地方自治についてまとめました!
本記事の内容
- そもそもなぜ地方自治が行われるのか?
- 地方自治の構造(そもそも何が必要なのか?)
- 地方自治の仕組み(必要なことを実現するためにどんなシステムが採用されているか?)
地方自治とは
地方自治
地域の住民が、その地域の実情に合わせて政治を自主的に行うこと
そもそもなぜ地方自治が行われるのか?
- より良い生活をするため
- 「自分が生活するエリアで何が必要か?」については、そのエリアでのリアルな生活実感を持つ人が考えて決めた方がいいから
地方自治の構造
日本の地方自治の具体的な仕組み(←首長とは?とか、地方議会とは?とか)に行く前に、そもそも自分の地域の運営に必要なものって何なの?ってのを考えてみます!
地方自治に本当に必要な作業
・生活実感を持った人のリアルな意見を拾う
・実行可能な具体的な政策を考える
・自分の地域の運営に必要なお金を集めて管理する
・実行する政策を決める(優先順位を決める)
・決まった政策を実際に実行する
※優先順位について・・・すべての政策を実行できればいいけど、実際にはリソース(お金・時間など)は限られている。なので優先順位をつけなければいけない!(→これが難しくて、人々が揉めるところ)
一人一人の住民がすべてを行うのは難しい
自分なりに考えていることがあったとしても(=リアルな意見を持っていたとしても)、
・実行可能な具体的な政策を考える
・自分の地域の運営に必要なお金を集めて管理する
・実行する政策を決める(優先順位を決める)
・決まった政策を実際に実行する
っていう作業に一人一人の住民が携わるのは難しいです。
(理由)
- 住民には一人一人、自分の仕事や生活があるので忙しい
- 政策を考えたり実行したりするのには専門的な知識が必要なことがある
- ぶっちゃけ面倒
地方自治に必要な作業を代行してもらう
ってことで、多くの住民は「自分の地域のために必要な作業を、誰か代わりにやってくれる人がいたらいいなー」っていう欲求を持つことになります。
こうして「地域のために必要な作業を住民の代わりにやってくれる人・組織」が生まれます。これが首長だったり地方議員だったり地方公務員だったりするわけです。
ここからは日本の地方自治の具体的な仕組みについてざっくり見ていきます!
地方自治の仕組み
登場する言葉
- 地方公共団体
- 首長
- 役所(地方公務員)
- 地方議会(地方議員)
大事なのは、首長(知事、市長など)や地方議会や役所などは、「地域運営のために必要な作業」をするための手段に過ぎない!ってこと。目的を達成するために人々が作った、ただのツールです。
教科書を読むと、こういうシステムが前提としてある!って感じがするけど、そんなことないです。必要だから発明されたものだし、必要がなくなったら解体されるべきものです。
※なので、今ある仕組みが今でも本当に最適な手段なのか?は常に考えなきゃいけない!
地方公共団体(地方自治体)
「自分の地域」の運営について考える際は、まず「どこまでが『自分の地域』なのか?」という概念が必要。
↓
地方公共団体
・都道府県
・市町村
・特別区
など
さらに「どこまでが『自分の地域』の仕事なのか?」が決まっていないといけません。
↓
役割分担
・国がやるべき仕事
・地方がやるべき仕事
- 都道府県がやるべき仕事
- 市町村がやるべき仕事
首長
首長=地方公共団体のトップの人
- 都道府県→知事
- 市町村→市町村長
※読み方は「しゅちょう」だけど、市長って聞き間違いしがちなので「くびちょう」って読むことが多い。
首長になれる人
- 都道府県知事は30歳以上、市町村長は25歳以上
- 住民の直接選挙で当選した人(任期:4年)
首長の役割
・地域の運営の責任者
・地域運営に必要な作業を行う
- 生活実感を持った人のリアルな意見を拾う
- 実行可能な具体的な政策を考える
- 自分の地域の運営に必要なお金を集めて管理する
- 実行する政策を決める(優先順位を決める)
- 決まった政策を実際に実行する
第147条
普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する。
第148条
普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。
第149条
普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
- 一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
- 二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
- 三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
- 四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
- 五 会計を監督すること。
- 六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
- 七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
- 八 証書及び公文書類を保管すること。
- 九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。
でもこれらの作業を首長一人でやるのは大変。っていうか無理。なので、首長は大まかな方針を指し示すのが主な仕事。
その方針を実現するために、具体的な細かい仕事をする人がたくさん用意されている(→役所で働く地方公務員)。
役所(地方公務員)
地方公務員=地域の運営に関わる仕事をする人たち
地方公務員になれる人
- 公務員試験に合格した人
役所(地方公務員)の役割
- 行政事務の執行
実際に地域の運営に関わる仕事を担っているのは首長ではなく地方公務員と言えます。
でも、「単に試験に合格しただけの人」(=住民の支持にもとづいているとは言えない人)が地域の運営を担うのは「地方自治」とは言えません。住民の意思を反映しているとは言えないので。
そこで、住民による選挙で選ばれた首長が地方公務員たちをまとめる存在としてトップに君臨しているわけです。これなら「単に試験に合格しただけの人」(=非民主的な手続きによって選出された人)が地域を支配してしまう・・・のを避けることができます。
じゃあ、方針を指し示す首長と実務を行う地方公務員がいれば十分なのか・・・?というと、そういうわけではありません。
彼らが行う「地域運営のために必要な作業」が本当に適切なものなのか?をチェックする必要があります。
※首長は住民の選挙によって選ばれた存在とはいえ、任期は4年もある。4年間なにもチェックしないわけにはいかない!
そこで、住民の意見を拾い、政策を考え、首長の政治をチェックする機関として地方議会(地方議員)が用意されています。
地方議会(地方議員)
地方議員=住民を代表する人たち
地方議会(地方議員)の役割
住民の意見を拾い、政策を考え、首長の政治をチェックする
- 生活実感を持った人のリアルな意見を拾う
- 実行可能な具体的な政策を考える
- 実行する政策を決める(優先順位を決める)
地方議員になれる人
- 25歳以上
- 住民の直接選挙で当選した人(任期:4年)
関連:地方議員は本当は不必要?
第96条
普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
- 一 条例を設け又は改廃すること。
- 二 予算を定めること。
- 三 決算を認定すること。
- 四 法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。
- 五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
- 六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。
- 七 不動産を信託すること。
- 八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。
- 九 負担付きの寄附又は贈与を受けること。
- 十 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利を放棄すること。
- 十一 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること。
- 十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において同じ。)に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項(同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。
- 十三 法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。
- 十四 普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の総合調整に関すること。
- 十五 その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の権限に属する事項
住民
住民=地方自治の主役
住民の役割
- 「地域運営のために必要な作業」の代行者を選ぶ(=選挙)
- 「地域運営のために必要な作業」のための費用を負担する(=税金)
- 「地域運営のために必要な作業」が適切に行われているかチェックする
首長や地方議員に代行をお願いしたら住民は何もできなくなる・・・というわけではなく、住民の意思を反映させるための仕組みが用意されています。
直接請求=住民が一定の署名を集めて行う請求
- 条例の制定・改廃の請求
- 事務監査の請求
- 首長・議員の解職請求(リコール)
- 議会の解散請求
住民投票
第10条
市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。
② 住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う。
首長・地方公務員・地方議員・住民の関係
※首長(都道府県知事・市町村長)も地方議員も、市民の民意を反映した存在
まとめ
首長(知事、市長など)や地方議会や役所などは、「地域運営のために必要な作業」をするための手段に過ぎない!って理解することが大事だと思います。地方自治の仕組みは、目的を達成するために作ったものにすぎません。
教科書を読むと、こういうシステムが前提としてある!って感じがするけど、そんなことないです。必要だから発明されたものだし、必要がなくなったら解体されるべきものです!
※なので、今ある仕組みが今でも本当に最適な手段なのか?は常に考えなきゃいけない!
関連:地方議員は本当は不必要?
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