徴兵令の
- 目的
- 内容
- 免役規定
- 結果
について説明します!
この記事の信頼性
僕(もちお)は、元社会科教員。
- 日本史についてそれなりにくわしい。
僕(もちお)は、東大入試で日本史を選択。
- 日本史についてそれなりにくわしい。
徴兵令とは【1873年】
徴兵令は、明治維新の三大改革のなかの一つである兵制改革に位置付けられる政策です!
学制(1872年) | 教育改革 |
---|---|
徴兵令(1873年) | 兵制改革 |
地租改正条例(1873年) | 税制改革 |
徴兵令の目的
徴兵令(1873年)の目的は、「近代的な軍隊をつくること」です。「ちゃんとした軍隊を作りたい!」って、明治新政府は考えたわけです。
※戊辰戦争の時に明治新政府は旧幕府と戦いましたが、その時の新政府軍は薩摩藩や長州藩などの藩兵が集まった軍隊にすぎず、政府直属の軍隊っていうわけではありませんでした。
※あと、廃藩置県に対する旧大名からの反発をおさえるために、廃藩置県の直前に政府直属の軍隊が”一応”組織されました(御親兵)。ですがこの御親兵は、主に薩摩・長州・土佐の3つの藩から藩兵を集めて組織した軍隊でした。武士という特権身分の人が集まって組織された、ある意味”昔ながらの”軍隊だったわけです。
このように、明治新政府は「近代的な軍隊」「ちゃんとした軍隊」を持っていなかったわけです。
そこで、「武士っていう特権身分の人だけで軍隊を組織するのではなく、国民全員に兵役の義務を課すべきだ!」っていう構想のもと、政府直属の新たな軍隊をつくることが目指されました。
「国民全員に兵役の義務を課すべきだ!」っていう考えに基づいて近代的軍隊を作ろう!っていう構想を練ったのは、長州藩出身の大村益次郎という人でした。
当初は「藩兵による軍隊の方がいいのでは?」っていう反対意見もあったようで、大村益次郎は1869年に暗殺されてしまったのですが、その後、長州藩の山県有朋という人が引き継いで実現させました。
※靖国神社に大村益次郎の銅像があります。
廃藩置県の際に政府直轄軍として組織された御親兵は、1872年、近衛兵っていう名前に変わって天皇を警護する役割を担いました。
また、藩兵は廃藩置県で解散させられましたが、一部は各地に設けた鎮台に配置され、反乱や一揆に備える役割を担いました。
※鎮台=明治初期の常備陸軍
徴兵令の内容
1872年の徴兵告諭(「これから徴兵しまっせ!」っていう宣言みたいなもの)に基づいて、1873年に徴兵令が出されました。
徴兵令(1873年)
- 国民皆兵を原則
- 士族・平民を問わず、満20歳に達した男性から選抜して3年間の兵役に服させる
- 3年間兵役に服した後は、一定期間、有事や訓練の時に限って召集する(予備役・後備役)
※予備役・後備役=普段は民間で普通に生活を送る。召集解除後は元の生活に戻る。予備役の方が優先的に召集される。
ポイントは、
- 武士身分っていう特権身分の人だけで軍隊を組織するのではなく、
- 志願兵によって軍隊を組織するのではなく、
- 国民全員に兵役の義務が課された
ということです。
徴兵令の免除規定
国民皆兵が原則とされましたが、「兵役につかなくてもOK!」っていう条件がありました。
免役規定
体格が基準に達しない者 | (たぶん)背が小さい人は戦闘の役に立たないから。 |
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病気の者 | (たぶん)病気の人は戦闘の役に立たないから。 |
戸主とその跡継ぎ | (たぶん)家が断絶するのはマズイっていう価値観だったから。 |
官吏・学生 | (たぶん)勉学等で力を発揮できる人はそっちの分野で活躍してもらった方が良いから。 |
代人料270円をおさめる者 | (たぶん)新政府にとって、お金を納めてくれるのは兵役につくのと同じくらいありがたかったし、お金を納められるくらい裕福な人はビジネスの分野で活躍してもらった方が良いから。(※現在のお金で約880万円らしいです) |
この免役規定の結果、実際に兵役についたのはほとんどが農村の二男以下だったようです。
徴兵令の結果
「兵役に行くのは嫌だ!死んじゃうかもしれないんでしょ?」って思うのが普通の感覚ですよね。しかも1872年の徴兵告諭に
「人は心と力を尽くして国に報いるべきなのだ!西洋人はこれを血税って言うみたいだよ。」
って書かれていました。この徴兵告諭の「血税」っていう響き、怖すぎですよね(←本当に血を抜かれるって勘違いをした人もたくさんいたらしい)。
こうして、血税一揆と呼ばれる農民の反対運動が起こりました。
その後
1888年、陸軍の編制が、国内治安対策をメインとした鎮台から、対外戦争対策をメインとした師団に改められました。
※師団=戦闘・支援・兵站の各部隊で構成され、独立して軍事行動を展開できる
また、1889年には徴兵令が全面改正されました(免役規定が廃止され、ほぼ国民皆兵が実現した)。
人々はだんだんと「兵役に行かない人の方が恥ずかしい」みたいな感覚を持つようになったらしいです。
動画でも解説
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