【解説&掘り下げ】2024共通テスト地理B 大問4 環太平洋の地域
共通テスト地理(※)で9割超え、理想は満点!を目指していた僕が、実際にどんなふうに問題に取り組んでいたのかを紹介します。(※僕が受験生だった時はセンター試験でした)
70〜80点台で伸び悩んでいる人にとって、きっと参考になると思います!
大きく2つの場面に分けて解説します。
1. 問題を解いている最中の思考
- ① 時間を意識しながら、どうやって答えを特定していくか
- ② 自信がない時・迷った時に、どうやって確証を得るか
2. 解き終わった後の復習(事後学習)
- ③ 教科書知識の確認と、そこからの深掘り・整理
- 問題
- 解答番号19(太平洋の海底地形)
- 解答番号20(環太平洋地域の気候と衣服)
- 解答番号21(環太平洋地域の食文化)
- 解答番号22(オセアニアと他地域の結びつき)
- 解答番号23(環太平洋地域の貿易)
- 解答番号24(日本と環太平洋地域の関係)
- ほかの大問・年度の解説一覧はこちら
問題
問題は東進ハイスクールさん等のページを参照してください…!
解答番号19(太平洋の海底地形)
問題を解いている最中の思考
えー難しくない?
Aは海溝がある。
Bはハワイの近くで、海溝も海嶺もないがホットスポットがある?
Cはイースター島があるあたり?わからん・・・。
Dは環太平洋造山帯の近くだからゴツゴツしていそう。
①はかなり深い海溝があるからA。
②は白丸の近くで水深が浅くなっているから、大陸に近いDかな。白丸の近くで海面スレスレになっているのは、グレートバリアリーフか。②はDで間違いない。
③は本当に何もない場所。これがBかな?プレートの境界じゃないけど、ホットスポットがあるせいで近くにハワイがあるってことを言いたいんだろうな。③はBのはず。
④は消去法でC。イースター島があるあたりは海底がゴツゴツしていて、だから島があるってことか。確かにナスカプレートの左端がCの左半分あたりにあったような。
ということで答えは③。→間違いでした…(答えは④)
解き終わった後の復習(なぜ間違ったのか?)
ホットスポットの上をプレートが移動することによって形成されたハワイ諸島が、結構長いことを理解していなかった。
ミッドウェー海戦のミッドウェー島ってハワイ諸島の端だったんだ。知らなかった。
あと、イースター島は太平洋プレートとナスカプレートの境界付近に位置することと、太平洋プレートとナスカプレートの境界は「広がる境界」であることを理解していなかった。
でも確かに、
- 太平洋プレートが西の方に移動している(→だから東北沖のユーラシアプレートとの境界に沈み込み帯が分布し、地震が起きる&奥羽山脈が形成される)ことと、
- ナスカプレートが東の方に移動している(→だから南アメリカプレートとの境界に沈み込み帯が分布し、地震が起きる&アンデス山脈が形成される)こと
を合わせて考えれば、太平洋プレートとナスカプレートの境界には海嶺があるはずで、④の図は海嶺っぽくないからCが④なわけない!って気づけたかも。
結構細かい知識を問う問題だな・・・って思ったけど、よく考えたら基礎知識を組み合わせることでなんとか解けたはずの問題だった。ちくしょー
一つ一つのプレートの移動方向を再確認するべし…!
解き終わった後の復習(事後学習)
太平洋プレートが北西方向に動くから、アメリカの西海岸では「横にずれる境界」になる?
太平洋プレートが北西方向に動いていることが、アメリカ西海岸(特にカリフォルニア州の海岸線)に沿って、プレート同士が横にずれる境界(トランスフォーム断層)を形成する主因となっている。
参考:サンアンドレアス断層
イースター島はどんな要因でできた島?
イースター島もホットスポット(固定されたマグマの供給源)による火山活動によって形成された島。
解答番号20(環太平洋地域の気候と衣服)
問題を解いている最中の思考
Fは7月に気温が高くなっているから北半球。1月にかなり寒くなっているので、ロシアかカナダあたり?
Gは気温の季節変化がほとんどない。にもかかわらず気温は低めで、熱帯ではない。赤道直下の高山気候ってことかな。
Hも気温の季節変化がほとんどない。ただ気温が高く、雨季と乾季が明確。サバナ気候だろう。
ア:アルパカの毛ってことで、高山気候の地域の話だろう。G。
イ:トナカイだから高緯度地域。F。
ウ:通気性と吸湿性に優れた衣服で、腰に巻く。熱帯。H。
よって答えは③。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
特になし
解答番号21(環太平洋地域の食文化)
問題を解いている最中の思考
日本は漁業大国なので、魚の摂取量は多そう。また、醤油や豆腐のような大豆食品も好きなので、大豆の摂取量は多そう。肉ばっかり食べるイメージはない。肉と魚をバランスよく食べそう。牛乳に関してはよくわからないけど、給食で牛乳は出てくることもあり、それなりに親しみがある。
カナダはよくわからない。アメリカと似て肉をよく食べるのかな?アメリカ合衆国とカナダの国境付近は酪農地帯だから、牛乳も結構飲みそう。大豆はわからない。魚もわからない。
ベトナムは東アジア文化圏だから日本と同じような傾向を示しそう。
ということで、表を見る。
肉が多いカはカナダだろう。
魚が多いキは日本。
残ったクがベトナム。
1人1日当たりのたんぱく質供給量の総量が最も多いカが発展途上国のベトナムってことはないんじゃないかな。魚が少ないカが日本ってこともないだろうし。カはカナダで間違いない。
悩むのはキとクだけど、やっぱり魚の量の違いが決め手かな。
あとベトナムは熱帯から温帯で気温が高めなので、酪農は盛んじゃないだろう。牛乳にそれほど馴染みのない国だと思われる。日本の方が牛乳を飲むはず。
ってことで答えは③。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
なぜベトナムは牛乳の消費量が少ない?熱帯地域は牛乳は飲まない傾向にある?
熱帯地域は牛などの家畜が感染しやすい病原菌や寄生虫が多く、家畜の飼育が困難。
また、冷蔵技術がない時代に牛乳を安全に保存することが非常に困難だった。
※アジアの多くの国と同様に、ベトナム人の多くは乳糖不耐症の傾向(=牛乳を飲むとお腹を壊す傾向)がある。
なぜベトナムなど熱帯地域の人々は乳糖不耐症が多い?
人類はすべての哺乳類と同様に、乳幼児期を過ぎた成人になると、乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の生産が減少し、牛乳を飲めなくなるのが基本。離乳後には牛乳(母乳)を飲む必要がなくなるため。
しかし、ヨーロッパや中東、アフリカなどでは、安全な水や食料の確保が困難な時に、動物の乳が重要な栄養源とみなされることが多かった。
その結果、乳を飲める人は飲めない人(乳糖不耐症の人)よりも栄養を確保でき、生存率が上がり、より多くの子孫を残したと考えられる。こうして、数千年にわたる歴史の中で、ヨーロッパや中東、アフリカなどでは乳糖不耐症の人が少なくなった。
一方、東南アジアや東アジアは温暖で雨量が多く、他の栄養源も豊富だったため、乳に頼る機会が少なかった。その結果、乳を飲めることが生存や子孫を残す上で有利に働くことはなく、乳を飲めるという特徴が集団内で広がることがなかった。
たぶんこういうメカニズム。
解答番号22(オセアニアと他地域の結びつき)
問題を解いている最中の思考
アメリカ合衆国のグアムとハワイは、北アメリカからの観光客が多いはず。また、特にハワイは日本人観光客に人気。
フィジーはどこが旧宗主国だったっけ・・・?イギリス・・・?アメリカではなかったはず。フィジーはオーストラリアに近いので、オーストラリアからの観光客が多そう。
サはJからの観光客が圧倒的。
シは北アメリカからの観光客が圧倒的で、Jからもそれなりに多い。Jはアジアで、サとシはハワイかグアムだろう。
スはオセアニアからの観光客が多いのでフィジーで間違いないはず。
サとシの判定が難しい。アジアからの観光客が多いサがハワイかなって思ったけど、こんなに圧倒的なのかな?
ここでタヒチのデータを使えってことか?
タヒチはKのヨーロッパからの観光客と北アメリカからの観光客が多い。タヒチのデータは、「人はなるべく近いところに旅行しがち」ってことを言いたいのか?って考えると、ハワイは北アメリカとヨーロッパに比較的近いから、それらの地域からの旅行者が多くなりがちってことかな。
だから北アメリカからの旅行者が多いシはハワイ?よく見ると、シはサよりもK(ヨーロッパ)からの旅行者の割合が多い。
で、よりアジアに近いグアムは、アジアからの観光客がものすごく多くなる。だからサはグアムってことだろう。
よって答えは②。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
グアムって何?
アメリカ合衆国の準州。ミクロネシアの中で最大かつ最南端の島。米西戦争後の1898年にアメリカ領となった。
サイパンは?
アメリカ合衆国の自治領である北マリアナ諸島連邦の中心的な島。ミクロネシアに属する。
参考:マリアナ諸島
アメリカの州と準州と自治領の違いは?
州(State)=連邦を構成する主権を持つ政治単位。憲法により連邦政府と権限を分有する。
- 上院・下院ともに完全な議決権を持つ代表を送る。
- 完全なアメリカ合衆国市民権と全ての憲法上の権利を持つ。
準州(Territory)=連邦政府が直接管轄する領土。州とは異なり主権を持たない。
- 下院に議決権のない代表(デリゲート)を送るのみ。上院には代表なし。
- アメリカ合衆国市民権を持つが、連邦選挙の投票権はない(大統領選挙など)。
- 米領バージン諸島、グアム
自治領(Commonwealth)=準州の一種。法的な地位は準州と同じだが、「より強い自治権を求めている」という政治的なニュアンスを持つ。
- 準州と同様に議決権のない代表を送る。
- 準州と同様、連邦選挙の投票権はない。
- プエルトリコ、北マリアナ諸島
フィジーは?
大小合わせて約330の島々(うち約220は無人島)から構成される国。1970年にイギリスから独立した。
イギリス植民地時代に多くのインド系労働者が移住したため、国民の約半数がフィジー系、約半数がインド系という多民族国家となっている。
タヒチは?
フランス領ポリネシアに属する島々。フランスの海外領土で、公用語はフランス語とタヒチ語。
参考:ポリネシア・メラネシア・ミクロネシアの違いをわかりやすく
解答番号23(環太平洋地域の貿易)
問題を解いている最中の思考
ペルーは経済大国ではないので、ペルーからの輸出額は1999年も2019年もそんなに多くないと思う。だからSがペルーかな?
ペルーが輸出するのはアンチョビくらい?肥料としても使われるんだっけ?中国が輸入していそう?だとしたらSからの輸出額が大きいQが中国かな。
Qが中国だとしたら、中国からの輸出額が大きいPがアメリカのはず。
で、残ったRがオーストラリア。
この推測が正しいか検証してみよう。
中国はオーストラリアから鉄鉱石や石炭などの資源を輸入していそう。RからQへの輸出額が大きいので、整合性はとれている。Rのオーストラリアの輸入額が1999年から2019年にかけてそれほど大きく変化はしておらず、2019年時点で600億ドル以上に達してもいないのは、オーストラリアがすでに成熟した国家で、人口が少ない国家だからだろう。Rはオーストラリアで間違いない。
ではPはアメリカ合衆国は正しいか?1999年時点ではアメリカ合衆国から中国、オーストラリアへの輸出額が相対的に大きかったのは、アメリカ合衆国が世界一の経済大国だったことから、正しそう。すでに中国が経済発展を遂げつつあった1999年時点でもQ(中国)からP(アメリカ)への輸出額はそれなりに大きかった。2019年になると、さらに成長し「世界の工場」となった中国(Q)からアメリカ(P)への輸出額は激増した。Pはアメリカで正しいはず。
Pが中国のパターンも考えてみよう。Pが中国だとしたら、Qがアメリカ合衆国になる。R(オーストラリア)からQ(アメリカ)への輸出額が、1999年から2019年にかけて激増したとは考えにくい。資源需要が激増した中国がQだと考えるのがやはり妥当。
ということで、Pはアメリカ、Qは中国、Rはオーストラリア、Sはペルーで間違いないだろう。
答えは②。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
なぜ中国は「世界の工場」になれたのか?
→中国の工業をわかりやすく:なぜ中国は「世界の工場」になれたのか?
中国は「世界の工場」になったけど、中国もファブレス化を進めて、中国から工場が転出し、産業の空洞化を経験することになるのかな?
経済成長と所得水準の向上により、中国の沿海部を中心に労働コストが大幅に上昇した。
これにより、労働集約型で利益率の低い製造業はベトナム、インドネシア、インドといった人件費がより安いASEAN諸国や南アジアへ生産拠点を移す動きが加速している。
米中間の貿易摩擦などの影響で、多くのグローバル企業がサプライチェーンのリスク分散を図り、生産拠点を中国国外に移している。
そうすると中国で雇用されている単純労働者は大変なことになるよなあ・・・
工場が閉鎖または移転することで、工場労働者は職を失う。特に、他のスキルを持たない単純労働者は再就職の機会が限られ、収入が不安定になるリスクが高まる。
- 職を失った出稼ぎ労働者(農民工)は、故郷である内陸部の農村へ帰らざるを得ない。
- 農民工は都市戸籍住民と比較して、社会保険への加入率が著しく低い。十分なセーフティネットがないため、経済的に極めて脆弱な状態に置かれてしまう。
うへー・・・産業の空洞化で失業者が増えることと、軍事的な人員確保は相性が良さそうだなあ・・・(以下略)。
解答番号24(日本と環太平洋地域の関係)
問題を解いている最中の思考
①日本企業の北アメリカでの現地法人数はほとんど変化していない。一方、東アジア、東南アジアでは増えている。①は正しい。
②アジアでは全体的に非製造業の割合が高まっている。正しい。
③北アメリカに進出している日本の企業はソフトウェアやAIよりも自動車産業っていうイメージがあるけど・・・ソフトウェアやAIの企業も進出しているのかな。「含まれる」だから、この文章は間違いとは言えないかな。
④自動車産業は工場で部品の生産から完成車の組立てまで一貫して行ってはいないはず。日本の工場や東南アジアの工場で各種の部品を作って、それをバンコクなどに輸送して、そこで完成車として組立てるっていう国際分業体制が形成されている。だから④は間違いだろう。
答えは④。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
アジアに進出している日本の非製造業とは?
2000年代以降、アジアの経済発展に伴って「アジアの中間層の購買力をターゲットとした非製造業」の割合が大きく高まった。
1. 流通・小売・飲食業
- コンビニエンスストアやスーパー:セブン&アイ・ホールディングスやイオンなど
- 外食産業:ラーメン、カフェ、居酒屋など
- 物流:ヤマトホールディングスなど
2. 金融・保険業
- 銀行、証券、保険
※他にも、総合商社がインフラ(発電所、鉄道など)や都市開発の大型プロジェクトを担当したりもしている。
バンコクが「東南アジアのデトロイト」になった理由は?
2000年代前半に、タイでは重点産業として食品、自動車、ファッション、ソフトウェア、観光の5分野が位置付けられた。「世界の台所」「アジアのデトロイト」というキャッチフレーズはこの時に登場した。
1.自動車工業の適地だった(ポテンシャルがあった)
- 広い平野があるため工場が集積しやすい
- 特に部品点数が多く関連工場の集積が必要な自動車工業に適した地域だった
- 東南アジアは人口が多く将来的な経済発展が見込めたため、市場としても有望だった
2.外国企業が進出できた
- タイは識字率が高いため、工場稼働のハードルが低かった
- タイの共産化を抑止しようとしたアメリカがタイを支援し、経済発展に不可欠なインフラを整備できた(←タイはインドシナ半島における最後の反共の砦)
- 1959年に誕生したサリット軍事政権(開発独裁)のもとで外資規制が緩和されたことで、外国企業の進出が促進された(日本車などの完成車工場の進出が始まった)
- 1997年にバーツ安となったアジア通貨危機を機に、コスト競争力を高めようとした日本の自動車工場がタイに積極的に進出した(トヨタはハイラックスというピックアップトラックの生産基地をタイに設けた)
- 結果、タイは自動車の輸出基地となった(そこに新興国ブームが訪れた)
3.物流網が整備された
- 国際貿易港(レムチャバン)や高速道路など優れた物流網が整備された
- 4.労働者の立場がそんなに高くない
- ストライキのハードルが高い(手続きを踏まなければいけない)



