なぜ雨が多いと土壌が酸性に?なぜ畑に石灰?なぜ日本はツツジが多い?
雨が多いと、土の中のアルカリ性の成分(カルシウムやマグネシウムなど)が流されてしまい、酸性に傾くから。
日本の土壌は特に酸性に傾きやすいので、石灰をまくことが多い。
雨により土壌が酸性に傾く原理
雨がたくさん降るとアルカリ性のミネラルが溶けて流れる(溶脱)
雨がたくさん降ると、水が土を通り抜けていく過程で土壌中のカルシウム・マグネシウム・カリウムなどのアルカリ性のミネラルが溶けて流されてしまう(=溶脱)。
この結果、土の中のアルカリ成分が減ることで土壌が酸性に傾く。

※熱帯雨林気候で見られるラトソルは酸性土壌。
- 亜寒帯で見られるポドゾルが強酸性な理由
ポドゾル。上部は腐植物質があるため黒っぽい。その下には溶脱された灰白色の層。さらにその下に溶けた鉄や有機物が留まった赤色の層がある。(2025.4撮影 @国立科学博物館) 雨も関係しているが、雨に加えて「針葉樹の葉(マツ・モミなど)には、有機酸が多く含まれている」ことが原因。
雨が弱酸性であることは加速要因にすぎない
大気中には二酸化炭素がたくさんあるため、雨そのものが弱い酸性(pH5.5〜6程度)であることは確か。
しかし、土のミネラル成分が溶脱する主な原因は「水(雨)がたくさん通過すること」。雨が弱酸性であることは、それを後押しする要因にすぎない。
酸性に傾きすぎた土壌には問題点がある
問題 | なぜ起こる? | 影響 |
---|---|---|
肥料が効きにくくなる | リン酸などが土の中で固定されて使えなくなる | 栄養不足になる |
有害金属の溶出 | アルミニウムやマンガンが溶けすぎる | 根を傷める、成長障害 |
微生物が働きにくい | 酸性だと分解や窒素の固定が進みにくい | 土が“元気”じゃなくなる |
根の発育が悪くなる | 酸の刺激で根の先が障害を受ける | 水や栄養の吸収が落ちる |
多くの植物は、中性〜弱酸性(pH 6〜7)の土壌で最もよく育つ。
pH | 土壌の性質 | 多くの作物への適性 |
---|---|---|
5.0以下 | 強酸性 | ✕(かなり育ちにくい) |
5.5〜6.5 | 弱酸性 | ◎(多くの野菜や穀物に最適) |
6.5〜7.0 | 中性 | ◎(作物にベストなpH帯) |
7.0以上 | アルカリ性 | △(一部の作物に適する) |
日本の土壌は酸性になりやすい
温暖湿潤気候で雨が多い日本は、土壌が酸性になりやすい。
しかも日本でよく見られる火山灰由来の黒ボク土(くろぼくど)はもともと酸性が強め。

- 黒ボク土
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黒ボク土は火山灰に由来する無機物と、植物の遺骸などからできた腐植を多く含む土壌。日本やニュージーランドなどの火山帯に広く分布している。
ふかふかで適度に柔らかく、保水性と通気性のバランスが良いという特長がある。
しかし、強い酸性であることが弱点。特に植物の三大栄養素のひとつであるリン酸は、酸性の火山灰土壌ではアルミニウムと結びついて固定されてしまい、植物に吸収されにくくなる。そのため、リン酸が不足しやすいという性質がある。
このような弱点を持つ黒ボク土のポテンシャルを活かすためには、石灰をまいて土壌を中性に近づけたり、リン酸を多めに含んだ肥料を施したりする必要がある。
高度経済成長期以降、化学肥料の普及によってリン酸を安定的に供給できるようになったことで、黒ボク土を本格的に農業用地として利用できるようになった。
だから石灰をまく!
なので、中性の土に近づけるために石灰をまいたりする。
石灰の役割 | 内容 |
---|---|
pHを上げる | 酸性土壌を中性〜弱アルカリ性に近づけることで作物が育ちやすくなる |
リン酸の吸収を助ける | 酸性が強すぎると固定されて使えないリン酸を、使える形にする |
根の成長を助ける | pHが安定することで、微生物も働きやすくなる |
気温も雨も”ほどほど”な地域(ステップ気候で、草原が多い地域)は、土壌が酸性に傾きにくく栄養分も豊富。超肥沃な土壌として羨ましがられる存在(→黒土:チェルノーゼムなど)
酸性の土壌に強い植物
ツツジ

山林の酸性土でも元気に育つ。
日本でツツジがたくさん見られるのは、雨が多くて土壌が酸性に傾きやすい日本の気候・環境と相性がバッチリだから!
ブルーベリー
酸性土(pH4.5〜5.5)を好む代表格。ブルーベリーはツツジ科。
北欧(スウェーデン・フィンランド・ノルウェーなど)の名物「ビルベリー(bilberry)」はブルーベリーの仲間。
針葉樹林が多くて寒冷でポドゾル(←強酸性の土壌)が広がっているから、ベリーの生産が盛ん…!っていうことだと思う。
稲

参考資料
肥沃な土地の条件とは? 地力アップを叶える効果的な土づくりの方法