アパレル産業の仕組みをわかりやすく

衣服ができるまで
アパレル産業は、大きく分けて「企画・開発」「材料生産」「製品加工」「流通・販売」の4段階で捉えられる。
企画・開発
まず「どんな服を作るか」という設計図がなければ、材料の手配もできない。市場調査(マーケティング)を行い、ターゲットに合わせたデザインや機能性を決定し、仕様書を作成する。


材料生産
羊毛や綿花などの天然繊維を収穫して糸を作ったり、石油からポリエステルなどの化学繊維を合成したりする。できた糸を縦横に組み合わせたり編んだりして、平らな生地を作る。染色も行われる。
糸や生地(テキスタイル)の生産は巨大な設備投資が必要な装置産業であるため、専門の素材メーカー(東レなど)から調達するのが一般的。
ファーストリテイリング(ユニクロ)は東レと繊維・糸・生地を共同開発している(ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウンなど)。





製品加工
企画段階で作った仕様書に基づき、生地をカットし、ミシンなどで縫い合わせる(縫製)。ここで初めて衣服という形になる。
縫製工程は機械化が難しく、依然として人手に頼る部分が大きい。(労働集約的)
- 布は伸縮性や柔軟性が高く、ロボットが正確に掴んだり位置決めしたりするのが非常に困難。
- 服は平面の布を立体的に縫い合わせるため、複雑な動きが必要。
- トレンドに合わせて頻繁にデザインが変わるため、特定の動作しかできない機械では対応しきれない。
流通・販売
完成した服を検品し、店舗やECサイトを通じて消費者に届ける。
高級ブランドの服が高価な理由の一つに、非常に厳しい検品基準によって多くの製品が「不良品」として弾かれることがある。
- 高級ブランドはブランド価値を維持するために、糸のわずかなほつれ、数ミリの縫い目のズレ、生地の微細なキズや色ムラも許容しない。
- 一般的なアパレルなら「合格」となるレベルでも、高級ブランドでは弾かれる。この「店頭に並ばない分」のコストも販売価格に含まれる。
百貨店のアパレル、ファストファッション、イオンの直営アパレルの縫製を見比べてみると、検品基準の違いがよくわかる。

アパレル産業の構造
アパレル産業は工程が非常に長いため、「どこに自社の資産(人・モノ・金)を置くか」(=リスクをどこで取るか)という意思決定がそのままビジネスモデルの違いになる。
| 企画開発 | 材料生産 | 製品加工 | 流通販売 | |
| 製造小売業(SPA) | ◯ | × | △/○ | ◯ |
| ファブレス | ◯ | × | × | ◯ |
| OEM | × | × | ◯ | × |
| ODM | ◯ | × | ◯ | × |
| 従来型メーカー | ◯ | × | ◯ | × |
| セレクトショップ | × | × | × | ◯ |
糸や生地(テキスタイル)の生産は巨大な設備投資が必要な装置産業であるため、専門の素材メーカー(東レなど)から調達するのが一般的。
製造小売業(SPA)
製造小売業(SPA:Speciality store retailer of Private label Apparel)は、従来の「卸から仕入れて売る」小売業とは異なり、商品の企画・開発、製造、物流、販売までを一貫して自社で行うビジネスモデル。
ITが未発達な時代は、売上データを集計し、企画開発チームや工場に素早く伝達することが難しかったため、製造から小売まで一社で抱え込むのはリスクが大きかった。自社で作ったものは、売れ残っても誰も引き取ってくれず、すべて自社の損失になってしまうから。
そのため、かつては「作るプロ(メーカー)」「運ぶプロ(卸売)」「売るプロ(小売)」という専門特化が効率的だとされていて、製造小売業という形態は一般的ではなかった。
しかし、ITの発達にともない、POSシステム(レジ)やインターネットでリアルタイムにデータを共有できるようになったことで、製造小売業という形態をとれるようになった。在庫リスクをコントロールできるようになり、「消費者のことがわかる」ということを強みとして活かせるようになったから。


ファブレス企業
ファブレス(Fabless)とは「自社で製造工場を持たない」企業形態のこと。広義にはファブレスも製造小売業に含まれる。工場を持たないSPA。
「服を縫う」という人手がかかる部分は外部の専門工場に任せ、自分たちは「どんな服を作るか(企画)」「どう付加価値をつけるか(ブランディング)」「どう売るか(マーケティング)」という、より知的な活動にリソースを集中させる。
ファブレスにすることで、自社で巨大な工場や何千人もの従業員を抱える必要がなくなり、「必要な時に、必要な分だけ」外部に発注することで過剰在庫のリスクを抑え、素早く戦略を切り替えることができる。
しかし、ファブレス企業が製造を外部に任せきりにすると、その工場が「劣悪な環境で人を働かせていないか?」「川を汚染していないか?」という実態が見えにくくなる。今の時代、たとえ「外注先がやったこと」であっても、ブランド側には厳しい責任が問われる。
OEM・ODM
「企画(脳)」を担当するファブレス企業に対し、高度な生産技術と設備を提供し、注文を形にする「手」の役割を果たすのがOEMやODMである。自社店舗は持たない。
| OEM(Original Equipment Manufacturing) | 委託元が設計・企画した製品を、相手先ブランド(自社ブランド)で製造する |
| ODM(Original Design Manufacturing) | 「こういう服が欲しい」というざっくりとしたアイデアをもとに、ODM企業がデザインや仕様を具体化し、生産まで一貫して行う。専門的な知識や生産背景がない場合でも、企画・デザイン・製造を外部企業に一括委託できる。 |
個別のブランドが自分たちだけで小さな工場を運営するよりも、巨大な専門工場(ファウンドリ)が世界中のブランドから製造を一手に引き受けることで、「規模の経済」が働き、製品1つあたりのコストを抑えることができる。
従来型メーカー
商品を作って百貨店や専門店に卸すスタイル。
セレクトショップ
他社ブランドを買い付けて並べる。
企画・開発を行わない純粋なセレクトショップは利益率が低いため、現在のビームスやユナイテッドアローズなど、近年は自社企画(PB)を増やしSPA化する傾向にある。
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