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鉄鋼業界のこれから

モチオカ(望岡 慶)
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鉄鋼業は必要な産業だけどクリーンじゃない

鉄鋼業は製造工程で大量の二酸化炭素(CO₂)を排出する。

エネルギー消費が激しいだけでなく、材料の変化そのものがCO₂を出す化学反応になっている点が重要。

鉄鉱石(酸化鉄=Fe₂O₃やFe₃O₄)は、鉄ではなく酸素と結びついた状態である。これを鉄(Fe)にするには、酸素を取り除く=還元する必要がある。

Fe₂O₃(鉄鉱石) + 3CO(一酸化炭素) → 2Fe(鉄) + 3CO₂(二酸化炭素)

このとき使う一酸化炭素COは、コークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)を燃やして作るため、ここでもCO₂が出る。

つまり、製鉄の過程では「化学反応の結果」と「エネルギーの消費」の両方で、CO₂が大量に発生してしまう。

こうした課題に対応する手段として、近年注目されているのが「電炉(でんろ)」である。

近年注目されているのは「電炉」

電炉は、鉄スクラップ(=すでに鉄になっているもの)を電気で溶かして再利用する方式。鉄鉱石を還元する工程がないため、化学反応によるCO₂がほとんど発生しない。

もちろん、電気をつくる際に化石燃料を使っていれば間接的にCO₂が出るが、それを差し引いても、電炉のCO₂排出量は高炉より圧倒的に少ないのが特徴。

そのため、世界では今、高炉から電炉への転換が進んでいる。日本でも、脱炭素の流れの中で、電炉メーカーが注目されつつある。

鉄鋼業のこれから

電炉での製鉄技術の向上がカギ

今後は、CO₂排出量を抑えられる「電炉製鉄」が主流になっていくだろう。

しかし、電炉での製鉄には課題もある。電炉は鉄スクラップを原料とするため、原料の質が製品の質に直結する。スクラップには他の金属や不純物が混じっていることも多く、これらを適切に処理できなければ、高品質な鋼材はつくれない。

そこで、次のような技術の進化が不可欠になる。

① 高品質なスクラップの確保と選別技術の進化

鉄スクラップを用途ごとに厳密に分類・選別する技術が求められる。自動車や電機製品の解体から得られるスクラップを、より精密にリサイクルする技術の高度化が、これからの鉄鋼業の競争力を左右する。

② 不純物の除去と合金調整技術の向上

スクラップに含まれるリンや硫黄などの不純物を除去する技術や、用途に応じた合金成分の精密な調整技術が必要。

最近では、こうした技術の進化により、電炉でも自動車用のような高付加価値の鋼材がつくれるようになってきている。

電炉が中心になると電気料金の安さが重要に

電炉は電気を大量に使うため、電気料金の安さがコスト競争力を大きく左右する。

そのため、今後は以下のような電力供給に強みをもつ地域が鉄鋼業の有力な立地として注目されている。

  • 北欧諸国:再生可能エネルギー(水力・風力)が豊富で、電気の価格が比較的安定している。
  • アメリカ南部:電力料金が安く、インフラも整備されており、大規模工場の誘致が進む。

一方、日本は電力価格が高く、再エネ比率も十分とはいえず、電炉移行に課題が残る状況。

各国の動向

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