中国の食文化で面白いなと思ったこと:小麦料理

問題です
この写真に写っているのは、ある国の料理です。小麦粉で作った皮で、肉の餡を包んでいます。この料理は、一体どこの国の料理でしょうか。
ヒント1。この包んだものを茹でて、ソースをかけて完成した写真がこちらです。

ヒント2。この料理の名前は「マンティ」と言います。かかっている白いソースはヨーグルトを使ったソースです。

ヒント3。「世界三大料理」の3つの国の中のどれかです。世界三大料理は「フランス料理」「中華料理(中国料理)」「トルコ料理」です。

正解は本文の中で↓
中国における食文化の南北差と気候要因
中国では、食べ物と地理、そして歴史が密接に結びついています。
例えば北京をはじめとする中国北部では、ワンタンや水餃子、そしてマントウ(饅頭)と呼ばれる小麦粉をこねて蒸したパン、さらに麺料理などが名物として知られています。
このように、中国の北部には小麦を使った料理が多く存在します。



一方で、南部に行くとお米の料理が多くなります。
中国南部の名物であるビーフンは、お米を粉にして細い麺状にした料理です。この「お米を粉にして麺にして食べる」という文化は、ベトナムのフォーやブンチャー、シンガポールのホッケンミーとも非常によく似ています。


このように、大まかに「北は小麦、南は米」と分かれている現象は、気候と深く関係しています。
北部は涼しくて雨があまり降らないため、大量の水を必要とする稲作には向きません。どちらかといえば小麦の栽培に適しているため、北部では小麦料理が有名になりました。
逆に南部は、気温がかなり温暖で降水量も多いため、稲作が非常に盛んです。地域によっては1年に2回田植えをして2回収穫する「二期作」ができるほどであり、自然とお米の料理が多くなっていきました。

ユーラシア大陸をまたぐ小麦料理の伝播
北部のワンタンや水餃子の背景にある歴史も、非常に興味深いものがあります。
トルコには、「マンティ(マントゥ)」という料理があります。

これは小麦の生地で肉の餡を包み、ワンタンよりもさらに小さく形作ったものを茹でて、ヨーグルトソースやミートソースをかけて食べる料理です。
どうやら中国の「饅頭」が語源のようであり、中国北部の小麦料理が、中央アジアの草原・遊牧地帯を通ってトルコの方まで伝わったと考えられます。

ヨーグルトソースが映し出す文化圏の違い
トルコの「マンティ」にはヨーグルトソースがかかっている一方で、中国の餃子にはそれがほとんどかかっていません。これは、それぞれの地域における明確な文化の違いを反映しています。
中国北部からトルコにかけて広がる地域は乾燥しており、大きな木がほとんど生えない代わりに、広大な草原が広がっています。
この草原地帯では、古くから遊牧民族が羊や馬などの家畜とともに、モンゴルのゲルのような移動式のテントを使い、草を求めて季節ごとに移動する生活を送ってきました。彼らは家畜の乳を絞ってヨーグルトやチーズを作り、貴重なタンパク源として摂取していたのです。
マンティにヨーグルトソースがかかっているのは、まさにこの遊牧民の習慣がそのまま残っているからだと言えます。

この乾燥地帯には、移動を遮る深い森や険しい山が少なく草原が広がっているため、もともと東西に移動しやすい環境でした。 この東西への移動をさらに活発化させたのが、馬の存在です。
- 馬の家畜化:ロシア南部の草原地帯で最初に家畜化されたと考えられている馬が、遊牧民に広く使われるようになりました。
- 機動力の向上:馬によって移動速度が劇的に上がったことで、東西間の交流が一気に活発化しました。
しかし、馬に乗った素早く高い機動力を持つ遊牧民族は、周囲の定住民族、特に中国にとって大きな脅威となりました。戦おうとしても移動が早いため、攻撃を仕掛けるのも容易ではありません。
中国は長い間、この遊牧民族の侵入に苦しめられてきました。だからこそ、その侵入を防御するために万里の長城が建設されました。

中国に万里の長城という堅固な壁があったからこそ、遊牧民族の文化は中国の内部へと深く入り込むことがありませんでした。
そのため、中国と乾燥地帯の遊牧民族との間には大きく異なる文化圏が形成され、中国では伝統的に乳製品を食べる文化がほとんど定着しなかったのでしょう。
調理法(蒸す文化)と自然環境の相関
もうひとつ、小麦の料理において興味深いのが調理法です。
ヨーロッパのパンやピザのようにオーブンで「焼く」文化と違い、中国のパンはせいろで「蒸す」もの(蒸しパン)が多く見られます。

なぜオーブンで焼かないのかというと、おそらく中国の北部では木材などの燃料があまり豊富ではなかったからだと考えられます。
北部一帯は降水量が少なくて比較的乾燥しているため、木がたくさん生えているわけではなく、木材が非常に貴重でした。そのため、ヨーロッパのように木材をたくさん燃やして大量のエネルギーを使うオーブンは、各家庭に普及しなかったのだと思います。

また、かまどや大きな窯を構築するのも容易ではありません。それに比べれば、お湯を沸かしてせいろを使うだけの「蒸し料理」は、水を用いてエネルギーをなるべく抑えながら簡単に調理ができます。
こうした理由から、中国の各家庭には蒸す文化が普及していきました。だからこそ中国の北部では、小麦をピザのように焼くのではなく、蒸しパンという形で食べるようになったのです。
ここら辺にも、中国の自然環境との密接な関係が映し出されていて面白いと感じます。














