九州地方の自然環境(地形・気候)をわかりやすく
九州地方は、日本列島の中でも特別な地理的条件をもっている。その理由は次の3つ。
- 日本の主要4島の中で最南端に位置し、暖流に囲まれている(→温暖)
- 火山が多く、火山灰(シラス)が広く堆積している
- 外国(朝鮮半島や中国など)に近い

※なお、南西諸島(沖縄など)は九州地方に含まれるが、「九州」とは特徴がかなり異なるため、別記事でまとめる。
九州地方の地形
九州の地形を語るうえで、最も重要な特徴は「火山が多く、火山灰(シラス)が広く堆積している」ということ。

九州地方の山地
筑紫山地 | 九州北部に広がる山地。 |
九州山地 | 中央部に位置し、険しい山々が連なる。 |
阿蘇山 | 世界最大級のカルデラを持つ。 |
雲仙岳(普賢岳) | 1991年には大規模な火砕流を起こした。 |
霧島山 | |
桜島 | 今も活発に噴火を繰り返す日本有数の活火山。 |

このように、九州は日本の中でも特に火山が集中する地域である。
火山が多い理由を調べてみたが、専門的で難しい。要点をまとめると次のようになる。
- 九州の下には、フィリピン海プレートが沈み込んでいる。
- このプレートの性質が北部と南部で異なる。
- 北部 → 若くて熱いプレート → 水分が早く抜けてしまい、火山は少なめ。
- 南部 → 古くて冷たいプレート → 深い場所まで水分を運び、マグマが多く発生 → 火山が密集。
関連:日本列島はなぜ山だらけ? 4つのプレートが生んだ日本の地形の特徴
九州地方の平野
筑紫平野 | 佐賀平野+筑後平野。九州最大の平野。稲作や小麦の生産が盛ん。 |
福岡平野 | 九州北部の経済・交通の拠点。都市化が進んでいる。 |
熊本平野 | 米や野菜の産地。 |
宮崎平野 | 畑作や畜産に加え、温暖な気候を生かした施設園芸が盛ん。 |


九州地方の河川
遠賀川 | |
筑後川 | 九州一の大河。筑紫平野を形成。 |
白川 | |
球磨川 | 日本三急流のひとつ。 |
大淀川 |

九州地方の海
有明海 | 日本最大の干潟がある。養殖のりの生産が盛ん。 |

九州の北西部(佐賀〜長崎)はリアス式海岸となっている。湾内では波が穏やかなので養殖業などの漁業が盛んに行われている(→トラフグ、カキ)。
九州地方の気候
九州の気候は全体的に温暖で、冬でも比較的過ごしやすい。
九州地方の気候の仕組み
南に位置し、暖流が近海を流れている
日本列島の主要4島の中で最も南に位置する。さらに、暖流の対馬海流と黒潮(日本海流)が近海を流れている。
そのため、九州は日本列島の他の地域に比べて気温が高い。

冬は北西からの季節風が吹くが、雪は降りにくい
夏は南東からの季節風が吹き、冬は北西からの季節風が吹く。
日本海側では、冬の季節風が海上で水蒸気を含んで雪を降らせる。

しかし九州の場合、九州北部へ吹く季節風は、まず朝鮮半島を通って吹いてくるため、海上を通る距離が短く、水蒸気の供給が少なくなる。そのため、山陰や北陸のような大雪にならず、比較的温暖な冬となる。
重要ポイント
九州は、日本の中で特別な場所
九州地方は、次の3つの特性によって、日本列島の中でも特別なポジションを担ってきた。
- 日本の主要4島の中で最南端に位置し、暖流に囲まれている(→温暖)
- 火山が多く、火山灰(シラス)が広く堆積している
- 外国(朝鮮半島や中国など)に近い
この3点がなによりも重要。歴史・農業・産業の特色は、いずれもこれらの地理的条件と深く結びついている。

北部と南部で地理的な違いがある
北部と南部で自然環境が異なる。
北部
- 地形:筑紫平野を中心に、なだらかな平野部が広がる。
- 産業:稲作が盛ん。筑豊炭田を基盤に近代工業が発展し、現在では自動車や半導体産業の拠点。
南部
- 地形:シラス台地が広がり、火山灰の堆積が目立つ。
- 産業:水はけが良すぎて稲作に不向きなため、サツマイモなどの畑作や畜産が中心。豊富な温泉資源を生かした観光業も盛ん。

参考文献
長谷川利昭ほか. (2010). ホウ素による西南日本弧火山の沈み込み成分マッピング. 科学研究費補助金研究成果報告書.
Stern, R. J. (2002). Subduction zones. Reviews of Geophysics, 40(4), 3‐1–3‐38.