「カルロス・ゴーンの件で話題になった日本の刑事手続きや人質司法について知りたい」
っていう人向けに、日本の刑事手続き(逮捕されてからの流れ)について説明をします!
この記事の信頼性
僕(もちお)は、元社会科教員。
僕(もちお)は、勉強が得意。
- 小学生の時は偏差値40台だったけど、「学年で10位以内に入ったら携帯電話を買ってあげる」という親の甘い言葉で火がつき、猛勉強。その結果、
- 中学生では、塾に行かずに学年1位
- 高校では、学年で1ケタの順位をキープ
- 東大模試で文科三類1位
- 東大に合格
日本の刑事手続きの流れ
日本の刑事手続きの流れをざっくりまとめると、こんな感じです。
いきなりこれを見てもわかりづらいと思うので、「逮捕されてからの流れ」に限定して説明します。
逮捕されてからの流れ【人質司法?】
①逮捕
まず、何か事件が起きた時、警察と検察は罪を犯した疑いのある人(被疑者)を探して、証拠を集めます。
で、場合によっては、被疑者を逮捕(身柄を拘束)します。
警察が逮捕した場合と、検察が逮捕した場合とで、このあとの流れが少し変わります。
まず、検察が逮捕した場合は、そのまま最大48時間、取り調べなどをします。
(※身柄を確保する必要がないと判断できる時は、釈放しなければいけない)
警察が逮捕した場合は、そのまま最大48時間、取り調べなどをします。
で、そこで釈放しない場合は、48時間以内に検察に被疑者を送ります。
これを「送検」と言います(正確には「送致」)。
ニュースでよく聞く「書類送検」の「送検」も同じ意味ですよ。
そして、被疑者を送られた検察は、最大24時間、取り調べなどをします。
(※身柄を確保する必要がないと判断できる時は、釈放しなければいけない)
②被疑者勾留
ここまでで最大48時間〜72時間経っていますが、さらに被疑者の身柄を拘束する必要があると判断できる場合は、検察は裁判官に被疑者の勾留を請求します。(被疑者の勾留なので「被疑者勾留」と言います)
(刑事訴訟法205条1項・2項、刑事訴訟法204条1項・216条)
引き続き身柄を拘束しますよってことです。
勾留の期間は、勾留請求の日から10日間です。(刑事訴訟法208条1項)
ただ、検察官は勾留延長を裁判官に請求することができます。
認められた場合は、さらに10日間勾留することができます。(刑事訴訟法208条2項前段)
ここまでで最大23日間です。
逮捕されると、最大23日間も身柄を拘束される可能性があるっていうことです。
(※身柄を確保する必要がないと判断できる時は、釈放しなければいけない)
③起訴
そして、検察官は、被疑者が罪を犯した疑いが確実で刑罰を科した方が良いと判断できたら、裁判所に訴えます。
これを「起訴」と言います。
被疑者が罪を犯した疑いが不十分である場合は、「不起訴」となります。
起訴されたら、被疑者は「被告人」と呼ばれることになります。
④被告人勾留
被疑者がもともと勾留されていた場合は、起訴されたらそのまま「被告人勾留」されることになります。(刑事訴訟法208条1項、60条2項)
期間は2ヶ月です。
被告人勾留になると、身柄を拘束される場所は、留置場という警察内の施設から拘置所という法務省の施設に移動することになります。
もし勾留されていない被疑者が起訴された場合は、裁判所が「被告人勾留」をするかどうかを判断します。(刑事訴訟法60条1項)
ただ、勾留されていない被疑者が起訴された後に「被告人勾留」といって身柄を拘束される例はほとんどないらしいです。
⑤公判・判決
起訴後は、公判が行われます。
裁判所・検察官・被告人(&弁護人)が法廷に出席して審理をするということ。
いわゆる「裁判」です。
で、裁判官は判決を下します。
ここで有罪か無罪かが決まることになります。
判決に納得できない場合は、控訴・上告をして再度裁判を受けることができます。
裁判は、最大で第三審まで(三審制)。
ちなみに、起訴後の勾留中(被告人勾留中)、条件つきで「保釈」してもらうこともできます。
日本の刑事手続きのポイント
逮捕とは?
逮捕とは、身柄を拘束することです。
逃亡・証拠隠滅の防止が目的です。
だから、「悪いことをしたから逮捕」っていうわけではありません。(ここ重要)
「逮捕=有罪」って思ってしまっている人が本当に多くて、ハッキリ言ってヤバイのですが。
このブログ記事を読んでくださった方は、「逮捕=悪いことをした=有罪」だなんて思わないようにしてほしいです。
裁判所の判決までは、たとえ被疑者(罪を犯した疑いのある人)でも無罪を推定されています。(推定無罪の原則)
「この人は無罪だろうけど、罪を犯した疑いがあるから捜査するよ」ってことです。
あくまで、有罪かどうかを決めるのは裁判所です。
裁判所の判決まで、「犯人」とか言ったらマズイです。
ちなみに、逮捕には3種類あります。
①通常逮捕 | 検察官・警察が、裁判官があらかじめ発した逮捕状(令状)に基づいて逮捕する。 |
---|---|
②緊急逮捕 | 検察官・警察が、凶悪犯罪の被疑者を急遽逮捕する(令状は事後でOK)。 |
③現行犯逮捕 | 通常人・検察官・警察が、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者」を逮捕する。 |
勾留とは?
勾留とは、被疑者・被告人を刑事施設に収容することです。
勾留には条件があります。
- 住居不定
- 罪証隠滅のおそれ
- 逃亡のおそれ
ちなみに、逮捕から被疑者勾留までは最大2〜3日。
でも被疑者勾留をされると、さらに最大20日間拘束されます。
つまり、逮捕されると、最大23日間拘束されることになるのです。
釈放とは
身柄を拘束する必要のない時、つまり、逃亡・証拠隠滅のおそれがない時は、釈放しなければいけません。
釈放とは、被疑者の身柄拘束を解くことです。
保釈とは?
保釈とは、拘留されている被告人の身柄拘束を解くことです。
ただ、住居が限定されたり、保証金を納付させられたりと、条件があります。
カルロス・ゴーンさんも、いろんな条件のもと、保釈されていました。
ちなみに、保釈には3種類あります。
①権利保釈 | 弁護人・配偶者・親族などの保釈請求賢者が請求して、保釈される。(裁判所は凶悪犯罪の場合や証拠隠滅のおそれがある場合など、請求を却下することもできる) |
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②裁量保釈 | 裁判所の裁量で保釈される。 |
③義務的保釈 | 勾留による拘禁が不当に長くなった時に保釈される。 |
身柄拘束と社会復帰のバランス
身柄を拘束することは、証拠隠滅の防止や逃亡の防止に有効です。
ただ、被疑者・被告人の社会復帰を阻害することにもつながります。
だって、逮捕されたら最大23日間、身柄を拘束されるわけなので。(起訴後に被告人勾留されると、もっと長くなる)
あくまで裁判所の判決が出るまでは「推定無罪」ですので、被疑者・被告人だからといって身柄拘束をし続けるのはどうなのか?ということが問題なのです。
人質司法とは?
そして、日本の刑事手続きでは「人質司法」ということが問題視されています。
これは、被疑者・被告人が罪を自白する場合に比べて、罪を否認した場合に身柄拘束(勾留)が長くなるという問題のこと。
罪を自白すると釈放・保釈される可能性が高くなる一方で、罪を否認すると釈放・保釈されない傾向にあるようなのです。
「罪を認めるまでは身柄の拘束を解かないぞ」っていう感じがしますよね。
だから「人質司法」だと批判されているわけです。
日本の刑事手続きのまとめ
この図の通りです。
実際には、逮捕されないで起訴に至る場合もありますし、逮捕後に釈放されてから起訴に至る場合もあります。
こちらの図を見るとわかりやすいかなと思います。
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