未分類

【解説】2025共通テスト地理探究 大問2 地域調査(愛知県東三河)

モチオカ(望岡 慶)

共通テスト地理(※)で9割超え、理想は満点!を目指していた僕が、実際にどんなふうに問題に取り組んでいたのかを紹介します。(※僕が受験生だった時はセンター試験でした)

70〜80点台で伸び悩んでいる人にとって、きっと参考になると思います!

大きく2つの場面に分けて解説します。

1. 問題を解いている最中の思考

  • ① 時間を意識しながら、どうやって答えを特定していくか
  • ② 自信がない時・迷った時に、どうやって確証を得るか

2. 解き終わった後の復習(事後学習)

  • ③ 教科書知識の確認と、そこからの深掘り・整理
モチオカ ケイ
モチオカ ケイ
社会科コンテンツクリエイター
Profile
社会科教員向けの、社会科の教材研究・授業づくりのためのサイトを作っています! / 関東で生まれる → 公立中学校 → 公立高校 → 1年間浪人 → 東大(教育学部) → 東大院(教育学研究科) → 修士課程修了(教育学) → 公立中学校の教員に → 退職 → ブログをがんばる
プロフィールを読む

問題

問題は東進ハイスクールさん等のページを参照してください…!

2025 地理探究 大問2

解答番号5

問題を解いている最中の思考

a:正しい。

b:正しい。

c:付近の標高を読み取る。8.8と19。瓦町の方に向かって標高が高くなっている・・・よね?

川の流路に近い方が標高が高くて、離れると標高が低くなるって変だよな。川の侵食作用のせいで、流路付近は一般的に標高が低くなりがち。だから「国道1号は下り坂」ってことはないはず!

答えは②。→正解でした!

解き終わった後の復習(事後学習)

豊川が曲がったところにある軍用地はもともと何?

吉田城

江戸時代まで存在していた城は国有地になった?

明治政府は1869年の版籍奉還から1871年の廃藩置県によって、城の敷地や建物を接収し国有地とした。

接収された城郭のうち、軍事的に重要なものは軍用地として活用された。

参考:版籍奉還・廃藩置県についてわかりやすく解説

国道1号とは?

東京の日本橋から、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県を経由して大阪の梅田新道に至る国道。

江戸と京都・大坂を結ぶ東海道のルートをほぼ踏襲したもの。

なぜ桑畑は畑、田、果樹園に転換された?

豊橋周辺は古くから養蚕が盛んで、明治時代には器械製糸工場が設立された。

※製糸業の発展は、生糸が当時の日本最大の輸出品であり、重要な外貨獲得手段であったことと関係している。

※三河(現在の愛知県東部)は綿花栽培、綿織物業が盛んだった。日本で初めてワタが伝来した地らしい。

参考:日本の産業革命についてわかりやすく

参考:三河木綿の歴史

参考:明治時代から戦前(豊橋市美術博物館)

しかし、第二次世界大戦後、化学繊維(ナイロン、ポリエステルなど)が普及し、絹の需要が世界的に大きく減少した。また、途上国で人件費の安い養蚕業が発展した結果、日本の絹は価格競争力を失い、製糸工場は次々と閉鎖に追い込まれた。

その結果、利益が出なくなった桑畑は、キャベツやトマトなどの畑やミカン、ブドウなどの果樹園へと転換された。

※ちなみに、静岡で生まれた豊田佐吉は手織り織機の改良に努め、三河の繊維産業を支えた。豊田佐吉の孫である喜一郎が自動車事業に進出し、現在のトヨタグループの礎を築いた。

なぜ桑畑は独自の地図記号がある?

かつて日本で養蚕業が盛んだったから。

※桑畑の地図記号は2013年に廃止された。日本で絹産業が衰退し、桑畑が減少したため。

解答番号6④

問題を解いている最中の思考

①1000人以上のメッシュのみで3600人以上?1000人以上のメッシュは4つあるので正しい。

②従業者数が500人以上のメッシュは確かに連続して分布しているなあ。正しい。

豊橋市において、製造業は特に2つの地区に集中している。それぞれ製造業が立地している理由は何なのか?を問いたいんじゃないかな。

③工業が集積する背景の一般論の話。輸送や取引にかかるコスト軽減は工業が集積する背景の一つ。正しい。

④2つの地区は確かに主要道路には隣接している。でも、果たして道路の利便性が「最も大きな」立地要因と言えるのかな?わざわざ「最も大きな立地要因」と限定している時点で、この文章が誤っている匂いがぷんぷんする・・・。

実際、三河湾臨海地区に関しては「臨海地区」という名前通り、港湾に隣接している。しかもわざわざ港湾っぽい写真も掲載してくれている。

これは三河湾臨海地区は「海に面しているからこそ工業が集積した」ということを意味しているはず。自動車って自動車専用の船舶で運搬されることが多いし。完成車を大量に運ぶ際、道路を使うよりも船を使ったほうが便利だもんな。

ってことで④が誤り。答えは④。→正解でした!

解き終わった後の復習(事後学習)

集積指向型工業とは?

一定の場所に複数の関連工場が集中して立地することで、相互に利益を得て発展する工業の形態。

  • 部品や中間財の輸送コストや時間を削減できる。
  • 取引にかかるコストを削減できる。
  • 数多くの部品を一つ一つ調整することで総合的な性能を高められる。
  • 専門的な技術者や研究者が集まることで、知識や技術の共有がしやすくなる。

集積指向型工場の具体例は?

自動車工業

  • 太田(群馬:スバルの生産拠点)
  • 横須賀(神奈川:日産の生産拠点)
  • 豊田(愛知:トヨタの生産拠点)
  • 鈴鹿(三重:ホンダの生産拠点)
  • デトロイト(アメリカ)
  • ミュンヘン(ドイツ)

機械工業

  • 大田区(東京:関東大震災をきっかけに工場が大田区に移転)
  • 東大阪(大阪:古くから木綿産業や加工業が発展)

参考:【特集】挑戦し続ける!ものづくりのまち大田

参考:ステキな モノづくりのまち – 東大阪市

解答番号7 →⑤

問題を解いている最中の思考

キャベツは葉物野菜で、鮮度が重要。消費地の近くでの生産が適しているが、冷蔵運搬技術の向上により、消費地から離れた場所でも生産しやすくなった。

米は長期間の貯蔵が可能だけど、水資源が豊富な地域で、かつ平坦な土地じゃないと生産しにくい。灌漑施設(用水路)の整備をすることで、河川沿いじゃなくても稲作はできるようになる。

サツマイモも長期間の貯蔵が可能だけど、米とは異なり豊富な水資源や平地はそこまで必要とされず、場所は問われない。

「大消費地へのアクセスが向上した」というのは、葉物野菜の生産に有利に働くよね。米もサツマイモも鮮度はそこまで重要じゃないから、大消費地へのアクセス向上の影響はあまり受けないはず。

だから1960年に比べて2006年の生産量が大きく増えているのがキャベツかな?ウがキャベツ?

でも南部の半島でしかキャベツ生産が増えていない理由がわからん。うーん・・・北部の山がある地域は消費地から遠いので、キャベツのような生鮮食品は生産しにくいってことかな。いくら「大消費地へのアクセスが向上した」とは言っても、山の中から都市部へのアクセスまで格段に向上したとは考えにくいし。

「豊川用水が1968年に開通したことで、栽培する作物が大きく変化した」というのは、灌漑施設の整備によりキャベツや米を生産しやすくなったと言うこと?

サツマイモのような芋類はわりと粗放的に生産できるのがいいところだから、灌漑施設が整備される前はサツマイモが栽培されていた。でも豊川用水が開通したことでサツマイモの収穫量が減って、逆にキャベツや米の生産が増えたってことじゃないかな。

ってことで、1960年から大きく収穫量が減っているイがサツマイモ?

南部の半島は、豊川用水の開通前は特に水不足に困っていたし、大消費地へのアクセスが悪いから、サツマイモが(ある意味で仕方なく)栽培されていた。でも、豊川用水の開通後、さらには大消費地へのアクセス向上後はわざわざサツマイモを生産する必要がなくなり、より収益を見込めるキャベツ(ウ)などに切り替えたってことだと思う。

残ったアが米?

水不足に困っていただろう南部の半島で、1960年時点でもそれなりに収穫量があって、2006年にむしろ減少しているのが気になるけど・・・。

んー・・・雨水やため池を使ってできる範囲で稲作をしていた(それすら厳しい場所ではサツマイモを栽培していた)けど、大消費地へのアクセスが向上したことで、半ば無理やりやっていた稲作もキャベツ生産に切り替えたってことかな。

北部の山の中でも収穫量が微妙にあることも、谷間で稲作はできるってことと矛盾しないし。米は主食だから、いろんな場所で各地の農家が頑張って生産していたんだよね、きっと。

でも減反政策をするくらい米余りになったから、東三河地域でわざわざ稲作をする必要も薄れてきて、全体的に衰退傾向にある。中でも南部の半島は稲作(ってか農業全般)に不利だから、水を引っ張ってきて、高収益が見込める農作物を生産することにしたんだよね。そういうことなはず!

そういえば南部の半島(田原市)は電照菊の生産で有名って、中学校の教科書に書いてあった気がする。高収益が見込める農作物を作ることにしたってことよね。

ってことで、アが米、イがサツマイモ、ウがキャベツで間違いないはず!!答えは⑤。→正解でした!

解き終わった後の復習(事後学習)

なぜ渥美半島では園芸農業が盛ん?

暖流の黒潮が近海を流れているため平均気温が高く、日照時間が長いことから、渥美半島はもともと農業に適した条件を持っている。

しかし、大きな河川がなく台地や砂丘が多い地域だったため、灌漑用水の確保の点で作物の栽培が難しかった。

1968年、大規模な用水路(豊川用水)が整備されて水を安定的に確保できるようになり、さらにほぼ同時期に東名高速道路が開通して大都市への輸送がしやすくなった。

その結果、都市向けの野菜や花などを栽培する園芸農業が発展した。

(例)

  • 電照菊
  • メロン(←ガラス温室やビニールハウスを利用)

※渥美半島は冬でも温暖なので、温室の暖房にかかるコストを抑えることができる

参考:中部地方の地誌【中学地理】

生鮮食品ってどうやって消費地に運ばれるの?

生産地から最終的な小売店・飲食店に届くまでの主なルートは、大きく分けて

  • 市場を経由するルート
  • 市場を介さないルート(直接取引)

の2種類がある。

市場を経由するルート

不特定多数の生産者から多様な生鮮品を大量に集め、大都市圏へ供給する。

  • 農産物は農家で収穫された後、近隣の農協(JA)の集荷所に運ばれる。
  • 水産物は漁獲後、漁港の市場に運ばれる。

  • 集荷された生鮮品は、産地市場から大型のトラックで大都市圏の中央卸売市場(豊洲市場、大田市場など)へ運ばれる。

  • 市場に仕入れに来るか、仲卸業者がスーパーの配送センターや店舗、飲食店に届ける。
市場を介さないルート(直接取引)

近年、鮮度や価格競争力を高めるため、卸売市場を通さずに直接取引を行うケースが増加している。

  • 農家や生産組合と契約し、商品を直接、自社の物流センター(総合物流施設の中のテナント)や店舗に運ぶ。

※総合物流施設では、商品の検品、仕分け、店舗ごとのピッキング(集品)、そして自社配送トラックへの積み込みといった一連の作業が行われる。

東京駅にある「回転寿司 羽田市場」は、日本各地の港で水揚げされた鮮魚を飛行機・高速バス・トラック・新幹線などで輸送しているらしい。

参考:羽田市場

(2022.11撮影)

ベトナムのホーチミンに行った際に入ったレストランは、海産物を毎日飛行機で仕入れているとのこと。すごい。

(2022.12撮影)

JRは最近、新幹線を使った物流に力を入れている?

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の上限規制(年間960時間)が適用された。

ドライバーが長距離・長時間運行できなくなり、物流分野で人手不足が深刻化するという課題を解決する上で、JRの新幹線物流が注目されている。

  • 新幹線は、トラック輸送と比較して圧倒的な速達性と正確な定時性を誇る。鮮度が重要な生鮮食品の輸送に適している。
  • 二酸化炭素の排出量を削減するというメリットがある。

解答番号8①

問題を解いている最中の思考

自動車や鉄道で行き来しやすい静岡との結びつきの方が強いんじゃないかな。長野は新幹線にしろ自動車にしろ、かなり行き来しにくい。

ってことで、旅客数が少ないJが長野で、多いKが静岡。

じゃあ東三河地域の人が静岡に行く場合、自動車と鉄道、どちらで行くんだろう?

愛知県の東部から静岡はすごく近いから、自動車で行く人の方が多いんじゃないかな。大阪に行く時はどうだろう?遠いから鉄道を使う人の方が多くなりそうだ。って考えると、カが鉄道、キが自動車になりそう。

だから答えは①だと思う。

自信を持つためにもうちょっと考えよう。

この問題は交通手段の特徴が問われている問題。鉄道は中距離、自動車は近距離の移動に使われることが多い。ちなみに航空機は長距離。

愛知県東部から見て、静岡は近距離、長野は中距離と読み替えることができる。すると、人が選択する移動手段の傾向として、近距離の静岡へは自動車を選択すると考えられる。だからキは自動車。

でも、キが自動車だとしたら、中距離の長野でも自動車の利用が多いじゃないか?という疑問が湧く。

ただ、漠然と数字を眺めるのではなく割合を計算して考えると・・・長野は鉄道:自動車=1:13で、静岡は鉄道:自動車=1:60。だから、中距離の長野の場合は鉄道をより選択しやすくなるということが読み取れる。だから、キは自動車で間違いないはず。

・・・にしても、鉄道と自動車の差が大きすぎる気がする。なぜ愛知県東部と静岡・長野間の移動で鉄道は選ばれにくいのだろうか?

これは、愛知県東部も静岡県も長野県も都心部とは言い難い場所で、鉄道網がそれほど発達していないからじゃないかな。特に愛知県から長野に鉄道で行くのは地形的に難しすぎる。愛知県と長野県の間にはちょうど日本アルプスが位置する。そんなに本数が多くない列車に乗って、山の中を長時間走ることになるはず。つらそうすぎる。

ってことで、やっぱりキは自動車でOKだと思う。答えは①。→正解でした!

解き終わった後の復習(事後学習)

物流と人流の違いは?求められることの共通点と相違点は?

事業者としての視点と、利用者としての視点のどちらも考えることが重要。

事業者として

事業者にとって、物流も人流も「移動サービス」であり、「いかに積載率を高め、空気を運ばないか」が利益の鍵。

そのために「ハブ・アンド・スポーク」という効率的な輸送システムを作る。

  • 物流:巨大な物流センター(ハブ)に荷物を集約し、方面別に仕分け直して配送する。
  • 人流:ターミナル駅やハブ空港に人を集め、長編成の列車や大型機で大量輸送する。

相違点としては、在庫の概念がある。

  • 物流:ハブ(倉庫)で荷物を一時保管できる。
  • 人流:人間は在庫にはできない。ハブ(駅や空港)での待ち時間は苦痛なので、スムーズな接続が必須。
利用者として

物流の場合、モノに合わせて最適な手段を選択する。

  • スピード不要、コスト最優先→船・鉄道(大量輸送・長距離)
  • 柔軟性・戸口配送重視→トラック(中短距離・ラストワンマイル)
  • スピード重視、衝撃回避→飛行機・新幹線(高付加価値・超長距離)

※トラックは他の手段と組み合わせて使われることが多い(複合一貫輸送)

人流の場合、安全性が最優先される。その上で、コスト、スピード、快適性を重視する。

  • 定時性・安さ重視(通勤・通学) → 鉄道(時間が読める)
  • 長距離移動(旅行・出張) → 新幹線・飛行機(速い)
  • 自由度・プライバシー重視 → 自家用車
  • 快適性・利便性重視 → タクシー
  • 安さ重視 → 高速バス

ほかの大問・年度の解説一覧はこちら

共通テスト地理/取り組み方

記事URLをコピーしました