人種
身体的特徴によって区分された人類の集団
(例)肌の色、毛髪の色と形、目の色、鼻の形など
- コーカソイド(白色人種)
- モンゴロイド(黄色人種)
- ネグロイド(黒色人種)
※隣接する地域間では混血が行われる。
赤道付近で暮らす人々の肌の色が濃い理由
紫外線を浴びすぎると皮膚癌になりやすいため、紫外線から身を守るために皮膚のメラニン色素が増えた。
民族
文化的特色によって区分された人類の集団
(例)言語、宗教、生活様式など
最も重要な指標は言語
言語は最も重要なコミュニケーションの手段であるため、共属意識を高める重要な要素。
語族:言語学上、互いに親族関係を有する諸言語、同一の祖語から分かれて発展してきたと認められる諸言語の一群。
※言語学上、同じ語族とされるだけなので、生活上の実感はあまりない。
インド・ヨーロッパ語族
ヨーロッパ系民族を中心とする言語集団。ゲルマン語系、ラテン語系、スラブ語系などに分かれる。
ゲルマン系
- 英語
- ドイツ語
- オランダ語
ラテン系
- フランス語
- イタリア語
- スペイン語
- ポルトガル語
- ロマンシュ語
スラブ系
- ロシア語
- ウクライナ語
- ポーランド語
- セルビア語
ペルシア系
- ペルシア語
インド系
- パンジャブ語
- ヒンディー語
アフリカ・アジア語族
北アフリカから西アジアに居住する民族を中心とする言語集団。
- アラビア語
- ヘブライ語
ウラル語族
北ヨーロッパからウラル山脈東側の西シベリア周辺に及ぶ言語集団。
- ハンガリー語(マジャール語)
- フィン語
アルタイ語族
東アジアからトルコまで広がる言語集団。
- モンゴル語
- チュルク語
- トルコ語
- ウイグル語
シナ・チベット語族
中国からインドシナ半島に広がる言語集団。
- 中国語
- タイ語
オーストロネシア語族
東南アジアの島嶼部からオセアニアにかけて分布する言語集団。
- マレー語
- インドネシア語
- タガログ語
- 台湾語
スーダン・バンツー語族
- スワヒリ語
その他の語族
- ドラビダ系言語
- 朝鮮語(韓国語)
- アイヌ語
公用語
行政、教育、裁判などの公の場で使用されることが正式に認められている言語。普通は政治・経済の実権を握る民族の言語が用いられる。
→公用語が使えない民族は不利になる可能性がある。
※複数の言語を公用語にしている国もある。
- スイス(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)
- カナダ(英語、フランス語)
- シンガポール(中国語、マレー語、タミル語、英語)
- ベルギー(オランダ語、フランス語、ドイツ語)
宗教
宗教の教義・戒律は人々の生活のあり方を規定している。
世界宗教
- キリスト教
- イスラム教
- 仏教
キリスト教
パレスチナでユダヤ教を基礎とし、イエス=キリストによって始められた宗教。近世以降、ヨーロッパ人の海外進出により、世界各地に広まった。
- 創始者:イエス=キリスト
- 聖典:新約聖書、旧約聖書
- 聖地:エルサレム
※太陽暦:太陽の運行に基づいて作られた暦。
安息日である日曜日に教会に行き、祈りを捧げる。
カトリック
南ヨーロッパ、ラテンアメリカ、東ヨーロッパの一部の国々に信徒が多い。ローマ教皇が最高権力者。
- バチカン市国:イタリアの首都ローマの市内にある世界最小の独立国。
- サンピエトロ寺院:バチカン市国にあるローマ=カトリック教会の本山としての首席大聖堂。
プロテスタント
北・西ヨーロッパ、北アメリカの国々に信徒が多い。
東方正教
聖像崇拝問題を契機としてローマ=カトリック教会から分かれた。東ローマ帝国滅亡(1453年)後は、ロシア正教、セルビア正教など、各国・各地方の呼称が用いられている。
イスラム教
7世紀にアラビアの預言者ムハンマド(マホメット)によって始められた宗教。唯一神アッラーの信仰を説く。
- 創始者:ムハンマド
- 聖典:クルアーン(コーラン)
- 聖地:メッカ、メディナ、エルサレム
- メッカ:最大の聖地。祈りを捧げるところ。メッカの方向に向かって礼拝を行う。ムハンマドの生誕地。ハラーム・モスクがあり、中にカーバ神殿がある。
- メディナ:第二の聖地。ムハンマドが埋葬されている場所。
- エルサレム:当初はメッカではなくエルサレムに向かって礼拝をしていた。
※アッラーは世界の創造神であり最後の審判を下す存在。
※太陰暦:月の運行に基づいて作られた暦。
クルアーンはアラビア語で記され、日常生活を様々な面で規定している。
五行
信仰告白 | 「アッラーのほかに神無く、ムハンマドは神の使徒である」とアラビア語で述べる。 |
礼拝 | 1日5回、決まった時間に決まった作法でメッカに向かって礼拝をする。 |
断食 | イスラム暦の第9月の1ヶ月間、毎日、日の出から日没まで水を含む一切のものを口にしない。 |
喜捨 | 貧しい人や恵まれない人に施しを行う。 |
巡礼 | イスラム暦の第12月の10~13日に、聖地メッカのカーバ神殿に詣でる。一生に一度は必ず行く。 |
※カーバは「立方体」という意味。(←ちなみに立方体は英語でcubeキューブ)
安息日である金曜日にモスクに行き、祈りを捧げる
スンナ派
イスラム教の多数派・正統派に属する宗派。信徒の90%を占める。
シーア派
信徒の10%を占める。
仏教
紀元前5世紀ごろ、インドでシャカ(釈迦)によって始められた宗教。
- 創始者:釈迦(ブッダ)
- 聖典:
- 聖地:ブッダガヤなど
大乗仏教
自己1人の完成のみならず、一切衆生の救済を念願する菩薩の道を説く。
上座仏教(小乗仏教)
戒律を重んじ、厳しい修行を通じて自己の悟りに至ることを目指す。
チベット仏教(ラマ教)
仏教とチベットの民間信仰が結びついて成立した宗教。
民族宗教
ある民族の文化形成の過程で生まれ、その民族のアイデンティティに大きく関わっている宗教。
- ヒンドゥー教
- ユダヤ教
- 神道
- 道教
ヒンドゥー教
バラモン教に仏教とインド古来の宗教を取り入れて、9〜10世紀ごろに確立。カースト制度との結びつきが強い。
聖地:ヴァラナシ
沐浴:聖なるものに接する前に湯水で身体を清めること。水に対する信仰。ガンジス川の巡礼地で行われる沐浴が有名。
※バリ島:インドネシアのジャワ島の東に位置する。ヒンドゥー教徒が多い。
※アンコール・ワット:本来はヒンドゥー教の神に捧げられたもの。アンコール朝の衰退後、仏像が安置されて上座部仏教の寺院へと衣替え。
ユダヤ教
ユダヤ人の宗教。唯一神ヤハウェ(エホバ)を信仰し、ヤハウェと契約したユダヤ人飲みが救われると信じる(選民思想)。
聖地:エルサレム
- 嘆きの壁
- 安息日:ユダヤ教で金曜日の日没から土曜日の日没までの期間。この期間は一切の仕事を中断する。
食文化
菜食主義(ベジタリアン)
ヒンドゥー教や原始仏教では殺生を固く禁じたため、肉食をしなかった。
- 日本でも明治になるまで肉食は避けられていた。
- 精進料理:禅宗。動物性食品を含まない。
アジア料理
中華料理
広い国土で地域によって気候・風俗・産物が異なるため、地域色豊かな料理が発達。
- 油を使う
- 乾燥食品が多い
- 医食同源
- 円卓を囲み、大皿で食する
- 北京料理
- 上海料理
- 広東料理
- 四川料理
馬乳酒
モンゴルで飲まれる。
チャパティ
ナン
人種差別・民族問題
1つの国が複数の人種から構成される国々では、人種間の対立・差別(人種問題)が起きやすい。
アパルトヘイト(南アフリカ共和国)
人口の約5分の1にすぎない白人が、黒人や混血の住民に対して、政治・経済・社会のあらゆる分野で差別を行った。
(例)食堂やバス、鉄道、公園のベンチなど特定部分の利用を白人のみに許したり、人種間の結婚を禁止したりした。
※南アフリカ共和国がレアメタルの重要な供給国であったため、欧米諸国は強い反発を見せることができなかった。
黒人の抵抗運動、国連からの廃止勧告、経済制裁を受け、アパルトヘイトを支えてきた各種法律が1980年代後半から1991年に廃止された。
→1994年に全人種参加の議会選挙が行われ、ネルソン=マンデラが大統領に就任。
ホームランド:黒人を部族別に居住させた地域
ルワンダ内戦(ルワンダ)
ルワンダはベルギーの植民地だった。
ベルギーは、多数派のフツ族と少数派のツチ族という民族の違いを利用した分断統治を実施(もともと両者は共存していた)。
1994年にフツ系大統領を乗せた飛行機が撃墜された事件を機に、フツ族がツチ族を大量虐殺。
ビアフラ内戦(ナイジェリア)
1967〜70年、民族集団の対立から生じた内戦。
- イボ人がナイジェリアから分離・独立してビアフラ共和国の樹立を宣言
- ハウサ人・フルベ人・ヨルバ人を中心とする連邦政府とイボ人との間で内戦が起こる
- イボ人の敗戦によって終結
ダルフール紛争(スーダン)
砂漠化により北部の遊牧民が生活圏を追われた(→フール人の暮らす南へ移動)
白豪主義(オーストラリア)
ヨーロッパ系白人により、先住民族のアボリジニーの差別・迫害と黄色人種や黒人の移住制限・差別などが進められた。
第二次世界大戦後、労働力不足やアジア・太平洋地域とのつながりを密接に持とうとする政策の中で白豪主義は廃止された。
→アジアからの移民が増加し、多文化主義へ。
ケベック州(カナダ)
カナダではイギリス系住民が多数派だが、ケベック州はフランス系住民が多数を占める(カトリック)。
- 主権の拡大、分離・独立などの要求が強い
→カナダ政府は融和を図るために、英語とフランス語を公用語としている。しかし、ケベック州はフランス語だけが公用語だと宣言。
ヌナブト準州(カナダ)
カナダ北部のイヌイットの自治準州。1999年に設立された。
カシミール紛争(インド・パキスタン)
カシミールの帰属をめぐって起きた、インド・パキスタンの国境紛争。1947年のインド・パキスタンの分離独立の際に発生。
カシミール地方については,1962年に中国及びインドが軍事衝突し,中国が同地方の一部を実効支配したことから,現在,カシミール地方は,中国,インド及びパキスタンの3か国で分割統治されている。
引用:公安調査庁
ミンダナオ紛争(フィリピン)
少数派のイスラム教徒のモロ民族が独立を目指して武装闘争。
スリランカ内戦(スリランカ)
多数派のシンハリ人(仏教) vs 少数派のタミル人(ヒンドゥー教)
1983〜2009年にかけて内戦
クルド人(イラン・イラク・トルコなど)
イラン・イラク・トルコなどにまたがってクルド人が居住する(その地域のことをクルディスタンという)。
- クルド人の自治・独立の要求が強い
パレスチナ問題
パレスチナにユダヤ人国家イスラエルが誕生
→そこから追放されたパレスチナ人&彼らを支援するアラブ諸国 vs イスラエル
パレスチナ:ヨルダン川西岸から地中海東岸までの地域。イスラエル+ヨルダン川西岸地区+ガザ地区。ユダヤ教とキリスト教の発祥の地。
- バルフォア宣言
- フサイン・マクマホン協定
- シオニズム運動
- 中東戦争:1948年のイスラエル建国以来、4回起きたイスラエルとアラブ諸国の戦争。
キプロス紛争(キプロス)
- 北部に少数派でイスラム教徒のトルコ系が居住
- 南部に多数派でギリシャ正教徒のギリシャ系が居住
→内紛・軍事クーデタを経て、1983年に北キプロス=トルコ共和国の樹立が宣言された。トルコ以外からの国家承認は受けていない。
※2004年、南のキプロス共和国だけがEU加盟を認められた。
コソボ(from セルビア)
- アルバニア系住民が多数派
- セルビア系住民は少数派
- 旧ユーゴスラヴィア連邦のセルビア内のコソボ自治州が独立を要求して、紛争が起こった。旧ユーゴ軍が反撃し、1999年にはNATO軍が空爆。
- 2008年にコソボ共和国の独立を宣言
北アイルランド問題(イギリス・アイルランド)
多数派のプロテスタント vs アイルランドへの帰属を求める先住民のケルト系カトリック
カタルーニャ地方(スペイン)
少数民族カタルーニャ人の居住地で、カタルーニャ人の自治が認められている。
バスク・ナショナリズム(スペイン・フランス)
スペインとフランスの国境地帯であるバスク地方に住むバスク人が、統一を目指して独立運動を展開。
- 1979年、スペインでバスク自治州が成立。
ベルギー言語戦争(ベルギー)
- 北部のゲルマン系フラマン人(オランダ語) vs 南部のラテン系ワロン人(フランス語)
- ベルギーが独立をした19世紀はフランス語が国際語だとみなされていたため、フランス語のみが公用語だった。
- 1993年の憲法改正により、オランダ語・フランス語・ドイツ語を公用語とし、連邦制に移行。
チェチェン紛争(ロシア)
- 1991年、ソ連が崩壊するときにチェチェン人が独立を宣言。ロシア政府に認められず。
- チェチェンは石油資源やパイプラインの拠点で、ロシアにとって重要な地域だった。
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