モチオカ(望岡 慶)
日本の森林の現在の状況
日本の国土面積の約7割が森林
そのうち約4割が人工林(スギ・ヒノキなど)、5割が天然林。
森林面積自体は十分にある国だが、問題は「うまく使えていない」ということ。
木材・合板博物館にて。(2025.4撮影)
木材・合板博物館にて。(2025.4撮影)
日本の「木あまり」現象
日本の人工林は飽和状態にある。
- 1950〜60年代に、戦争で荒廃した山地を回復するため全国でスギやヒノキの苗木が植えられ、植林が進められた
- それらの人工林が今、成熟期を迎えている。
- 本来、伐採して利用すべき時期だが、うまく活用されていない
木材・合板博物館でもらった『よくわかる合板ハンドブック』。(2025.4撮影)
関連:なぜ日本の林業は衰退したのか?:「安い輸入材に負けた」だけではない
日本の人工林にはポテンシャルがある!
森林は、
- 保護する森(貴重な動植物が棲む森や、土砂災害や洪水を防ぐ森、水源確保に必要な森)
- 利用する森(人工林)
に分けて考えるべき。
木は老木になると光合成能力が落ちる。成長しきった木は伐採・更新した方がいい。
木材・合板博物館にて。(2025.4撮影)
しかし、日本の林業には課題が・・・
問題 | 内容 |
---|
林業従事者の高齢化・後継者不足 | 若い担い手が極端に少ない。 |
機械化の遅れ | 土地の所有者が協同して、大型の機械が入る道路網を作る必要がある。 |
森林所有権の細分化 | 地籍測量がなされていないので境界が不明確な山林が多く、集約管理が難しい。 |
所有者不明の土地や放置された山林が大量に存在 | 森林管理を放棄した地主がいたり、相続人が見つからない土地があったりする。所有者不明の土地の問題が解決すれば、企業が買収できるが・・・ |
木材・合板博物館でもらった『よくわかる合板ハンドブック』。(2025.4撮影)
Q
- ウッドショックとは(2021)
-
木材価格が急激に高騰した現象。
- 歴史的な低金利で米国の住宅市場が活況
- 中国による木材の高値買い付け(日本は中国に買い負ける)
- 日本に木材を輸送する手段がない(新型コロナによるロックダウンで海運業に携わる港の労働者が減少したため、コンテナが世界中の港に滞留することになり、世界的なコンテナ不足となった)
現在のトレンドは合板や集成材
合板(Plywood)
現在、国産材利用に貢献しているのが合板。
- 薄く切った木材を貼り合わせた板材。
- 強度が高く、反りや割れにも強い。
- 大量生産が可能で、規格化・工業化に向いている。
木材・合板博物館にて。(2025.4撮影)
木材・合板博物館にて。(2025.4撮影)
Q
- 日本で合板の利用を増やそうという動きが見られるようですが、なぜ合板なのですか?無垢材ではダメなのですか?
-
① コストが安いから
- 合板は、薄くスライスした木材(単板)を何枚も貼り合わせて作るため、無垢材(丸太から切り出した1枚板)より材料のムダが少なく、安く作れる。
- → 高級な無垢材の代替として、手頃な価格で安定供給が可能
② 反り・割れに強く、使いやすいから
- 合板は、木の繊維方向を交互に貼り合わせる構造なので、湿度や温度変化による反り・割れ・縮みが少ないというメリットがある。
- → 建築材料として扱いやすく、内装・家具・フローリングなどに広く利用されている
③ 木材資源を無駄なく使えるから
- 日本では間伐材や低質材など、「無垢材として使いにくい木」も多く出る。これらをチップや単板として合板に加工すれば、資源の有効活用になる。
- → 特に国産スギやカラマツなど、曲がりやすくて無垢材に向かない木も合板で活用可能
無垢材ではダメなのか?
無垢材には自然の風合いや香り、耐久性の高さといった魅力もあり、高級家具や寺社建築などでは今も重宝されています。
しかし、以下のような点で大量利用には不向きです。
- 🌧 湿気で反ったり割れたりしやすい
- 💸 高価で供給が不安定
- 🌲 資源として無駄が出やすい(丸太から切り出すのでロスが多い)
まとめ
無垢材は「贅沢品」、合板は「実用品」
住宅・公共施設・店舗・家具など、多くの木材を必要とする場面では、コスパと安定性の高い合板の方が現実的。
特に「国産材をもっと使おう」という動きの中で、合板は国産材の利用を増やすための有力な手段とされています。
集成材(Glued Laminated Timber)
- 木材を細かくカットし、繊維方向を揃えて接着したもの。
- 反りや割れが少なく、無垢材よりも安定した強度が得られる。
- 大型建築物(学校、体育館、ショッピングセンターなど)でも使われる。
木材・合板博物館にて。(2025.4撮影)
木材・合板博物館にて。(2025.4撮影)
大阪万博の大屋根リング。(2025.4撮影)
大阪万博の大屋根リング。(2025.4撮影)