【日本史】天皇機関説とは?わかりやすく解説:美濃部達吉は何がしたかった?

教科書に書いてある「天皇機関説が、政党内閣制に理論的な根拠を与えた」とは?
天皇主権説とは?
まず、天皇機関説と対立する考え方である天皇主権説から説明します。
天皇主権説=「主権は神聖不可侵の天皇にあり、天皇の権力行使に制限はない」という考え方
天皇主権説では、「天皇は神が人間の形をして現れたもの。その神である天皇が主権を持っている。」と考えます。主権っていうのは、国や国のなかにいる人々をおさめる権利のことです。
つまり、天皇が全てをにぎっているということ。そして、天皇は神であるから、その天皇の権力行使に制限はない、と考えます。国家の外に神である天皇がいて、その天皇(神)が国家を統治するってことです。
これが天皇主権説です。
天皇機関説とは?
一方、天皇機関説では、
- 「天皇が主権を持っている」のではなく、主権は国家にある
- 「天皇は神が人間の形をして現れたもの」ではなく、国家の最高機関だ
と考えます。天皇が全てをにぎっているわけではなくて、天皇はあくまで国家の中の一つの機関(組織のようなもの)だ、と。
天皇機関説=「主権は国家にあり、天皇は国家の最高機関として憲法にしたがって権力行使する」という考え方
天皇はその国家にある機関の最高の立場ではあるけど、天皇がすべて行うのではない。天皇の権力には限界がある!あくまで主権は国家にあって、たくさんある国家機関が協力して統治するぞ、ってことです。
※国家機関には「内閣」や「帝国議会」などがあります。

天皇主権説を主張する人たちと、天皇機関説を主張する人たちで対立があったのですが、最終的に天皇機関説が世の中に広まるようになりました。
ちなみに天皇機関説は、東京帝国大学の憲法学者である美濃部達吉さんが考えたとされる説(大日本国帝国憲法:明治憲法の解釈)です。
美濃部達吉さんの顔を見ると、頭の中でなぜかスターウォーズのオープニング音楽が流れ出す。なんでだろう…
・・・では、「天皇機関説が政党内閣制に理論的な根拠を与えた」とはどういう意味なのでしょうか?
「天皇機関説が政党内閣制に理論的な根拠を与えた」の意味
まず「政党内閣とは何か?」についての理解が必要です。
政党内閣とは?
政党内閣=多くの大臣を、衆議院の多数派政党の者がしめる内閣
※内閣=内閣総理大臣(首相) + その他の国務大臣
つまり、衆議院の多数派政党(議席を多く持っている政党)の人が大臣を務めている内閣のことを政党内閣と言います。
現代の日本は政党内閣です。衆議院の多数派政党は自民党で、大臣はほとんどが自民党の人ですよね。なので歴史の勉強をしていると、逆に政党内閣じゃない内閣のイメージがつかみにくくて、結構混乱しがち。

政党内閣じゃない内閣とは?

政党内閣じゃない内閣は、例えば明治時代の最初の方に登場した藩閥政府です(「藩閥内閣」って言うより、「藩閥政府」の方が一般的)。
藩閥政府=多くの大臣を、薩長土肥出身の有力者がしめる内閣
現代では選挙で勝った政党(自民党)の人が大臣を務めるのがあたりまえですが、昔はそうじゃなかったんです。
大日本帝国憲法のもとでは、選挙で勝った政党から大臣を選ばなければいけないわけではなかったので、このような藩閥政府ってのがあり得た。国を改革する時には、国民の意思を聞くよりも、少数の人で国を引っ張っていったほうが良い、という考え方があったからです。
ですが、だんだんと「多くの大臣を、衆議院の多数派政党の者がしめる」政党内閣が成立するようになります。大正デモクラシーの頃です。

で、教科書ではその大正デモクラシーの部分かその直前の部分で、美濃部達吉の天皇機関説の話が出てきます。
では一体、「天皇機関説が政党内閣制に理論的な根拠を与えた」とはどういう意味なのか?天皇機関説と政党内閣の関係とは???
天皇機関説と政党内閣の関係
天皇機関説の考え方をすると、内閣(大臣たち)が、ある程度統一の考え方をもっておく必要が生じる
→その統一した考え方をもつようにする仕組みが政党内閣制
=だから、天皇機関説は政党内閣制をおし進める考え方だ!
どういうことかというと・・・
天皇機関説の考えでいくと、大臣たちの意思統一が必要
天皇機関説の考えでいくと、天皇が神として内閣などにしばられずに権力を行使するわけではありません。天皇は憲法にしたがいます。
その憲法には、「天皇は、内閣(大臣たち)の助言にもとづいて権力を行使する」と書かれています。
内閣は全員まとまって助言をするわけではなく、大臣一人一人が天皇に助言します。(「国務大臣の単独輔弼」(たんどくほひつ)

そんな時に、国家の最高機関の天皇に対して、大臣がそれぞれバラバラな(統一性のない)助言をしたら天皇は困りますよね。
例えば、
- A大臣「次はスプラッシュマウンテンに乗るべきだ!」
- B大臣「次はイッツ・ア・スモールワールドに乗るべきだ!」
- C大臣「次はポップコーンを食べるべきだ!」
って言われたら、天皇はどうすればいいかわからなくなります。絶叫系アトラクションにすればいいのか、ファミリー向けのアトラクションにすればいいのか、それとも食事をとればいいのか、わけわかんないですよね。
こうなったら困るので、天皇機関説という考え方をするのであれば、内閣(大臣たち)が、ある程度統一の考え方をもっておく必要があります。
じゃあ、どうやったら内閣(大臣たち)が、ある程度統一の考え方をもつようになるかな・・・・・・「そうか、政党内閣だ!」となったわけです。
「大臣たちの意思統一」を実現するための政党内閣
政党って、そもそも「共通の政治的目的をもつ人によってつくられる組織」ですよね。例えば自民党の人達は、ある程度同じような考えを持っているからこそ「自民党」に所属しているわけです。
なので、選挙で多数の議席を勝ち取った政党に所属する人から大臣を出せば、その時点で大臣たち(内閣)は統一した考え方を持っていることになります。
そうすると、内閣(大臣たち)がある程度統一の考え方のもとで天皇に統一した助言をすることができるようになり、国家の最高機関である天皇は意思決定しやすくなります。

もちろん、考え方の多少のズレはあるとは思います。例えば
- A大臣は「次はスプラッシュマウンテンに乗るべきだ!」
- B大臣は「次はビッグサンダーマウンテンに乗るべきだ!」
- C大臣は「次はスペースマウンテンに乗るべきだ!」
のように。でも、これくらいのズレがあったとしても、全体としては「絶叫系アトラクションに乗る」という考え方で統一されていますので、天皇は意思決定しやすいですよね。
これが「天皇機関説が政党内閣制に理論的な根拠を与えた」の意味です。
美濃部達吉は「内閣の連帯性」を強めようとした
藩閥政府だったら「ともに明治維新を成し遂げて国家を改革した」という連帯性が最初からあったはず。
でも、1900年頃になると、明治維新を成し遂げた人たちもみんなどんどん死んでしまいました。だから、内閣の連帯性を強める新たな仕組みが必要だったのでしょう。
まとめ
天皇機関説=「主権は国家にあり、天皇は国家の最高機関として憲法にしたがって権力行使する」という考え方
政党内閣=多くの大臣を、衆議院の多数派政党の者がしめる内閣
※内閣=内閣総理大臣(首相) + その他の国務大臣
天皇機関説の考え方をすると、内閣(大臣たち)が、ある程度統一の考え方をもっておく必要が生じる
→その統一した考え方をもつようにする仕組みが政党内閣制
=だから、天皇機関説は政党内閣制をおし進める考え方だ!












