九州地方の農業をわかりやすく
モチオカ(望岡 慶)
九州には、福岡のイチゴ「あまおう」、熊本のあか牛、鹿児島の黒豚や「知覧茶」など、様々な名産品がある。
これらは、九州の地理的な特徴と深く結びついている。
目次
九州の名産品
農産物・畜産物




いちご(福岡)
食文化・加工品

とり天(大分)
芋焼酎(鹿児島・宮崎)
九州の農業のポイント
九州地方の農業は、九州特有の地理的な特徴と深く結びついている。特に次の3つが重要。
- 日本の主要4島の中で最南端に位置し、暖流に囲まれている(→温暖)
- 火山が多く、火山灰(シラス)が広く堆積している
- 外国(朝鮮半島や中国など)に近い
この3つの条件が、九州の農業を日本の中で特別なものにしている。

温暖だからこその農業
九州は冬でも比較的温暖。これが農業に大きな利点をもたらしている。
- 二毛作:筑紫平野では、稲作が終わった後に小麦や大麦を育てられる。
- 促成栽培:宮崎のきゅうり・ピーマン、熊本のトマト・スイカなど、冬でも野菜を栽培できる。

火山灰が広く堆積しているからこその農業
九州南部には、火山灰が堆積しているシラス台地が広がっている。
シラスは水はけが良すぎて稲作には不向きであるため、代わりに畑作や畜産が盛んに行われる。
外国に近いからこその農業
九州は東アジアや東南アジアに近いため、農産物の輸出拠点としての役割も大きい。

九州地方の農業の種類
稲作
九州で稲作が盛んなのは、大きな河川が流れ、肥沃な土壌を持つ平野部。
(例)筑紫平野(福岡・佐賀)や熊本平野(熊本)。

畑作
筑紫平野で麦の生産が盛んなのはなぜ?
冬でも温暖なので、稲作が終わった後の時期からでも小麦や大麦を栽培することができる(二毛作)。
※二毛作=1年の間に2種類の農作物を同じ耕地で栽培する
※筑紫平野=佐賀平野+筑後平野


九州南部で野菜の促成栽培が盛んなのはなぜ?
冬でも温暖で、シラスと呼ばれる火山灰が積もっていて水はけが良い。
- 宮崎:きゅうり、ピーマン
- 熊本:トマト、スイカ
鹿児島で茶の栽培が盛んなのはなぜ?
- 気候が温暖なので収穫できる時期が長く、多様な品種の茶を栽培できる
- シラス台地は水はけが良い
- 江戸時代に薩摩藩が茶の栽培を奨励した
- シラス台地は平坦な地形なので大型機械を導入しやすい(→農業の機械化以降も茶の栽培は衰えず、むしろさらに盛んに)


※茶の木は亜熱帯性植物なので寒さに強くはない。
※茶の生産で有名な静岡県は、茶畑が山の斜面や台地に集まっているため大型機械を使いにくい。
福岡でイチゴの生産が盛んなのはなぜ?
冬でも温暖で、大消費地である福岡市に近い。
(例)あまおう
畜産
九州南部で畜産が盛んなのはなぜ?
冬でも温暖で、九州南部に積もっているシラスと呼ばれる火山灰は保水力に乏しく稲作に向かない。
- 熊本:あか牛
- 宮崎:地鶏
- 鹿児島:黒豚
参考文献
九州の農業. 九州農政局. https://www.maff.go.jp/kyusyu/kikaku/kyusyu_nougyou/index.html, (参照 2025-09-14).