に合わせないと)、日本の貴重な貴重な金貨が海外に大量に流出してしまいます。

このような最悪の事態を防ぐために、江戸時代の貨幣制度を調整する必要に迫られた。

この問題を認識していた江戸幕府は条約が発効する直前に対策をしようとしたらしいですが、、、

アメリカ人(オールコックやハリス)に猛烈に抗議されて、屈せざるを得なかった(=金銀の交換比率を調整できなかった)とのこと・・・

結果、危惧されていた金貨の国外流出が現実のものとなりました(幕末の通貨問題)。

【日本史43-2】日米修好通商条約とは?東大卒の元社会科教員がわかりやすく解説

※その後、江戸幕府は様々な対策を行った。

※最終的には含まれている金の量を減らした万延小判というものを作って金貨大流出をストップさせることに成功。

【日本史43-2】日米修好通商条約とは?東大卒の元社会科教員がわかりやすく解説

大損失を被りましたが、痛手を負いつつも金貨の流出を止めることに成功したわけなので(=金と銀の交換比率をグローバル基準に合わせることができたので)、

今後も江戸時代の貨幣制度のままで行けばいいじゃない!?って思うかもしれません。

←実際、万延小判が作られた1860年から新貨条例が出される1871年まではだいぶ間がある

が、そうはいかない事情がありました。

「江戸幕府の金銀銭」と「明治新政府の紙幣」が流通

まずそもそも、江戸時代の貨幣制度は地域によって流通している貨幣が違って複雑です。

その上さらに!

江戸幕府滅亡後、明治新政府は軍事費殖産興業の費用をまかなうために自ら大量に紙幣を発行していました。

  • 太政官札
  • 民部省札:太政官札では少額券が足りなかったため

※しかも藩も藩札という独自紙幣を発行していた

左から太政官札民部省札藩札

つまり、

「江戸時代の金・銀・銭の三貨併用」+「明治新政府の紙幣」という超複雑な貨幣制度になっていた

わけです。

※しかも政府紙幣は信用されず(←新しくできたばかりの政府なんて信用できないので)、政府紙幣を金貨と交換するには手数料が必要だった

さすがに貨幣制度を整えた方がいいよね!

全国統一のシステムの方がいいよね!

いっそ近代的な貨幣制度へと作り替えた方がいいよね!

ということになり、新たな貨幣制度を作ることになりました(→新貨条例)。

※紙幣の整理・回収も行われた(→国立銀行条例)

新しい貨幣制度を作る時の論点

いざ新たな貨幣を作るとなると、考えなければいけないことがいくつかあります。

  • どんな貨幣を発行するか?(=貨幣の種類)
  • 貨幣にどれくらい金・銀を混ぜるか?(=貨幣の品位)
  • 金貨と銀貨の交換比率をどうするか?(=金銀比価)

これらの論点について、新しい貨幣制度ではどのようなルールになったのでしょうか?

新貨条例の内容

貨幣の種類

金貨を基本の貨幣とすることにしました(=金本位制度)。

(理由)当時の東洋諸国では銀貨が使われることが多かったものの、欧米諸国は金貨を使う傾向にあったから。

その上で、新貨幣の単位を「円」、「1円=100銭=1000厘」として、円・銭・厘という3カテゴリーの貨幣を発行。

  • 金貨は20円、10円、5円、2円、1円の5種類
  • 補助貨幣として50銭以下の銀貨と銅貨を作る

ただ、開港場では貿易の際に銀貨が使われていたので、貿易代金の決済や外国人の納税などに使用するために1円銀貨を作ってこれを「貿易1円銀」としました。

※お互いの合意があれば開港場に限らず使ってもOKというルールだった

※つまり、実際には金本位制ではなく金銀複本位制だった

貨幣の信用(品位)

「純金1.5g=1円」と定めました。

つまり20円金貨には純金が30g含まれているということ。

→だからこそ「この硬貨には価値があるよね!」って受け入れられた

※ちなみに、新貨幣と今までに使われていた貨幣との価格については、1円=1両とされた

金銀の交換比率

「貿易1円銀100円につき本位金貨101円」の交換比率と定められました。

※これは覚える必要なし

新貨条例の結果

明治新政府は金本位制を確立しようとしましたが、結局、金本位制を実現することはできませんでした。

(理由)国内に十分な量の純金がなかったため

1878年には銀貨の通用制限が撤廃され、銀本位制に移行することに・・・。

※日本で金本位制が確立するのは、日清戦争の賠償金によって金を大量に獲得できた後の1897年

関連:金本位制とは?メリットとデメリットを解説

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参考文献

関連:高校日本史Bの参考書・問題集を東大卒元教員が紹介【大学受験にもおすすめ】

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