公民(政治経済・現代社会)

立憲主義とは?東大卒の元社会科教員がわかりやすく簡単に解説する

 

立憲主義について説明します!

 

望岡 慶
望岡 慶
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立憲主義とは?

 

 

立憲主義っていうのは、「憲法によって政治権力を制限するという考え」のことを言います。

政治権力っていうのは、簡単に言うと「いろんな考えをもつ人々をまとめる時の強制力(をもつ人)のことで、

例えば、ある国に王様がいて、その王様が思う通りにみんなが動くとしたら、その王様にはものすごい大きな政治権力があると言えます。

日常的な例で言うと、あるサークルに所属している男子たちが、超絶美人な”姫”の言う通りに動いているなら、その女性にはものすごい政治権力があると言えます。

 

んで、立憲主義っていうのは、「人々をまとめる強制力を持っている人・組織(政治権力)を、憲法によって制限しよう!(縛ろう!)」っていう考え方のことです。

 

 

憲法とは?

じゃあ、政治権力を制限する憲法って、一体どんなものなのでしょうか?

 

 

社会の教科書とかには「国の基礎を定める最高法規」「憲法に反する法律や命令・規則は違法だよ」みたいなことが書かれていますが、、、

これだけだとちょっとわかりにくいので、日本国憲法を例に説明をします!

 

 

日本国憲法は、103条まであって文字数は約10,000字もあるのですが、実は大きく分けると2つの部分から構成されています。

  1. 国がやるべきことと、やってはいけないことについて定めたルール
  2. 国の政治の仕組みについて定めたルール

このようなルールがまとまってできたのが憲法です。

 

じゃあ、なんでこのようなルールを定めなきゃいけないのでしょうか?

この答え(=憲法の目的)が立憲主義とものすごく関係しているので、ちょっと突っ込んで話をします!

 

 

物事の決め方は3つある

人間は一人一人いろんな考えを持っています。で、そういう人間が集まって社会(グループ)が作られるわけなので、その社会(グループ)で何か物事を決めようと思ったら、考えが一致せずに対立が起きてしまうのが普通です。

そこで、あらかじめ「物事の決め方」を決めておく必要があります。

 

 

んで、「物事の決め方」は、決める作業に関わる人数という観点で見ると

  • 1人で決める
  • 一部の人で決める
  • 全員で決める

の3パターンに分けることができます。

このうち、3つ目の「全員で決める」っていうのが民主主義だと思ってください。

 

 

んで、日本国憲法の前文には「物事を決めるときは国民全員で決めようね!」って書かれています。

日本国憲法 前文

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

 

つまり、日本という社会(グループ)では、国に関する物事については「全員で決めようね!」ってのが約束事になっているわけです。

ただ実際には「日本国民が全員で話し合う」のは無理なので、「ちゃんと選挙で選んだ代表者(国会議員)が話し合って決める」っていうことになっています。これが「間接民主制」と呼ばれる仕組みです。

 

いずれにせよ、日本は民主主義の国なのです。

 

 

民主主義は完璧ではない

ところが、民主主義は完璧ではありません。100%すばらしい方法!っていうわけではないんです。

というのも、人間はいつでも正しい判断をできる生き物っていうわけではないからです(何が「正しい」のか?は置いておきます)

 

例えば、「日本人は仏教しか信仰しちゃダメ!キリスト教を信仰するのは絶対ダメ!」っていうルールが成立してしまう可能性はゼロではありません。もし話し合いと多数決が、キリスト教徒の人が日本でトンデモナイ事件を起こした直後に行われたとしたら、「キリスト教は怖い!」っていう雰囲気が勝って「日本人はキリスト教徒を信仰しちゃダメ!」っていうルールができちゃうかもしれないわけです。

 

他にも、例えば「北海道に住む人はディズニーランドに行っちゃダメだよ」法案が国会に出されたとします。もしかすると、北海道に住んでいる人以外は「自分とは関係ないし…」ってことで適当に考えて、法案に賛成!って言っちゃうかもしれません。それで本当に可決されちゃったら、北海道に住む人はディズニーランドに行けなくなるわけですが、、、本当にこれは正しいことなのでしょうか?

 

さらにさらに、例えば国会議員の中にポニーテールが大好きな人が結構いて、「女性はみんなポニーテールにしなきゃいけない!破ったら死刑だ!」っていう法案が出されて、51%の賛成で可決されてしまうことだって考えられます。そしたら、本当に女性はそのルールを守らなきゃいけないのでしょうか?

 

ここで例に出した3つの話(宗教・ディズニー・ポニーテール)は、どれも人間の「自由」や「平等」や「人間らしい生活」に関わる話です。

 

こういう「自由」や「平等」や「人間らしい生活」に関しては、絶対に損なわれちゃいけないラインみたいなものがある感じがしますよね。簡単に言うなら、ディズニーランドに行くかどうか?を国民の多数決で決めるのはおかしい!それは一人一人が自分の意志で決めるものでしょ!みたいな。

 

こういうのを「基本的人権」と言って、少なくとも今の日本では、「基本的人権はなんとしても守られなければならない!」っていう共通認識のもとで社会が成り立っています

 

基本的人権=人間である以上、必ず持っている権利のこと

 

ところが、なんでもかんでも民主主義的な決め方をすると、人間はいつでも正しい判断をできる生き物ではないので、絶対に損なわれちゃいけない基本的人権に関してトンデモナイ結論になる可能性があります

 

 

民主主義の欠陥を憲法でカバーする

そこで憲法の出番です。民主主義の欠陥を憲法でカバーするんです。

 

 

世の中の物事を「民主主義で決めていいもの」と「民主主義で決めるとマズイもの」に分けて、「民主主義で決めるとマズイもの」に関しては憲法で定めるわけです。

 

もっと具体的に言うと、

基本的人権に関わることは、民主主義で決めるのはふさわしくない!民主主義で決めると、基本的人権が損なわれてしまう可能性がある!

だから、あらかじめ基本的人権の内容と、

  • 基本的人権を国は保障しなければいけない!
  • 基本的人権を国が侵してはいけない!

ってのを、憲法に定めておこう!

ってことです。

 

こうやって先に憲法で定めておけば、法律や命令、規則が民主主義にもとづいて作られたものだったとしても、その法律・命令・規則が基本的人権を損なうものだった場合は憲法違反ってことで無効になるわけです。

 

 

このように、「民主主義で決めてOKな内容」と「民主主義で決めるのはふさわしくない内容」の境界を線引きして、民主主義が境界線を越えないように、あらかじめ「憲法によって政治権力を制限する」…ってのが、民主主義国家における立憲主義です。

 

日本国憲法 第十一条

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 

 

ただ、これだけではまだ十分とは言えません。

 

政治の仕組みのルールを憲法で定めておく

憲法のおかげで、政治権力が暴走することをある程度防ぐことができますが、基本的人権っていう最低ラインだけ守られればOK!…ってわけじゃないですよね。

 

僕たちが望んでいるのは、より良い未来・より良い生活です。

より良い未来・より良い生活を手に入れるために、「いろんな考えをもつ人々をまとめる時の強制力」をもつ人(つまり政治権力を持つ人たち)はちゃんとした人であってほしいし、彼らにはちゃんとした行動をしてほしいし頑張ってほしいですよね。

 

もっと具体的に言うと、選挙で国民に選ばれた国会議員が好き勝手なことをしてしまったら困るし、国会議員から選ばれる内閣総理大臣に好き勝手なことをされたら困るわけです。

 

そこで、憲法であらかじめ国の政治の仕組みについても決めて、政治権力を制限するんです。

  • 誰が話し合いに参加するか?
  • 話し合いをするときはどうやって行うか?
  • 話し合いで決まったことは誰がどうやって実現させていくか?
  • 話し合いで決まったことが守られていなかったら、どうするか?

などなど。

 

具体例↓

日本国憲法

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。

 

 

まとめ

立憲主義

憲法によって政治権力を制限するという考え

 

憲法の目的

民主主義で決めるのはふさわしくない内容と政治の仕組みについて、あらかじめ定めておくことで、「基本的人権(命や人間らしい生活)」を保障し、より良い未来を実現する。

 

もし憲法がなかったら、、、

政治権力を持っている人にすべてが委ねられてしまうので、

  • 政治権力を持っている人が良い人だったら、良い政治をしてくれるけど
  • 政治権力を持っている人が悪い人だったら、大変なことになる

ということになってしまいます(こういう不安定なあり方を「人の支配」と言います)

 

 

でもね

ここまで、「立憲主義は良いものだ!」って感じで説明してきましたが、、、

 

憲法自体に問題がある場合はヤバイことになります。

立憲主義とは何なのか?はもうわかっているはずなので、このことについて改めて説明するまでもないですよね。

 

 

んで。

 

日本国憲法は70年近く一度も改正されていませんが、現代においても、この憲法で基本的人権は保障されているのでしょうか?

 

時代が変われば、必要なルールも変わるでしょう。でも、憲法は勝手には変わりません。憲法を変えるのは人間です。

僕たちは日本人である以上、「日本という社会の大枠を定めている日本国憲法って、本当にこのままで良いのかな?」って常に考え続けなければいけないんです。

 

 

…自分には関係ないって?

 

そんなことありません。

 

日本国憲法の改正は、民主主義的なやり方によって行われます。最後に国民投票が行われます。みんな一票を投じるんです。国会議員だけに任せることはできません。

 

 

んで、さっき説明した通り、民主主義は完璧ではありません。

なので、民主主義によって、基本的人権を侵害するような憲法に変更されてしまう可能性もゼロではありません。

でも逆に、民主主義によって、基本的人権をもっと保障するようなすばらしい憲法に変更することもできます。

 

ヤバい日本人が多ければ日本国憲法もヤバくなるけど、素晴らしい日本人が多ければ日本国憲法も素晴らしいものになるんです。

 

僕の考えでは、「自分には関係ないし」って思っている日本人=ヤバい日本人です。僕はそうはなりたくないな!って思っています。

 

望岡 慶
望岡 慶
最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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