人間の活動

なぜ発展途上国は工業化を目指すのか?

モチオカ(望岡 慶)

発展途上国と言われる国々は工業化を目指してきた。

農業や鉱業ではなく、なぜ「工業」に力を入れようとするのか?

モチオカ
モチオカ

モチオカです。Twitterやってます!【お問い合わせ半生振り返りこのブログについて

工業の方が労働生産性が高い

一次産品を生産する農林水産業や鉱業に比べて、工業の方が一般に労働生産性が高いから。

労働生産性は「1人の人が、どれくらいの価値(≒利益)を生み出せるか」を示す。この値が高ければ、同じ人数・同じ時間でも、より多くの富を生み出せるということになる。

①機械化・自動化で、効率よく大量生産できる

工業では、機械やロボットを使った自動化ラインが一般的。そのため、1人で何百、何千という製品を扱えるようになる。

たとえば、1人の工員が1日で1000個の部品を作れる一方、農業では1人が収穫できる量には限界がある。

サントリー天然水のビール工場。(2022.11撮影)

②原材料に付け加えられる価値(付加価値)が大きい

スマホや車、薬などの工業製品は、原材料よりもはるかに高い価格で売れる。つまり、工業は「モノに価値を加える=儲けが大きい」産業である。

一方で、農産物や魚などは価格が不安定かつ安く抑えられがちで、価値の上乗せが難しい。

スズキ歴史館(2025.2撮影)

③安定した環境で、計画的に作業できる

工業は、屋内の工場で行われるため、天候や季節、災害などの自然条件に左右されにくく、計画通りに作業を進めやすいという特徴がある。

一方、農業や漁業などの第一次産業では、天気や気温、病害虫など予測しにくい要因が多く、毎日の作業効率が大きく変動することがある。

ニッカウヰスキー余市蒸溜所(2022.12撮影)

工業化は「国全体の富」を増やす手段

工業が発展すると、国全体として生み出せる富の総量が増える。つまり「国がより多く稼げるようになる」ということ

そしてその成果が社会全体に広がっていけば、国民一人ひとりが手にできる富も増え、生活が豊かになっていくことになる。

だからこそ、発展途上国は「工業化」を経済発展の柱として積極的に進めようとする。

ホーチミン(2024.11撮影)

でも・・・

労働集約的で低付加価値な産業、例えば衣服の縫製機械の組み立ては、国の富を増やすことにそこまで貢献しないのでは?

→繊維や組み立てといった産業は、工業化の第一段階としての足がかり。

  • 比較的低コストで参入できる
  • 多くの雇用を生み出せる(都市の非農業雇用を創出)
  • 海外企業が進出しやすい(サプライチェーンに組み込まれる)
シンガポール国立博物館(2022.9撮影)

低スキルな産業であっても、そこで「工業」の経験を積むことができる。

  • 工場運営や生産管理のノウハウ
  • 労働者の訓練
  • インフラの整備
  • 貿易・物流の経験

その結果、次の段階(電機、輸送機械、高機能素材など)へとステップアップ”する土台ができる。

工業化を成功させるには何が必要?国が豊かになるために必要な条件とは

記事URLをコピーしました