工業についてまとめました!
軽工業と重工業
軽工業
高度な技術や大資本をあまり必要とせず、主として日常生活に用いる比較的重量の軽い製品を作る工業。
(例)繊維、食品、雑貨
重工業
高度な技術や大資本を使って、主として生産活動に利用される比較的重量の重い製品を作る工業。
(例)鉄鋼、金属、機械
集約に関する分類
- 労働集約型工業:生産コストの中で労働費の比重が大きい工業
- 資本集約型工業:生産コストの中で設備費の比重が大きい工業
- 知識集約型工業:生産工程の中で高度の技術を必要とする工業
工業立地
基本的には、最小の投資で利益を最大化できる場所に立地しようとする。
原料産地に近いところ(原料指向型)
製品コストに占める原料の輸送コストが大きい場合
(例)鉄鋼業、セメント工業
市場に近いところ(市場指向型)
製品の重量が大きい場合
(例)ビール工業(←市場に近い方が空瓶の回収コストが低く済む)
製品が破損しやすい場合
市場の情報・流行を重要視する場合
(例)出版・印刷業、高級品のアパレル業
労働力が得やすいところ(労働力指向型)
安価で豊富な労働力を求める場合
(例)繊維工業、電気機械の組み立て
高度な技術を持つ労働力を求める場合
輸入・運搬しやすいところ(交通指向型)
原料の輸入港の近く
(例)鉄鋼業、石油化学工業
空港や高速道路のインターチェンジ付近
(例)エレクトロニクス工業
関連工場が集まるところ
(例)自動車工業
工業発達の歴史
手工業、家内工業
↓
工業制手工業(マニュファクチュア)
資本家が多くの労働者を集め、工場内で道具と手工業的技術を用い、分業により加工生産を営む。
↓
産業革命
↓
工業制機械工業
資本家が多くの労働者を集め、工場内で機械によって均一な製品を大量生産する。
工業の発展のパターン
・より付加価値が高い(=儲かる)産業へと転換していく
(例)第一次産業→第二次産業→第三次産業
・輸入に依存していたものを国内生産し、やがて輸出する
輸入代替型工業→輸出指向型工業
(例)明治時代以降の綿糸
工業の種類
繊維工業
天然繊維や化学繊維を加工して、糸や織物を生産する工業。
- 紡績業
- 織物工業
- アパレル(縫製)産業:布を裁断して衣服などの製品を作る工業
トヨタ産業技術記念館より
綿工業
- 中国、インド、パキスタンなど(安価な労働力が得やすく、原料の生産が盛んな国)
毛織物工業
- ロシア、ドイツ、リトアニア、アメリカ合衆国、中国など
絹織物工業
- ロシア、ベトナム、ベラルーシ、中国など
トヨタ産業技術記念館より
トヨタ産業技術記念館より
アルミニウム工業
原料のボーキサイトから不純物を取り除いたアルミナ(酸化アルミニウム)を電気分解して、アルミニウムを生産する。
精錬の工程で大量の電力を消費するため、安価な電力を得やすい地域に立地する。
鉄鋼業
鉄鉱石、石炭、石灰石などを原料として、銑鉄や鋼を作り、できた鋼からさまざまな鋼材を生産する工業。
- 銑鉄部門:銑鉄を作る
- 鉄鋼部門:鋼鉄を作る
- 圧延部門:鋼鉄を鋼材に加工する
鉄鉱石のままだと不純物が混ざっているので、高温で熱して鉄分を取り出す必要がある。
立地
・かつては炭田や鉄山付近で鉄鋼業が発達
↓
(資源の枯渇、生産設備の老朽化、製鉄技術の進歩、原料輸送費の低下)
↓
・原料の輸入に便利な臨海部で鉄鋼業が発達
(例)
- イギリス:バービンガム→ミドルズブラ、カーディフ
- フランス:ロレーヌ→ダンケルク、フォス
機械工業
- 一般機械
- 輸送用機械
- 電気機械
- 精密機械
- 武器
※工作機械:旋盤(←円筒状に削り出す)、ボール盤(←穴を開ける)、研削盤(←表面を削る)など
輸送用機械
- 自動車工業
- 造船業
- 航空機工業
自動車工業
トヨタ産業技術記念館より
工業全体に対する影響が大きいため、国の関税政策や投資規制・促進の対象になりやすい。
立地の条件(必要なもの)
大資本、広大な敷地、多くの労働力、関連工業
自動車生産の推移
〜1970s:アメリカ合衆国での生産台数が多い
↓
(二度の石油危機による原油価格の高騰をきっかけに、小型で燃費の良い日本車の需要が高まった)
↓
1980s:日本での生産台数が多い
↓
(アメリカ合衆国との貿易摩擦、円高)
↓
日本の自動車メーカーがアメリカ合衆国などでの現地生産を増やす
↓
1990s:アメリカ合衆国での生産台数が多い
↓
2009年以降:中国での生産台数が多い
トヨタ産業技術記念館より
造船業
立地の条件(必要なもの)
大資本、各種の工業製品、波静かな湾入部、晴天日数の多さ
1950s後半から日本が最大の生産国
→近年は韓国、中国、台湾などでの生産が増加
航空機工業
アメリカ合衆国での生産が多い(シアトル、ロサンゼルス)
ヨーロッパではドイツ、フランス、イギリスなどの国々が共同で生産(国際分業体制)
→組み立てはトゥールーズで行われる
電気機械工業
立地の条件(必要なもの)
高度な技術、安価な労働力(←組み立ての比重が高い場合)
先端技術産業
最先端の技術を用いて工業製品などを生産する産業。
- メカトロニクス
- ファインセラミックス
- 新素材産業
- バイオテクノロジー
- 宇宙・航空産業
研究開発機能→首都圏
製品工場→空港付近、高速道路沿い(製品の輸送に便利)
石油化学工業
化学繊維、合成樹脂、薬品、合成ゴムなどを生産。
石油精製工業と石油化学工業が結びついて、石油化学コンビナートを形成。
※石油精製工業:原油に熱や圧力を加えて揮発油・ガソリン・灯油・軽油・重油・ナフサなどに分ける工業。
原油を得やすい場所に立地。日本では輸入に便利な臨海部。
製紙・パルプ工業
木材などからパルプを取り出し、紙に加工する工業。
パルプ=木材を細かく砕いてチップにした後、薬品を使って化学処理をして繊維だけを取り出したもの。
原料の木材や用水が得られる場所に立地。
世界の工業地域
ヨーロッパの工業地域
ブルーバナナ(青いバナナ)
西ヨーロッパにおいて、経済的・人工的に発展しているバナナ型の地帯。青は伝統的にヨーロッパを示す色。
バーミンガム、ロンドン、アムステルダム、ブリュッセル、ルール地方、ストラスブール、チューリッヒ、トリノ、ミラノなど。
イギリス
- ランカシャー地方:ペニン山脈西麓。産業革命発祥の地。綿工業が発達。
- ヨークシャー地方:ペニン山脈東麓。羊毛工業が発達。
- ミッドランド地方:ペニン山脈南部。
- ロンドン
- マンチェスター
- リヴァプール
フランス
- パリ
- ルアーブル
- ダンケルク
- ロレーヌ
- ストラスブール
- トゥールーズ
- マルセイユ
ドイツ
ルール工業地帯:ルール炭田とライン川の水運を背景に鉄鋼・機械・化学などの工業が発達。
- ドルトムント
- ケルン
- シュツットガルト
- フライブルク
- ミュンヘン
- ハンブルク
ベルギー
- ブリュッセル
オランダ
- アムステルダム
- ロッテルダム
- ユーロポート
イタリア
- ミラノ
- ジェノヴァ
- ヴェネツィア
- フィレンツェ
第三のイタリア:中世以来の伝統的な技術を持った職人が集積している地域。トリノ、ヴェネツィア、ボローニャ、フィレンツェなど。
- タラント
チェコ
- プラハ
ロシアと周辺の工業地域
ロシア
- モスクワ
- サンクトペテルブルク
- イルクーツク
- ハバロフスク
- ウラジオストク
ウクライナ
- ドニエプル工業地域
北アメリカの工業地域
カナダ
- モントリオール
- オタワ
- トロント
- ヴァンクーヴァー
アメリカ合衆国
- フロストベルト(スノーベルト)
- サンベルト
- エレクトロニクスベルト
- シリコンバレー
- ボストン
- ニューヨーク
- フィラデルフィア
- ピッツバーグ
- デトロイト
- シカゴ
- セントルイス
- リサーチトライアングルパーク
- アトランタ
- ダラス
- ヒューストン
- ニューオーリンズ
- サンフランシスコ
- サンノゼ
- ロサンゼルス
- シアトル
ラテンアメリカの工業地域
メキシコ
- メキシコシティ
ブラジル
- サンパウロ
- リオデジャネイロ
- ベロオリゾンテ
- マナオス
アルゼンチン
- ブエノスアイレス
オセアニアの工業地域
オーストラリア
- シドニー
- メルボルン
- パース
- ダーウィン
アジアの工業地域
中国
- アンシャン(鞍山)
- ターリエン(大連)
- ペキン(北京)
- ティエンチン(天津)
- チンタオ(青島)
- シーアン(西安)
- パオトウ(包頭)
- シャンハイ(上海)
- ウーハン(武漢)
- チョンチン(重慶)
- コワンチョウ(広州)
- シェンチェン(深圳)
- ホンコン(香港)
韓国
- ソウル
- インチョン(仁川)
- プサン(釜山)
タイ
- バンコク
マレーシア
- クアラルンプール
インドネシア
- ジャカルタ
フィリピン
- マニラ
ベトナム
- ホーチミン
- ハノイ
インド
- コルカタ
- デリー
- ムンバイ
- チェンナイ
- バンガロール
トルコ
- イスタンブール
アフリカの工業地域
南アフリカ共和国
- ケープタウン
- ヨハネスバーグ
日本の工業地域
- 太平洋ベルト
- 京浜工業地帯
- 中京工業地帯
- 阪神工業地帯
- 北九州工業地帯
- 札幌
- 旭川
- 秋田
- 釜石
- 日立
- 古河
- 高崎
- 太田
- 大泉町
- 君津
- 東京
- 川崎
- 横浜
- 新潟
- 長岡
- 福井
- 鯖江
- 浜松
- 名古屋
- 豊田
- 常滑
- 四日市
- 大阪
- 堺
- 泉南
- 京都
- 神戸
- 尼崎
- 岡山
- 倉敷
- 広島
- 福山
- 宇部
- 北九州
- 福岡
- 大牟田
- 長崎
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- 水俣
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