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造船業をわかりやすく

モチオカ(望岡 慶)

人間は古くから川や海を渡るために船を作ってきた。

では、その「船を作る産業=造船業」はどのように発展してきたのだろうか?

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造船の歴史

木造船の時代

もともと船は木で作られており、世界各地、特に良質な木材が手に入りやすい地域で造船が盛んに行われていた

例えば・・・

  • イギリス(イングランド南部、スコットランド)
  • フランス(ブルターニュ地方)
  • スカンディナビア諸国
  • 江戸時代の日本(尾張・紀伊など)
名古屋海洋博物館にて(2024.9撮影)

蒸気船の登場と鉄への転換

19世紀初め、蒸気機関を使った船が登場する。これにより、風に頼らず航行できる「蒸気船時代」が始まった

当初の蒸気船はまだ木造だったが、蒸気機関の重量に木材が耐えられなくなり、より強度のある「鉄」での造船が模索されるようになった。

  • 1820年代:イギリスで小型船に鉄が使われ始める
  • 1843年:「グレート・ブリテン号」が鉄製船体とスクリュー推進を兼ね備えた本格的な大型船として登場
名古屋海洋博物館にて(2024.9撮影)
大和ミュージアムにて(2022.7撮影)

鋼の時代へ

さらに、1856年にイギリスのヘンリー・ベッセマーが開発した「ベッセマー法」によって、鉄よりも強くて粘りのある「鋼(はがね)」が短時間で大量に作れるようになった

この技術革新により、鉄鋼は造船・鉄道・建築・軍需など、近代産業の土台となっていった。

粗鋼(そこう)とは?わかりやすく【地理】

広島県呉市にて(2022.7撮影)

なぜ船は鉄鋼で作られるのか?

現代の船の材料は、基本的に鉄鋼(とくに厚板鋼)である。

(理由)

  • 強度が高く、波や衝撃、腐食、高温に耐えられる
  • 溶接・曲げ・切断などの加工がしやすく、修理も簡単
  • 大量生産が可能で、コストが比較的安い

船を鉄鋼で作るようになって変わったこと:造船業の立地

木材から鉄鋼に材料が変わったことで、造船業が発展する条件も大きく変化した。

以前は「木材のある森の近く」が造船地だったが、 鉄鋼船の時代になると、次のような条件が求められるようになる。

  • 水深が深く、波が穏やかで大型船が作れる港
  • 広大な用地と熟練労働力が確保できる地域
  • 労働コストが安く、補助金などの政策支援が得られる地域
  • 鉄鋼を安定供給できる製鉄所の近く
大和ミュージアムにて(2022.7撮影)

造船業が盛んな場所

では現在、造船業が盛んな場所は具体的にどこなのだろうか?

世界

現代の大型商船のほとんどは中国・韓国・日本で生産されている。

国・地域特徴
中国(江蘇省・浙江省・山東省など)世界最大の造船国。政府支援を受けた大手国有企業(CSSCなど)が多数。コスト競争力が高く、商船建造に強い。
韓国(蔚山(ウルサン)、巨済島(コジェド)、釜山など)大型タンカー・LNG船・軍艦・海洋構造物など高付加価値船の建造に強み。現代重工業・サムスン重工など世界大手が集中。
日本(長崎、今治、佐世保、呉など)一時は世界トップだったが、現在は韓国・中国に次ぐ第3位。今治造船、ジャパンマリンユナイテッドなどが技術力と品質で差別化を図る。

なぜ造船業は東アジアが強いのか?

日本

地域特徴
愛媛県 今治市今治造船が本社を構え、日本最大級の造船拠点。多くの中小関連企業も集積。
長崎県(佐世保、長崎市)三菱重工の造船所があり、軍艦や大型船など高付加価値船も建造。
広島県 呉市旧海軍の拠点で、現在も海上自衛隊・民間造船所が共存。
大分県・山口県(下関)造船所が多く、西日本の瀬戸内海沿岸は「造船ベルト」と呼ばれるほど。
長崎(2022.6撮影)
広島県呉市(2022.7撮影)

まとめ

船の材料が木から鉄へ、そして鋼へと変わったことで、世界の勢力図は大きく変わった。

造船は、鉄鋼・港湾・人材・国家支援など、すべてが連動する「重工業の総合格闘技」である。

大和ミュージアムにて(2022.7撮影)

なぜ造船業は東アジアが強いのか?

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