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アパレル産業の課題

モチオカ(望岡 慶)
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アパレル産業の課題

① マイクロプラスチック問題

現代の服の多くに、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維が使われている。これらの服を洗濯するたびに、目に見えないほど微細なプラスチック繊維が流れ出し、最終的には海を汚染する。それが魚に取り込まれ、巡り巡って僕たちの口に入る。

人体への長期的な影響はまだ研究段階だが、いずれなんらかの病気との関連性(肝臓や免疫系への悪影響)が明らかになるんじゃないかと思う。

海洋だけでなく、下水汚泥が肥料として農地に散布されることで土壌を汚染したり、乾燥機の使用によって大気中へ放出されたりするなど、汚染は多方面に広がっている。

② 大量生産・大量廃棄

アパレル業界はそもそも、商品が売れ残ることを前提に動いている。欠品による機会損失を避けるためだ。セールや福袋はその出口として機能しているが、それでも消化しきれない服の多くは未使用のまま焼却・埋め立てされている。

1990年代以降に台頭したファストファッションのビジネスモデルが、大量生産・大量廃棄のサイクルに拍車をかけた。このモデルは、最新のトレンドを極めて短期間で製品化し、低価格で大量に供給することを特徴とする。

ファストファッションの台頭による衣服の単価低下は、消費者の購買行動を根本的に変容させた。衣服はかつての「耐久消費財」から、数回着用しただけで廃棄される「半消耗品」へとその性質を変化させた。

現在、世界中で生産される衣服のうち、新しい衣服にリサイクルされる割合は極めて低い。その要因は、多くの衣服が「混紡(複数の素材が混ざった状態)」であることにある 。

ファッション性や機能性(伸縮性、吸汗速乾性など)を追求した結果、綿とポリエステル、ポリエステルとポリウレタンといった組み合わせが一般的となっている。しかし、リサイクルプロセスにおいてこれらを物理的あるいは化学的に分離することは技術的に極めて困難であり、多大なエネルギーとコストを要する。

※現在主流となっているリサイクル手法は「メカニカルリサイクル(物理的破砕)」である。これは衣服をシュレッダーで裁断し、再び糸や不織布にする方法だが、加工の過程で繊維長が短くなり、強度が著しく低下するという欠点がある。

③ 環境負荷

アパレル産業は、製造から廃棄に至る全段階で膨大な自然資源を消費し、深刻な汚染を引き起こしている。

Tシャツ1枚を製造するために必要な水量は約2,700リットルに達するなど、アパレル産業は大量の水資源を消費する。中央アジアの綿花栽培では、過度な取水によりアラル海がほぼ消失するなど、生態系に壊滅的な打撃を与えている地域もある。

化学染料による河川汚染も深刻である。バングラデシュやインドなどの製造拠点では、未処理の廃水が河川を青や黒に染め、生物が住めないデッドゾーンを形成している 。

④ 古着問題

先進国で大量に生まれる古着は、発展途上国に輸出されることが多い。しかし汚れや破れで「着用不能なゴミ」として現地に到着することも多く、結局ゴミとして埋め立てられたり、川や野原に放置されたりしているのが実態だ。

これらの衣類は分解されにくい合成繊維(プラスチック)が中心であり、分解に数百年を要する。さらに、これらが現地で不法に焼却されることで有害な煙が発生し、近隣住民の健康と脆弱な砂漠の生態系に回復不能な打撃を与えている。

古着の輸入が現地に雇用を生む側面はある。しかし同時に、低価格の古着が流入することで現地のアパレル産業の発展が阻害されるという問題も指摘されている。

⑤ 低賃金労働の問題

「大量生産・安価な提供」を支えているのは、発展途上国における低賃金労働である。

服作り、特に縫製は多くの「人の手」を必要とする。本来、衣服は安いはずがない。にもかかわらず僕たちが数千円で服を買える背景には、グローバルなサプライチェーンによる低賃金労働の活用がある。

2013年のバングラデシュでのラナ・プラザ崩落事故は、安さの裏にある人権侵害の深刻さを象徴する悲劇となった。

参考文献

国際リユースと発展途上国(アジア経済研究所)

アフリカに古着を送るべき?送るべきでない?古着をめぐるさまざまな視点

なぜアパレルが「世界2位の汚染産業」なのか? 大量生産・大量廃棄が生まれた背景と問題は

サステナブルファッション(環境省)

国連、ファッションの流行を追うことの環境コストを「見える化」する活動を開始(国際連合広報センター)

衣料品から出るマイクロプラスチックの流出防止にご協力をお願いします(環境省)

衣類から大量のマイクロファイバー、海洋プラ汚染の発生源に(AFPBB)

衣料品の大量廃棄とは 6割は再利用されず(日本経済新聞)

ガーナにある「ファストファッションの終着駅」…運ばれた古着の3分の1は埋立地行き(BUSINESS INSIDER)

砂漠にできたファッションの墓場(ナショナル ジオグラフィック)

週75時間労働も……SHEINの格安衣服を作る工場をBBCが取材(BBC)

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