エルニーニョ現象・ラニーニャ現象をわかりやすく
エルニーニョ現象とは?
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の中央から東側にかけての海面水温が、平年より高くなる状態が数ヶ月間続く現象。
エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の原理
1. 通常時の原理:貿易風と海水の流れ
赤道付近の海域には、東から西へと吹く貿易風が存在します。この風の影響で、赤道付近の海面の水は常に西側(インドネシア方面)へと流されていきます。これが通常の状況です。
海面の水が西に流れていくと、水が西側に溜まる結果、東側、特に南アメリカ大陸沿岸付近では水位が下がります。この水量の不足を補うため、海の深いところから冷たい海水が海面に上がってきます(=湧昇してきます)。そのため、通常、南アメリカ沿岸の海水温は低く保たれています。
関連:【地理】気候をわかりやすく①:なぜ地球上にはいろんな気候が見られるのか?【大気の循環】
2. エルニーニョ現象とラニーニャ現象の発生
エルニーニョ現象とラニーニャ現象は、この貿易風の強弱によって海面の水の流れが変化し、南アメリカ沿岸の海水温に異常が起こる現象です。
| 現象名 | 貿易風の状態 | 南米沿岸の海面水温 | 原理 |
| エルニーニョ現象 | 通常より弱い | 通常より高くなる | 西への水の流れが弱まり、湧昇が抑えられるため。 |
| ラニーニャ現象 | 通常より強い | 通常より低くなる | 西側への水の偏りが強まり、冷たい水の湧昇が激しくなるため。 |
エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の影響
これらの現象の最も重要な点は、南アメリカ付近の海水温の異常が、地球上の広範囲にわたって異常気象を連鎖的に引き起こすことです。
このように、ある地域の気象変動が遠く離れた地域の気象と関連し合う相関関係をテレコネクション(遠隔相関)と呼びます。この言葉は必ずしも覚える必要はないと思いますが。
具体的な影響として、南米付近で海水温が低くなるラニーニャ現象が発生すると、地球の反対側にあたる西側のインドネシア付近で、豪雨や洪水が起こりやすくなると言われています。インドネシア付近の海面水温が特に高くなり、上昇気流が生じやすくなるからです。
実際、2025年11月にインドネシアで発生した豪雨による大規模な洪水被害も、このラニーニャ現象が一因である可能性が指摘されています。ある地域の海の異変が、遠隔地で甚大な自然災害を引き起こすというメカニズムを理解しておくことが重要です!
エルニーニョ現象とラニーニャ現象はかなりの頻度で起きている?だとしたら、これって「異常気象」って言えるのかな・・・?
エルニーニョ現象とラニーニャ現象は、通常3~7年ごとの周期で発生している(平均すると約5年ごと)。
これらは合わせて「エルニーニョ・南方振動(ENSO)」と呼ばれる大規模な気候変動システムの一部であり、数年ごとに繰り返す「通常の変動の範囲内」の現象と言える。
しかし、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象は、地球全体の気圧配置や偏西風の蛇行に影響を与え、結果として世界各地や日本で猛暑・冷夏、集中豪雨・干ばつ、暖冬・厳冬のような「異常な天候」を引き起こす。
参考:東南アジアで記録的豪雨被害 「ラニーニャ」など同時発生が原因か
エルニーニョ現象・ラニーニャ現象自体を制御するのは現在の技術でも不可能?
エルニーニョ現象やラニーニャ現象といった大規模な海洋と大気の相互作用システムを、現在の技術で意図的に制御することは不可能。
しかし、観測技術の向上により、現象の発生を数か月前から予測する精度は向上している。また、予測情報に基づき、農業計画の見直し、災害への早期警戒といった適応策を講じることで、被害の軽減を図っている。
・・・なるほど。人類が付き合っていかなければいけない問題なのね。
でも日本のような先進国(って今も言えるのかは謎だが)は「適応策」を講じることでなんとかなっているかもしれないけれど、エルニーニョ現象の影響を強く受ける国もありそうだな。
エルニーニョ現象の影響を強く受けるのはどういう国?
特に大きな影響を受けるのは、経済を一次産業(農業や漁業)に大きく依存している国々。
ペルーやエクアドルなどの南アメリカ大陸の太平洋岸の国々では、エルニーニョ現象時の影響を強く受ける。海水温の上昇により、魚が深海や冷水域へ移動するため、主要産業である漁業が大打撃を受ける。また、記録的な豪雨による洪水や土砂災害が頻発する。
エチオピア、ケニア、ジンバブエなどのアフリカ東部・南部の国々では、エルニーニョ現象時に豪雨や洪水に見舞われることが多い。ラニーニャ現象時には深刻な干ばつに見舞われることが多く、農作物の壊滅的な被害や飢餓のリスクが高まる。




