東南アジアの気候をわかりやすく:東南アジアの強みの源泉とは?
東南アジアという地域の本質は、「強くない、でも価値がある」ということ。
そして、その背景には地形と気候の特徴がある。
→「強くない、でも価値がある」という東南アジアの本質を理解するために、地形と気候について学ぶ!

東南アジアの気候
気候の大前提
地球上のどこに人が多く集まり、都市が発展するか。その背景には「気候」が深く関わっている。
特に温暖で雨が多い地域は農業がしやすく、生活に必要な水も確保しやすいため、人々の暮らしにとって非常に都合がよい場所と言える。
こうした条件を満たす東南アジアは、古くから多くの人が暮らしてきた地域である。
東南アジアの気候の仕組み
赤道に近い
東南アジアは、赤道のすぐ近くに位置している。

- 赤道に近い
- →太陽からの単位面積あたりの受熱量が大きい
- →一年中気温が高い
特に赤道直下周辺のエリアは、太陽からの単位面積あたりの受熱量の年間を通した変化が極めて小さい。ゆえに、常に空気が温まって上昇気流が生じ、雨が降りやすくなる。

急激な上昇気流が起きるので、短時間の短い雨が一気に降っておさまる、という現象が繰り返される(スコール)。

季節風(モンスーン)
赤道直下周辺から少し離れると、ユーラシア大陸の東部で吹く季節風(モンスーン)の影響を強く受けるようになる。
- 夏:南の海洋からの湿った風が吹き、降水量が多くなる
- 冬:北の内陸からの乾いた風が吹き、降水量が少なくなる
このように、季節によって風向きが変わるのがモンスーンの特徴。モンスーンの影響を受ける地域では、雨季と乾季の区別がはっきりと現れる。

- ユーラシア大陸の東部でモンスーンが吹く理由
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ユーラシア大陸の東部でモンスーン(季節風)が吹くのは「ユーラシア大陸の東部は”陸地らしさ”がものすごく強く発揮される」から。
ユーラシア大陸の西岸(ヨーロッパ)では、海の上を吹く偏西風の影響で陸地の気温の上昇・下降にブレーキがかかる。
しかし、その影響(海洋性の湿った空気の影響)は大陸の東部までは届かない。ユーラシア大陸はあまりにも東西に広い大陸だから。(※偏西風自体はユーラシア大陸東部にも届いているが、風の湿度や温度が変わっている)
この結果、ユーラシア大陸の東部では「温まりやすく冷めやすい」という陸地の性質がモロに発揮される。
しかもユーラシア大陸の東部の陸地は広い。南北に広がる形状になっている。
そのため、「温まりやすく冷めやすい」という陸地の性質はさらに発揮されやすくなる。
こうして、
- 夏は陸地の気温が高くなって上昇気流が生じるので海から強く風が吹き込むことになり、
- 冬は陸地の気温が低くなって下降気流が生じるので海へと強く風が吹き出すことになる。
これがモンスーン(季節風)がユーラシア大陸の東部で吹く理由。
地域ごとの気候
東南アジアの気候は、主に
- 赤道に近いこと
- 季節風(モンスーン)の影響を受けること
という2つの要素が組み合わさって決まる。
その結果、地域ごとにさまざまな気候が見られる。
赤道直下(インドネシア、マレーシア、シンガポール) | 熱帯雨林気候(Af):年中高温多雨。スコールが多い。 |
大陸部(タイ、ベトナム、ミャンマーなど) | サバナ気候(Aw):雨季と乾季が明瞭。夏は雨が多い。 |
大陸部のやや北(ベトナム北部・ミャンマー高地など) | 温暖冬季少雨気候(Cw):夏は雨が多いが、冬は乾燥する。 |
島嶼部(フィリピン) | 熱帯雨林気候(Af)やサバナ気候(Aw) |
重要ポイント
地球上の数少ない「熱帯地域」
東南アジアは、地球上でも数少ない熱帯気候が広がる地域のひとつ。この気候だからこそ育てられる作物が多く、世界の農業にとって非常に重要な地域となっている。
地球儀やマップアプリで地球を眺めると、赤道付近にまとまった陸地が存在するのは、主に東南アジア、ラテンアメリカ、そしてアフリカの3つの地域に限られることがわかる。つまり、地球上で熱帯気候に分類されるエリアは意外と限られている。

この中で、先進国の人々にとって最も「使いやすい」地域と言えば、東南アジアだろう。東南アジアは政治的に安定している国が多く、巨大市場である中国やインドに近いという地理的優位性もある。
- 一方、ラテンアメリカは治安の悪さや政情不安が課題で、さらに中国やインドからも遠い点がネック。
- アフリカは中国やインドに比較的近いため地理的なポテンシャルは高いが、治安や政情の不安定さがより深刻。
輸送面でも便利な地域
東南アジアでは、季節風(モンスーン)の影響で、季節により風向きが安定して変化する。
この特徴は、昔から「帆船による貿易がしやすい」という利点をもたらしてきた。今でも輸送の便がよく、物流面でも価値が高い地域となっている。

まとめ
- 熱帯気候に適した作物の供給地
- 政治的・地理的に使いやすい拠点
- 貿易・輸送面でも有利な立地
こうした理由から、東南アジアは世界経済にとって非常に重要な「熱帯地域」といえる。