世界

西アジアの石油産業の「光」と「闇」

モチオカ(望岡 慶)

西アジアの石油産業。

石油は「オイルマネー」という形で莫大な富をもたらしたが、同時に、深刻な問題も引き起こしている。

ドバイのブルジュ・ハリファから。(2025.2撮影)
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石油がもたらした「光」

国民生活の向上

サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの主要な産油国は、石油収入を国民に還元する政策を積極的に行っている。これにより、国民は次のような恩恵を受けている。

教育・医療の無償化石油収入を基に、国民は質の高い教育や医療サービスを無料で受けることができる。
手厚い社会保障住宅補助金や低利の融資制度、公共サービスの提供など、国民の生活を保障する仕組みが整っている。
高い雇用率政府や国営企業が国民を積極的に雇用することで、失業率を低く保っている。

こうした政策により、国民の間での貧富の差は比較的小さく、貧困に陥るケースは少ないとされている。

ドバイモール(2025.2撮影)

未来への投資

また、潤沢なオイルマネーは、砂漠に高層ビルが立ち並ぶ未来都市ドバイのような、大規模なインフラ開発も可能にした。

ドバイにて(2025.2撮影)
エキスポ・シティ・ドバイ(2025.2撮影)
ドバイフレームにて(2025.2撮影)

石油がもたらした「闇」

しかし、石油に依存する経済には、多くの脆弱性が潜んでいる。

経済の不安定性

多くの産油国は、国家予算の大半を石油収入に頼っている。石油の価格は国際的な需要や地政学的リスクによって大きく変動するため、国の財政もそれに左右されがち。

例えば、原油価格が急落すれば、政府は財政赤字に陥り、国民への社会保障サービスを削減せざるを得なくなる。

独裁体制と民主化の遅れ

石油収入は、政府が国民に税金を課すことなく財政を維持できるという状況を生み出した。

これにより、政府は国民の支持を得るために、社会保障や雇用を保障する一方で、強権的な体制を維持することが容易になった。

石油という富をめぐって、権力争いや紛争が引き起こされるケースもある。

エティハド博物館にて(2025.2撮影)

外国人労働者の人権問題

西アジアの都市開発やサービス業は、安価な外国人労働者によって支えられている。特に、南アジア(インド、バングラデシュ、パキスタンなど)からの出稼ぎ労働者たちである。

※UAEやカタールでは、人口の7割以上を外国人労働者が占める。

ドバイにて(2025.2撮影)

彼らは、建設現場やサービス業で低賃金・長時間労働を強いられることが多く、劣悪な住環境で生活しているケースが少なくない。

パスポートを取り上げられたり、自由な転職を制限されるなど、基本的な人権が守られない問題もたびたび指摘されている。

若者の意欲低下

西アジアの産油国では、潤沢な石油収入がもたらす手厚い社会保障制度が、若者の就労意欲の低下につながっているという問題が指摘されている。

産油国では、政府が国民を公務員として雇用したり、手厚い補助金を支給したりすることで、国民生活を保障している。多くの若者が高給で安定した公務員を目指す一方で、民間の仕事や自営業といったリスクを伴う職種に挑戦する意欲が低くなっている。

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