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世界の水産業の変化と背景:養殖が拡大するとどうなるか?

モチオカ(望岡 慶)

かつては、遠くの海まで大型の船で魚をとりに行く遠洋漁業が盛んだった。

しかし現代では、遠洋漁業や沖合漁業は世界的に衰退傾向にある。

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遠洋漁業や沖合漁業は衰退傾向にある

なぜなら、とにかくコストが高いから。

  • 遠くまで航行するには燃料代がかかる
  • 長期間の操業には多くの人手が必要で、人件費もかかる
  • 船の維持費も大きい

そのうえ、世界的に「魚をとりすぎてはいけない=乱獲の防止」という意識が高まってきている

そのため各国では、沿岸の資源をきちんと管理し、決められた漁獲枠の範囲でとるというスタイルが主流になりつつある。

Q
漁業の形態

遠洋漁業:遠隔の漁場に出て行う漁業。

沖合漁業:200海里内の排他的経済水域において2週間以内で行われる漁業。

沿岸漁業:その国の領海内で行われる漁業。

栽培漁業:人工的に孵化させた稚魚を海などに放流し、成長した後に捕獲する漁業。

養殖業:排卵から漁獲まですべて人工的に管理して行う漁業。

養殖が拡大

現在、最も注目されているのが養殖。

自然の海で魚をとる「漁業」と違い、人間が魚を育てて出荷する養殖は、

  • 安定した量を確保しやすい
  • 天候や季節に左右されにくい
  • 資源を守りながら生産できる

といったメリットがある。

そのため、世界の水産物の半分以上はすでに養殖由来になっており、今後ますますその割合は増えていくと見られている。

具体例

ノルウェーのサーモン養殖

養殖拡大にともなう主な問題と影響

①マングローブ伐採

大阪万博のサウジアラビア館。(2025.4撮影)
  • マングローブは魚の産卵場所・津波の防波林・CO₂吸収源として重要
  • エビ養殖池を作るために、沿岸のマングローブ林が伐採されている
  • 伐採により生態系の破壊・沿岸侵食・水質悪化が発生

→ タイ・インドネシア・フィリピンなどで深刻な問題に

②水質汚染・富栄養化

  • 養殖魚に与えるエサの残りや排せつ物が海中にたまり、水質が悪化
  • 窒素やリンなどの栄養分が海に過剰に流れ込むことで、赤潮が発生
  • 養殖場の近くで他の魚が住めなくなることも

③魚粉の高騰

  • 養殖魚の多くは、他の魚(イワシやサバなど)を原料とした飼料(魚粉・魚油)を食べている
  • 大量の魚粉需要により、小魚の乱獲や価格高騰が問題になっている

参考:魚粉の国内価格が最高 養殖業、エサ不足で経営打撃(日本経済新聞)

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