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第一次世界大戦と日本
日英同盟を理由に参戦
当時の内閣である第2次大隈内閣は、
外務大臣加藤高明の主導で第一次世界大戦を「領土を広げるチャンス!」と捉え、日英同盟を理由にして参戦することを決意しました。
※イギリスは「日本が参戦すると日本が勢力を拡大してしまうかも…」ってことで、日本の参戦に消極的だった。
ドイツ権益を奪う
日本はドイツに宣戦布告し、ドイツが権益を持っている地域を攻めました。
ドイツが権益を持っている地域
- 中国山東省の青島(膠州湾を封鎖→山東半島に上陸→青島要塞を陥落させ、ドイツが降伏)
- 赤道以北のドイツ領南洋諸島
中国に要求しまくる(二十一カ条の要求)
1915年1月には、大隈内閣は中国に対していろんな要求をしました(二十一カ条の要求)。
(狙い)「ヨーロッパ諸国が第一次世界大戦で大変だから、今のうちに中国への進出を進めちゃおう!」
二十一カ条の要求の主なもの
- 第1号:山東省ドイツ権益を日本が継承するのを承認してね!
- 第2号:旅順・大連の租借期限などを99年延長してね!
- 第3号:中国の製鉄企業(漢冶萍公司)を日本と共同で経営しようね!
- 第5号:中国政府に日本人顧問を採用してね!
※漢冶萍公司(かんや ひょうこんす)=漢陽の製鉄事業+大冶の鉄山+萍郷の炭田を総合した会社(公司)
もともとこの要求は、日露戦争後のポーツマス条約でゲットした旅順・大連の租借期限を伸ばすことが主な目的だったようです。←旅順・大連の租借権は1923年で期限切れになってしまうことになっていた。
ところが、いろんな要求をあれもこれもと盛り込むうちに、いつの間にか「二十一カ条」になってしまったとのこと。
第5号について
第5号はほぼ中国への内政干渉を意味するトンデモナイ要求です。
そのトンデモナサを日本もわかっていたようで、当初は欧米諸国に秘密にしていました。
ところが、ブチギレた中国のリーダー袁世凱が「こんな要求してきてます!」ってリークしました(=情報を漏らした)。
→その結果、日本は国際的に批判を浴びることに(特にアメリカから)。
→日本は第5号を撤回。が、それ以外のほとんどを中国に認めさせることに成功。
二十一カ条の要求は、もちろん中国からしたら「ふざけんな!」って感じの内容です。なので、この二十一カ条の要求を受け入れた5月9日は「国恥記念日」と名付けられることになりました。
中国をお金で操ろうとする(西原借款)
日本はさらに、お金を中国に貸すことで中国への影響力を拡大しようともしました。
元老の山県有朋たちと対立して第2次大隈内閣が総辞職した後、1916年10月からは陸軍軍人の寺内正毅が首相になりました。

この寺内内閣のもとで、当時の中国で実権を握っていた段祺瑞(だん きずい)にものすごい額のお金を貸すという行為が行われました。
※中国のリーダー的存在だった袁世凱は1916年に死去した。袁世凱が死んだ後の中国で実権を握っていたのが段祺瑞。
お金を借りた側は貸してくれた側に頭が上がらないですよね。つまり、日本は中国にものすごい額のお金を貸すことで、中国政府への影響力を確保しようとした、ということです。
ただ、”日本政府が”中国に対してお金を貸すのはマズイです。というのも、「また”日本政府”が勝手なことして中国での勢力を拡大しようとしてやがる!」って欧米諸国から批判を受けることになるからです。
なので、”日本政府が”お金を貸すのではなく、あくまで”個人が”中国に”勝手に”お金を貸した、という形にしました。
西原借款
正式な外交ルートで段祺瑞政権と交渉を行うのではなく、西原亀三っていう人が段祺瑞政権への資金援助の交渉を行なった。
※西原亀三=寺内正毅首相の側近であり、貿易事業に従事する実業家。
※借款(しゃっかん)=国同士のお金の貸し借り。
二十一カ条の要求と西原借款によって、日本は中国への影響力を確保しようとしたわけです。二十一カ条の要求と西原借款はセットで理解するべき内容!
大戦後の講和会議対策
世界大戦が終わった後に有利に立ち回るために、日本は戦争中から手を打っておきました(←別に日本に限らず、他の国々もやっていることだけど)。
1916年:第4次日露協約 | ロシアと「極東における権益をお互いに守ろうね」と確認 |
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1917年:石井・ランシング協定 | アメリカと「中国に関して、望むことをお互いに認め合おうね」と約束 |
イギリスが日本軍艦の地中海派遣を求めてきたので、「ドイツから奪った権益を日本が継承することを支持してね」と密約 |
輸出を拡大し、好景気に(大戦景気)
第一次世界大戦のおかげで、日本は日露戦争後から続く国家財政の危機から抜け出すことができました。
(理由)日本は第一次世界大戦の戦場にはならず、輸出を拡大することができたから。

第一次世界大戦によって大きく3つの変化が起きました。
- ヨーロッパ諸国が軍需品を日本に求めた
- ヨーロッパ諸国がアジア市場にモノを売る余裕がなくなった
- アメリカが好景気になってストッキングなどの需要が大きくなった
そこで日本は、以下の対応をしました。
- ヨーロッパ諸国に軍需品を輸出
- アジア市場に綿織物などを輸出
- アメリカにストッキングの原料である生糸などを輸出
→この結果、貿易は大幅な輸出超過に。
それにともなって、工業生産額も大幅に伸びました。
- 造船業・海運業(←世界で船舶が不足したため)
- 鉄鋼業
- 化学工業(←ドイツからの薬品・染料・肥料などの輸入が途絶えたため)
- 繊維業(→中国で工場経営を行うことが増えた:在華紡)
こうして、日本は好景気になり(大戦景気)、日露戦争後から続く国家財政の危機から抜け出すことができました。
と同時に、三井・三菱などの財閥がさらに力を伸ばして、成金と呼ばれるお金持ちが増えることになりました。
一方で、好景気によって物価がアップした結果、一般民衆は苦しむことになりました。
(理由)賃金の上昇よりも物価の上昇の方が大きかった。
また、第一次世界大戦が終わった後は輸出が減って苦しむことになりました。
(理由)大戦景気はヨーロッパ諸国が戦争に専念しなきゃいけない状況だったから起きたものに過ぎなかった。
これらの結果、このあと米騒動という大事件が起こることになってしまいました。続きはこちらの記事で!

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参考文献
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