なぜ子育て支援が行われてしまうのか?
前回、前々回に引き続き、テーマは「少子化対策」。今回は少子化対策の方法について考えてみたいと思います。
※少子化対策って本当に必要なの?っていう話はひとまず置いておきます
少子化対策にはどんな方法がある?
少子化対策の方法は「子供を増やす」or「高齢者を減らす」のどちらかです。
まあ実際には高齢者を意図的に減らすわけにはいかないので、実質的には「少子化対策=子供を増やす」ということになるでしょう。
子供を増やす方法は?
「子供を増やす」方法は大きく2つに分かれます。
- 子供を日本の外から入れる
- 子供を日本の中で増やす
これらをさらに分解してみると、次のようになります。
【①子供を日本の外から入れる】
①-1:外国人の子供・養子を受け入れる
①-2:年少の子供がいる移民を家族丸ごと受け入れる
【②子供を日本の中で増やす】
②-1:子供をたくさん産んでくれそうな移民を受け入れる
②-2:未婚者が子供を持ちやすくする
- 婚外子
- 人工授精の奨励
②-3:未婚者が結婚しやすくする
- 結婚支援
②-4:結婚夫婦が子供を持ちやすくする
- 不妊治療
- 子育て支援(←こっちの重みが強い)
②-5:子供をたくさん持ちたい結婚夫婦が子供を持ちやすくする
- 子だくさんを目指す家庭ピンポイントの子育て支援
この中で日本が力を入れているのは「②-4:結婚夫婦が子供を持ちやすくする」です。2023年の国会でも子育て支援について活発に議論されていますよね。
では、なぜこの方法に力を入れるのでしょうか?
なぜ子育て支援に力を入れるのか?
少子化対策に最も効果的な方法だから・・・ではなく、
最も支持されやすい(=反対しにくい)方法だから・・・だと思います。
①-1:外国人の子供・養子を受け入れる
→「外国人を入れたくない!」って思っている人が多いのでムリ
①-2:年少の子供がいる移民を家族丸ごと受け入れる
→「外国人を入れたくない!」って思っている人が多いのでムリ
②-1:子供をたくさん産んでくれそうな移民を受け入れる
→「外国人を入れたくない!」って思っている人が多いのでムリ
②-2:未婚者が子供を持ちやすくする
→「結婚していない人が子供を持つなんて!」っていう嫌悪感を持つ人が多いので、推し進めにくい
②-3:未婚者が結婚しやすくする(結婚支援)
→「結婚できない人は努力が足りないんだ」って思っている人が多いので、推し進めにくい
②-4:結婚夫婦が子供を持ちやすくする
→平等な政策なので支持されやすい
②-5:子供をたくさん持ちたい結婚夫婦が子供を持ちやすくする
→子供をたくさん持ちたい人を優遇する政策で不平等が生まれるし、関係がない人(=自分は得しない人)が多いので、支持されにくい。
このように、「②-4:結婚夫婦が子供を持ちやすくする」(≒子育て支援)はもっとも支持されやすい(=反対しにくい)政策なんです。
だからこそ、日本では
少子化対策
=子供を増やす
=子供を日本の中で増やす
=結婚夫婦が子供を持ちやすくする
と解釈される。
子育て支援の少子化対策としての効果は限定的
しかし、この方法(≒子育て支援)は少子化対策としてはそれほど効果的ではないと言われています。
その理由については以下の本を読んでほしいのですが、
前回の記事で示したデータを見ても、子供を1〜2人持とうとしているいわゆる”普通の”夫婦への子育て支援を拡充しても、さほど効果は大きくなさそうだな・・・と思えるはず。
では、なぜ少子化対策としては効果的とは言えない政策が推進されるのでしょうか?
なぜ子育て支援が推進されるのか?
僕は政府と国民の共犯の結果だと思っています。
政府の思惑
- 子育て支援の拡充をアピールすることで、子育て世代というボリュームゾーンの支持を得られる
人口ピラミッドをもとに、自分が政治家だったらどのように考えるでしょうか?2023年4月には統一地方選挙があるわけですが・・・
塾やら私立の学費やらで子育てで最もお金がかかる時期を迎えている世代(40代後半〜50代前半)の支持を得たいと考えるのではないでしょうか?
子育て支援は少子化対策としてはそこまで効果的とは言えないけど、この人たちの支持を得るためにはかなり効果的ですよね。
国民の思い
- 少子化対策とか本当は別にどうでもいい(=自分には関係のないことに思えるし)
- 少子化対策に効果的な方法なんて知らない
- 子育て世代はお金をもらえてうれしい
国民は国民で正直、少子化にそこまで危機を感じてはいないのではないでしょうか。
少子化対策うんぬんよりも、「子育て支援としてお金がもらえる」という直接的なメリットを提示される方がうれしいですよね。それが少子化対策としてそこまで効果的ではなかったとしても。
つまるところ、
政府も国民もお互いに自らにとって短期的・直接的に得な方向に進もうとしているということです。
少子化対策を本気でするつもりがないとも言えます。少なくとも、「こういう社会にするべき!そのためには○○が必要だ!」という合理的な考えに基づいて政策が行われるわけではないのです。
子育て支援はケチつけにくい聖域的なテーマ
政府はおそらく「子育て支援は少子化対策としては効果はイマイチだよな・・・それよりも未婚の人への結婚支援を拡充するべきだ!」って思っているとは思いますが、
むちゃくちゃ言いづらいですよね。子育て世代から反感を買うことになってしまうので。
また、政府に限らず一般人にとっても口にしにくい。
「子育て支援って少子化に効果あるの?」って疑問に思っても、子育て支援は聖域的なテーマなのでツッコみづらいんです。
本気で少子化対策をするなら
本気で少子化対策をするなら、
僕は次のような優先順位で政策を実行するべきだと思います。
①-2:年少の子供がいる移民を家族丸ごと受け入れる
②-3:未婚者が結婚しやすくする
②-5:子供をたくさん持ちたい結婚夫婦が子供を持ちやすくする
②-2:未婚者が子供を持ちやすくする
②-1:子供をたくさん産んでくれそうな移民を受け入れる
②-4:結婚夫婦が子供を持ちやすくする
①-1:外国人の子供・養子を受け入れる
①-2は世論的に厳しいと思うので、
- ②-3:未婚者が結婚しやすくする
- ②-5:子供をたくさん持ちたい結婚夫婦が子供を持ちやすくする
に思いっきり力を入れるのがいいのでは・・・?
子育て支援はそれはそれで大事だし必要ですが(←ここ重要)、「子育て支援をすることで少子化対策を実行した」って勘違いはしてほしくないです。