【地理】乾燥帯の特徴・乾燥した地域の暮らしをわかりやすく
乾燥帯の特徴
雨がとても少なく乾燥していて、樹木が育たない
乾燥帯は乾燥しすぎて木が育たない地域。
丈の低い草が生えているだけの草原(ステップ)や、草さえも生えない砂漠(デザート)が広がっている。
【乾燥帯(B気候)の条件】
- 降水量よりも蒸発量がだいぶ多い
(細かい条件は覚える必要なし!)
- 乾燥する(降水量が少ない)理由
-
大きく分けて、
- 上昇気流が生じない(→雲ができず雨が降らない)
- そもそもの大気中の水分量が少ない
という2つの理由がある。
高圧帯に位置(→上昇気流が生じない)
赤道で上昇した空気が冷やされて下がってくる場所には「高気圧」がある。高気圧のところでは空気が下に沈むので、雲ができにくく、雨がほとんど降らない。
→気温が高く蒸発量が多い亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の地域が乾燥帯になりやすい。
(例)サハラ砂漠、アラビア半島、オーストラリア内陸部
※一年中、中緯度高圧帯に位置する地域→砂漠気候
※中緯度高圧帯から外れる時期があり一時的に雨が降る→ステップ気候
寒流が近くを流れる(→上昇気流が生じない)
海流が冷たいと、水蒸気が発生しにくく、空気も上昇しにくいため、雲ができない。これが「海岸砂漠」。
(例)アタカマ砂漠(←ペルー海流)、ナミブ砂漠(←ベンゲラ海流)
※大陸の西岸に寒流による砂漠(海岸砂漠)ができがち。ただ、寒流が流れる地域が必ず乾燥するわけではない。
海から遠く、湿った空気が届かない(→大気中の水分量が少ない)
大陸の内側にある地域(内陸部)は、海からの湿った空気が届きにくいため雨が少なくなる。
(例)モンゴル付近、中央アジア、オーストラリア内陸部
1日の気温変化が大きい
空気中の水分量が少ないため、昼は暑くなるが夜は寒くなる(気温の日較差が大きい)傾向にある。
- 1日の気温の変化が大きい理由
-
水は温まりにくく冷めにくいという性質がある。
空気中の水分量が少ない乾燥地域では、水分が持つ「温まりにくく冷めにくい」という性質の影響が弱い。
そのため、太陽の熱を受ける日中は気温が高くなり、太陽の熱を受けない夜は気温が低くなりやすい。
雨の少なさにより2つの気候に分かれる
乾燥帯(B気候)は、雨の量によってさらに2つに分けられる。
- ケッペンの気候区分における乾燥帯の定義
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- ケッペンの気候区分の中の「樹木が見られない気候」のうち、
- 「年降水量が乾燥限界に達しない気候」
を乾燥帯と言う。
※乾燥帯は「B」と表す。ちなみに、熱帯はA、温帯はC、冷帯はD、寒帯はE。
降水量と蒸発量のバランス(←乾燥限界)に応じて、さらに2つに分けられる。
- 草がちょっと生える→ステップ気候(BS)
- 草が全然生えない→砂漠気候(BW)
ステップ気候(BS)
少しだけ雨が降り、丈の低い草が生える地域。乾燥はしているが、なんとか植物が生きられる程度の雨がある。
モンゴルの草原やウクライナの小麦畑などがこのタイプ。
砂漠気候(BW)

年間を通して雨がほとんど降らず、植物もほとんど生えない地域。
サハラ砂漠やアタカマ砂漠などがこのタイプ。
乾燥帯で人間はどんな工夫をしている?
乾燥への工夫
水が少なくても育つ植物である小麦やナツメヤシを栽培する。

乾燥に強い動物であるラクダや羊を飼育し、生活に利用している。乾燥帯では農作物が十分に育たず、他の地域との交易が必要になるため、ラクダに乗って移動し、物資を運搬する。
木材を得にくいため、粘土を日光で乾かして固めたれんが(日干しれんが)を住居の建設に使う。

日差しや砂ぼこりへの工夫
薄手だが長袖・長ズボンの服装を着用することが多い。
肌をやたらと出さない(肌を隠す)ことはイスラム教の教えにもなっている。

植生・土壌の特質への工夫
乾燥が厳しい地域では、植物が育たず有機物の供給がないため、土壌はやせている。
稲作や畑作は困難なので、自然の草や水を求めて広い範囲を移動しながら家畜を飼育する遊牧が行われる。
気温も雨も”ほどほど”な地域(ステップ気候で、草原が多い地域)では、腐植物質が非常に多く色が黒っぽい肥沃な土壌が分布する。
黒土が分布する地域は植物にとって理想的な環境なので、大穀倉地帯になっている。
- 土壌についてくわしく
-
乾燥帯での暮らしの具体例
西アジア
アラブ首長国連邦
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
---|---|---|
マクブース(カブサ) | 米、肉、スパイスを炊き込んだ伝統料理。湾岸諸国で広く食べられている。 | 遊牧文化とインド洋交易の影響でスパイス文化が発展。 |
デーツ(ナツメヤシ) | 乾燥した果物で、栄養価が高く、ラマダンの断食明けにも食べられる。 | 乾燥地帯で育つ重要な作物。遊牧民の携帯食としても重宝された。 |
アラビックコーヒー(カフワ) | カルダモンなどの香辛料を入れた伝統的なコーヒー。 | ベドウィン文化の礼儀・接客の精神を象徴。 |
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
---|---|---|
カンドゥーラとアバヤ | 男性は白い長衣(カンドゥーラ)、女性は黒いローブ(アバヤ)を着用。 | 強い日差しから身を守る服装であり、イスラム教の服装規定にも合致。 |
モスクと礼拝 | モスクでの礼拝が生活の中心で、1日5回の祈りがある。 | 国教がイスラム教であり、宗教が日常生活に深く根付いている。 |
ラマダン | イスラム教の信仰に基づく行事で、日中の飲食を控える。 | 宗教的義務であり、自己鍛錬と共同体意識を深める重要な期間。 |
ブルジュ・ハリファなど | 世界有数の高層ビルや都市施設が集まる近未来的都市景観。 | 石油収入を活かした都市開発と観光戦略の一環。 |
サウジアラビア
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
---|---|---|
マクブース(カブサ) | 米、肉、スパイスを炊き込んだ伝統料理。湾岸諸国で広く食べられている。 | 遊牧民の食文化とインド洋交易によるスパイス文化の融合。 |
デーツ(ナツメヤシ) | 乾燥した果物で、栄養価が高く、ラマダンの断食明けにも食べられる。 | 乾燥地帯で育つ重要な作物。遊牧民の携帯食としても重宝された。 |
アラビックコーヒー(カフワ) | カルダモンなどの香辛料を入れた伝統的なコーヒー。 | ベドウィン文化の礼儀・接客の精神を象徴。 |
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
---|---|---|
カンドゥーラとアバヤ | 男性は白い長衣(カンドゥーラ)、女性は黒いローブ(アバヤ)を着用。 | 強い日差しから身を守る服装であり、イスラム教の服装規定にも合致。 |
モスクと礼拝 | モスクでの礼拝が生活の中心で、1日5回の祈りがある。 | 国教がイスラム教であり、宗教が日常生活に深く根付いている。 |
ラマダン | イスラム教の信仰に基づく行事で、日中の飲食を控える。 | 宗教的義務であり、自己鍛錬と共同体意識を深める重要な期間。 |
イラン
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
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チェロウ・キャバーブ(Chelo Kebab) | ごはん(チェロ)と串焼きの肉(キャバブ)の組み合わせ。国民食の一つ。 | 乾燥地でも育ちやすい穀物中心の食生活。遊牧民文化と都市文化の融合。 |
ゴルメサブズィ | 野菜、豆、肉を煮込んだシチュー風の家庭料理。 | 乾燥地でも育つ豆類や保存性の高い食材が使われている。 |
ナン | 数種類のナンが主食として食べられる。窯焼きで作るのが一般的。 | 遊牧民や農耕民の伝統。高温乾燥地でパン文化が発展。 |
チャイ(紅茶)文化 | 小さなグラスで出される濃い紅茶。日常的に飲まれ、もてなしにも使われる。 | トルコ・中央アジアの影響。乾燥した地域で温かい飲み物が好まれる。 |
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
---|---|---|
チャードル・ヒジャーブ(女性の服装) | 公共の場で女性が体を覆う服を着ることが義務付けられている。 | イスラム教シーア派の教義と国の法律に基づく規定。 |
イーワーン(住居の中庭) | 家の中に風通しの良い中庭がある伝統的住宅。 | 高温・乾燥地に適した構造で、日差しを避けながら風を取り入れる。 |
イスラム建築(モスクやバザール) | 青いタイル装飾のモスクやドームが特徴的。バザール(市場)は日陰がある構造。 | イスラム文化とペルシャ建築様式が融合。乾燥地の生活に配慮された構造。 |
ペルシャ絨毯 | 色鮮やかで緻密な模様の絨毯。 | 遊牧民の伝統工芸。乾燥した地面で快適に過ごす工夫と芸術文化の融合。 |
中央アジア
カザフスタン
アフリカ
エジプト
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
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コシャリ | 米、マカロニ、レンズ豆にトマトソースをかけた庶民的料理。 | |
フール | そら豆を煮てオリーブオイルなどで味付けした朝食の定番。 | 乾燥地でも育つ豆類を活かした伝統食。 |
アエーシ | 小麦粉で作る主食のパン。食事の多くを手で食べる際に使う。 | ナイル川流域の小麦農業とアラブ文化が融合。 |
生活・文化の具体例 | 説明 | 背景 |
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ガラビーヤ | ゆったりした長衣。エジプトの民族衣装。 | 乾燥した暑さから身を守る伝統的な服装。通気性が高い。 |
日干しレンガの家屋 | 厚い壁と小さな窓で日差しを遮り、室内を涼しく保つ建築。 | 高温乾燥の気候に対応した伝統建築。ナイル川周辺で広く見られる。 |
モスクと礼拝 | モスクでの礼拝が生活の中心で、1日5回の祈りがある。 | 国教がイスラム教であり、宗教が日常生活に深く根付いている。 |
ラマダン | イスラム教の信仰に基づく行事で、日中の飲食を控える。 | 宗教的義務であり、自己鍛錬と共同体意識を深める重要な期間。 |