24時間テレビにはどんな問題がある?
マスメディアでの障害者の扱い方について思うところがあるので、まとめておきたいと思います。
言いたいことを分かりやすく伝えるために、便宜的に人間を3つのグループに分類します。
Aグループ | 良い人・すごい人 |
Bグループ | 普通の人 |
Cグループ | 悪い人・やばい人 |
この3つのグループのうち、マスメディア(テレビ・新聞など)でよく取り上げられるのはどのグループか?
Bグループの人(いわゆる普通の人)は珍しい存在ではないため、情報価値は低いです。
なので、Bグループの人がマスメディアで取り上げられることはほとんどありません。せいぜい街頭インタビューなど「普通の人」を取材する必要がある時に出てくるくらいでしょう。
一方、Aグループの人とCグループの人は大多数を占めるBグループの人からしたら「レアな存在」です。
よって、基本的には情報価値が高いAグループ・Cグループの人がマスメディアで取り上げられることになります。
テレビで言うと、
- Aグループの人→ドキュメンタリー番組やバラエティ番組
- Cグループの人→ニュース番組
という感じ。
★★★
ところが、ここに「健常者」「障害者」という分類を入れると話が変わってきます。
いわゆる健常者の場合、Aグループの人とCグループの人がマスメディアで取り上げられやすいというのはさっき言った通りなのですが、
障害者の場合、Cグループの人の露出が極端に減ります。
テレビ番組で「犯罪を犯した障害者」が特集されているって見たことあります?ないでしょ。
「犯罪を犯した障害者」をマスメディアで取り上げるのはタブーだと見なされているっぽいのです。
一方、「Aグループ×障害者」の露出は減りません。むしろ積極的にマスメディアで取り上げられている感じがします。日テレの24時間テレビなんてのはその最たる例。
つまり、僕たちがマスメディアを通して目にする「障害者」はほとんどがAグループの人だということです。
特に意識せず普通に生活をしている限り、Bグループ・Cグループの障害者の方々を見る機会はほとんどないわけです。
健常者だったらそれでもいいと思います。
普通に生活をしているだけでたくさんの「Bグループ×健常者」と接することになるので、「世の中にはいろんな人がいる」ことを自然と学んでいけるからです。
ちょっとこの人ヤバいな…性格悪いな…っていう人を何人も見るうちに、「なかには犯罪を犯す人(Cグループの人)もいるだろうな」ということも想像がつくはずです。
でも障害者の場合はそうはいきません。
(グレーな人はたくさんいるとはいえ、)障害者手帳を持っている人の数が少ない以上、
普通に生活をしているだけではいろんな障害者の方と接することはできない
からです。
それなのにマスメディアが「Aグループ×障害者」ばかり取り上げてしまうと、、、
頭の中で勝手に
「障害者の人たちって良い人だよね」
「障害者の人たちって一生懸命ですばらしいよね」
っていう図式を作る人が増えてしまうと思います。
っていうか僕がそうでした。24時間テレビの企画を繰り返し見ることで、知らず知らずのうちに「障害者は良い人」「障害者は一生懸命なにかに向けて挑戦している」って信じてしまっていたのです。アホですよね。
そしてもっとマズいのは、「障害者が犯罪を犯すなんて許せない!」って思ったりしてしまうパターン。
犯罪までいかなくても、「ハンディキャップを持っていて周りの人に迷惑をかけているんだから、せめてプラスのことしろよ」って思ったり。
何か周りに迷惑をかけることをやったり、ムカつくことをやったり言ったりしたら、「調子乗んなよ」ってボコボコに叩きにいったり。
特に「障害を持っている良い人」に対して障害を持っている人が「死ね」とか言ったりすると、それはもう大変なことになる。
(意識のあるなしにかかわらず)障害者の方をこのような厳しい目で見ている人は、実は結構いるんじゃないかなって思います。「『世の中に迷惑をかけていること』を普段許してやってるんだから、悪いことすんなよ、良いことしろよ」的なやばい思考の持ち主。
乙武さんを嫌う人が多いのも、「障害者のくせに不倫したり性格が悪かったりするなんてありえない!大人しくしとけよ!」って思ってるからでしょ?
僕たちは無意識のうちに、障害者の方々(というか、何らかのハンディを負った人)に謙虚さや健気さ、ひたむきに努力する姿を求めている。そういう方々に「良い人・すごい人」であることを求める。
大きな病気・大きな怪我をした子供が病院で「良い子」を演じる、みたいなやつとか。あれほんとつらい。いくらでも迷惑かけていいのに。何らかのハンディを負った人は「さらなる迷惑」をかけちゃいけません、って僕たちは思っている。
そう僕たちに刷り込ませているのが、頑張っている障害者の人ばかりを取り上げる24時間テレビだと思います。別に24時間テレビだけが悪い!とは言わないけど。
24時間テレビは障害者の人に「頑張らなきゃダメ」って思わせる番組。障害者の人を苦しませる番組。だから嫌い。
普通の人と同じで、頑張らない人だって性格の悪い人だってたくさんいるって。他の人に迷惑かけていいんだって。
障害のあるなしにかかわらず、他人に迷惑をかけて生きるのが人間でしょ。
こうして生まれるのが「いないことにされている障害者」です。
「犯罪を犯した障害者」をマスメディアで取り上げるのはタブーになり、僕たちの中で「犯罪を犯す障害者」はいないことになる。
本当はたくさんいるのに。
そしてそれは社会制度がマジョリティである健常者向けに設計されているからこそ…だったりする(=社会制度が「犯罪を犯す障害者」を生み出している側面もある)のに。
僕はマスメディアがもっといろんな障害者の人を取り上げるべきだと思っています。
っていうか、24時間テレビの中で同時に「犯罪を犯した障害者」の特集もしなよ!って思います。
「いないことにされている障害者」の実態についてくわしく知りたい方は、ぜひ『累犯障害者』という本を手にとってみてください。のほほんと生きていた僕にとって、ものすごく衝撃的な内容ばかりでした。