共通テスト地理で9割とるための、小手先ではなく本質的すぎる勉強法・取り組み方

こんにちは、モチオカです。
今回は共通テスト地理の勉強をどうやってやったらいいのか?について超真面目に喋ります。
- 知識を一生懸命インプットしているのに点数が安定しない。
- なかなか8割とれない。9割とれない。
こんな悩みを持っている人が結構いるんじゃないかなあと思います。勉強すればするほど。
そこで、地理の本質的な勉強法について、誰もちゃんと語っていない気がするので、僕の考えを喋ってみようと思います!
共通テストで試されていること

共通テストの地理で試されていることは、一言で言うと、社会現象への解像度が高いかどうかです。
社会現象とは、「一人ひとりの人間の行動を集団として見たときの、傾向や動き」のことです。
人間は一人一人、性格も考えも違っていて、行動も人それぞれです。が、集団で見ると、なんかみんなこういうふうに動いているよね、という共通性・傾向が見えることがあります。これが社会現象です。
それを読み取ること(Something there?)。これが試されています。

単にその社会現象を事実として知っているだけではなく、いろんな角度から深く理解をしている状態のことです。
- 傾向の背景にある理由・目的を読み取る(Why so?)
- この傾向の影響を考える(So what?)
- 問題なのだとしたら、その解決法を考える(What’s next?)
表面的な知識だけではなく、ちゃんとわかってるかどうかが問われている、ということです。
試験問題では、
Why so?>>Something there?>So what?>>What’s next?
の順に出題数が多いです。
具体例

インド人がドバイに大量に働きに行っているっていう現象。
これはインド人一人ひとりが自分の意思で「ドバイに行こう」って決断した結果ですが、集団で見ると、「インド人によるドバイへの出稼ぎ」という明確な社会現象として現れています。
解像度を上げるっていうのは、この現象について深く理解をするっていうことです。
- なぜインド人は国内ではなく外国で働きたいと思うのか?
- なぜドバイは大量の外国人労働者を必要としているのか?
- なぜインド人はドバイを選び、ドバイはインド人を受け入れるのか?
「インド人がドバイに建設労働者として働きに行っている」っていうのが表面的な知識ですが、この社会現象をいろんな角度から深く理解するってのが「社会現象への解像度を高くする」ということです。

ただ、人々の集団の動きは複雑なので、いろんな説明の仕方や考え方ができます。インド人によるドバイへの出稼ぎが起きているのは、こういう事情があるからだ!と説明したとしても、中にはその説明が当てはまらない人もいるはずです。人間は一人ひとり違うので。
ですが、集団として見たときの傾向や動きについて、大まかにとらえた時に最も納得感のある「芯を食った説明」をできるかどうか。これを試そうとしているのが共通テスト地理です。
「社会現象への解像度を高くする」のために必要なこと
社会現象への「解像度」を高くするために、具体的に何が必要なのか?
3つあります。
- 「〜だから、◯◯かな?」と仮説を立てること
- 「実際に起きたこと・起きていること」の知識
- 「人間への想像力」
この3つです。

「〜だから、◯◯かな?」と仮説を立てる
さっき、最も納得感のある「芯を食った説明」を考えることが大事だという話をしました。
ですが、社会現象に対する説明には「100%これが正解だ!」と言い切れるものはありません。
一人ひとりいろんな思いを持った人が集まった集団の動きについて見るわけですので、これが全員に当てはまる説明だ!と言えるものはありません。本人すら自分の行動の理由がよく分かっていないことだってあります。
だからこそ、僕たちは実際に起きている現象に対して、「おそらくこういうことなんじゃないかな」という説明(=仮説)を考えます。


理科も同じですよね。
ものが落ちる(リンゴが木から落ちる)っていう現象がなぜ起きるのか?これについて考えて、まぁおそらくこういうことだろうっていう原理(万有引力)を考えたのがニュートンです。
でも現実世界にはニュートンの原理だけでは説明できない現象があった。それを説明するために「たぶんこういうことだろう!」と新しい仮説を考えたのがアインシュタインです。
あと他にも、例えば船に長時間乗っている人がたくさん死んでしまったっていう現象が起きた時。イギリス人はいろいろと実験・検証して「こういうことなんじゃないか」と仮説を考え、最終的にレモンやオレンジなどの柑橘類を食べることが対策として有効だということを理解しました。その後、ビタミンという物質が発見されて、ビタミンCが必要だったんだ!ということを突き止めました。

このように、起きている現象について「こういうことだろう」と、芯を食った説明を考えようとする。これは地理も同じです。
大事なので繰り返しますが、社会現象は複雑なので、絶対に正解だ!と言い切れる説明を考えることは非常に難しいです。例えば、中国はなぜ台湾にこだわるのか?という問いに対して、絶対に正解だと言い切れる答えを考えるのは難しいです。というか不可能です。でもその中で、できる限り芯を食った最も納得感のある説明をしようとすることが大切です。

その際、一発で芯を食った説明を考えるのは難しいです。「こうじゃないかな?」と仮説を立てるときは、何度も試行錯誤することが必要です。
- 仮説:「こういうことかな?」
- 根拠:「なぜなら〜だからだ」
この2つをぐるぐる回すイメージです。
先に「こういうことかな?」っていう仮説が降りてくることもあるし、「こういう事実があるってことはこういうことなんじゃないか?」と後で仮説が導かれるということもあります。
仮説と根拠の間を常にぐるぐると行ったり来たりしながら、仮説とその根拠を説得力があるものにしていきます。試行錯誤の過程で、「この仮説はどうやらダメっぽい」「これは根拠にはならない」と気づいたら潔く捨てます。
これが「〜だから、◯◯かな?」と仮説を立てるということです。

共通テストの地理では、「カに当てはまるのはアラブ首長国連邦かな?なぜなら、インドからドバイに建設労働者として大量に出稼ぎに行っているという事実があるから。カがアラブ首長国連邦なら、クはインドネシアかな?インドネシアからも、インドほどではないがドバイに出稼ぎに行っているはずだから」・・・といった感じで、仮説を立てていきます。
実際に起きたこと・起きていることの知識
解像度を上げるために必要なことの2つ目は、「実際に起きたこと・起きていることの知識」です。要するに、地理の教科書に書いてある知識です。
なぜ、知識が必要なのか? それは、知識が自分が仮説を立てるときの道具であり、仮説を修正するための道具だからです。

先ほど、「芯を食った仮説を立てること」が重要だという話をしました。しかし、ここで一つの危険性があります。
それは、自分の頭だけで考えた仮説は、独善的(独りよがり)なものになりがちだということです。知識がない状態で社会現象を深く考えようとすると、社会の複雑さや過去の経験・知恵を無視した「陰謀論」のような、筋の悪い結論に陥る危険性があります。
もちろん、日常の常識や直感だけでも、社会現象についてそれなりに説明できます。共通テスト地理の問題も、地理の教科書を読まずとも「なんとなくの常識」でそれなりの点を取ることができます。東大の地理の入試問題すら、勉強していなくてもそれなりの答案を書くことができます。
でも「それなり」で止まってしまいます。知識がないと。社会現象について芯を食った説明をしようと思ったら、共通テストで高得点を取ろうと思ったら、「自分一人の狭い視野」での思考だけでは不十分です。
ここで必要になるのが、教科書にまとめられた知識です。

私たちが試されている「考える」「仮説を立てる」という営みを、過去の人たち、先人たちも何十年、何百年にもわたって繰り返してきました。
教科書に載っている知識は、彼らが試行錯誤を重ね、「これは確からしい!」と評価された、確実性の高い仮説とその根拠です。その成果を活用しないのは、すごくもったいないです。
僕自身、地理の勉強はかなりやったつもりですが、それでも、学生時代、模試や本番で満点をとったことはありません。いつも間違えてしまいました。正直言って、今でも共通テストの問題でなかなか満点を取れません。
その時はたいてい、教科書的な知識や慎重な思考から離れ、勝手に思い込んでしまったとき、自分の考えに囚われてしまった、独りよがりになってしまっていた時でした。
教科書の知識は、そのような独りよがりを防ぎ、冷静な思考を支える道具です。教科書の知識を学ぶことで、筋の良い仮説をより見つけやすくなります。

ここで強調しておきたいのは、教科書の知識を身につけること自体が目的ではないということです。
- あくまで目的は、社会現象について考える(=社会現象に対して、良い仮説と根拠を見つける)ことです。
教科書は、その問いと思考を深めるための道具(手段)です。
関心や問い、好奇心をもたないまま、社会で起きていることについて「なぜ?」と思わないまま、教科書の知識を暗記したら、ただの「受験マシーン」になってしまいます。
「共通テスト地理は知識はそんなにいらない」という意見も聞きますが、それは知識が一番の目的ではないという意味です。あくまで、「〜だから、◯◯かな?」と仮説を立てて、社会現象に対する解像度を高めることが最大の目的です。ですが、だからといって知識は少なくてもいいのかというとそういうことでもなく、知識は考えるための道具・手段として、あればあるほどいいです。


人間への想像力
そして、解像度を上げるために必要なもの、その3つ目が「人間への想像力」です。

これは「人間はこういうことを考えて、こういう動きをするんだなあ」と想像し、理解する力です。筋の良い仮説、納得感のある説明を考え出すために、この想像力が不可欠です。
理科とは違って、人間を対象としているのが社会科だからです。
その人間は、一人一人、性格も考えも違うが、生きたいっていう本能や、楽をしたい、不快なことは嫌だ、危険なことから逃れたい、無駄なことはしたくない、といった欲求・合理性を持っています。
本能に従って合理的に動く人間の行動パターンにはある程度の傾向があるはず。ここへの理解・想像力を持つことが、社会現象への解像度を上げるために必要です。要するに「人間ってこういうことしちゃうよねー」ってやつです。
- 人間とは
-
まず大前提として、人間は基本的に生きようとする存在です。自ら、すぐ死のうとはしません。その中で、より快適に、より便利に、より良く生きようとします。
この前提に立つと、どんな行動にもその人なりの合理性があると考えられます。自ら不快・危険には突っ込みません。突っ込むとしたらそこにはその人なりの快楽・合理性があるはずです。
したがって、「一人ひとりの人間の行動を集団として見たときの、傾向や動き」を理解するには、人間の基本的な心理や目的に立ち返ることが大切です。
例えば、「北海道と沖縄県の都市部では、平らな屋根の住宅が多く見られるが、その理由は両地域で異なっている。それぞれの理由は何か」と問われたとします。
このような問いに対して、「そんなこと教科書で勉強しなかったから(=知識がないから)知らない」と思考停止するのではなく、人間の合理性から考えてみます。
「そもそも屋根は何に必要なのか?」「屋根を平らにしたいのはどういう場合か?」と、機能と心理に立ち返り、その上で、「雪が多い地域では人間はこう考えるはずだ」「台風が多い地域では人間はこう考えるはずだ」と仮説を立てれば、筋の良い答えが見えてきます。
「住宅は1978年には木造が主流だったが、2018年には非木造の割合が上昇している。なぜか」という問いに対しては、「なぜ木で作るのか?」「なぜ木以外で作るのか?」「人間の生活における、それぞれのメリットとデメリットは何か?」と考えます。そうすれば、防火・耐震性、建設効率、コストなどの理由が見えてきます。
つまり、芯を食った仮説を立てるためには、細かい知識を寄せ集めて推論すればOKというわけではありません。「人間は何を求めているのか?」から出発して、そこから現象を説明する。このように「大きく考える」のが、良い仮説と根拠を見つけるためのコツです。
では、この「人間への想像力」をどうやって養えばいいのでしょうか。
- 日常の観察:ニュースを見たり、学校(学生にとって、最も身近な社会)でのみんなの動きを見たり、そして何より自分自身の心や行動を見つめたりすることで養われます。「人間ってこういうことを考えて、こういう動きをするんだなあー」って。
- 読書と映画:読書、特に小説は、人間への想像力を養う上で非常に大切だと思います。人気作品や名作は、人間の根幹にある感情や本能をうまく描けています(夏目漱石の『こころ』とか)。映画も大事かな。
まとめ:忙しい受験生にできるやり方として

以上の「仮説立案力」「知識」「人間への想像力」の3つが揃うことで、社会現象に対する解像度を高くすることができます。
おそらく、多くの受験生が2つ目の「知識をつけること」に一番重点を置いていると思います。最もとっつきやすく、やった実感を得ることができる部分なので。
受験生として、知識をつけることに重点を置くのは正しい。他の教科の勉強もある中で、共通テスト地理の対策として知識を中心にするのは全く問題ありません。

ただ、知識を身につける際、機械のように暗記しないようにしてほしいです。
- 「〜だから、◯◯かな?」と仮説立案する意識なく、
- 「一人ひとりの人間の心の動きについて想像する」こと無く、
- ただひたすら知識ばかり覚えようとする。
そうしてしまうと、「知識は頭に入っているけれど、社会現象への解像度が全く高くない人間」になってしまいます。
問題を作っている人は、このような創造力・想像力のない人間に点数を取らせたくないと思っているはずです。
知識は、あくまで手段(ツール)です。知識は社会現象を理解するために、立てた仮説を検証し、修正するための道具です。目的は、社会現象への解像度を高くすることにあります。

「こういうことじゃないかな?」と仮説立案し、一人ひとりの人間の心の動きについて想像しながら、知識を身につけようとすること。これが良い学習です。
教科書に書かれている知識と、自らの観察や体験を踏まえた、「社会はこんな感じになっているはずだ」という豊かな知のネットワークを作ること。
これこそが、共通テスト地理の最も本質的な対策であり、点数を安定させ、9割の壁を破る唯一の道だと僕は考えます。


