【解説&掘り下げ】2023共通テスト地理B 大問5 地域調査(利根川下流域)
共通テスト地理(※)で9割超え、理想は満点!を目指していた僕が、実際にどんなふうに問題に取り組んでいたのかを紹介します。(※僕が受験生だった時はセンター試験でした)
70〜80点台で伸び悩んでいる人にとって、きっと参考になると思います!
大きく2つの場面に分けて解説します。
1. 問題を解いている最中の思考
- ① 時間を意識しながら、どうやって答えを特定していくか
- ② 自信がない時・迷った時に、どうやって確証を得るか
2. 解き終わった後の復習(事後学習)
- ③ 教科書知識の確認と、そこからの深掘り・整理
問題
問題は東進ハイスクールさん等のページを参照してください…!
解答番号26(利根川流域の地形)
問題を解いている最中の思考
Aを通る河川は利根川の本流に合流していない。一方、BとCは合流している。よって、アは⑤か⑥。
「取手から佐原までの区間における河川の勾配は、1万分の1程度」というのは、10,000kmの長さに対して1km(=1,000m)の標高差が生じるということ。
100kmで0.01km(=10m)。取手から佐原までは約60kmなので、標高差は6mくらい。選択肢を見ると、4mの方が近い。
よって答えは⑤。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
「利根川下流域は、かつて広大な潟湖になっていた」とは?
現在の利根川の下流、特に千葉県の佐原(現在の香取市)から霞ヶ浦・北浦にかけての一帯は、かつて「香取海(かとりのうみ)」と呼ばれる広大な内湾・潟湖だった。
江戸時代になると、洪水対策と江戸への物資輸送路の確保を目的に、もともと東京湾に注いでいた利根川の流れを東へ向け、香取海を経て太平洋に注ぐように付け替える工事が行われた。(利根川東遷事業)
付け替えられた利根川から流れ込んだ大量の土砂が、香取海の埋め立てを加速させ、これにより広大な潟湖であった香取海は分断・縮小し、現在の霞ヶ浦や印旛沼といった個別の湖沼へと変化していった。
だから利根川下流域周辺は平坦な地形が多いのか…!
参考:利根川の紹介
参考:7.沼を干す:関東農政局
そういえば霞ヶ浦ってなんで「湖」じゃなくて「浦」って言うの?
「浦」は海が陸地に入り込んだ場所、つまり「湾」や「入り江」を指す言葉。
霞ヶ浦は、かつて広大な香取海の一部だった。そのため、海の名残を持つ水域として「浦」と呼ばれていた。しかし治水工事や河川の流れの変化により、水域が徐々に海から切り離され、淡水化が進んだ。
現在、霞ヶ浦は地理的には「湖」に分類されるが、かつて海とつながっていた歴史的な名残と、地域に定着した伝統的な呼称として、現在も「浦」という名称が使われ続けている。
解答番号27(利根川下流域の土地利用)
問題を解いている最中の思考
Eは平坦な地形で湖(水源)がある。Fは平坦な地形だが、市役所があって鉄道が走っている。Eは農地で、Fは市街地かな。GとHはともに平坦な地域もあるが、起伏のある地形も多い地域。Gの方が市役所に近い。Hは市役所からかなり遠いので住宅は少ないだろう。
平坦な地形は田や住宅地として利用しやすい。起伏のある地形は稲作が難しいので、畑・果樹園として利用しやすい。
ということを踏まえると、最も建物用地の割合が大きい②は、平坦な地形で、近くに市役所があり、鉄道も走っているFだろう。
最も田の割合が大きい①はEだろう。
③と④の違いは、田の割合、畑・果樹園などの割合、森林の割合。ただ、GとHはどちらも平坦な地域もありつつ起伏のある地形も多い。田と畑・果樹園の割合が異なる傾向を示すのはなぜ・・・?わからん。
Gの方が市役所に近く、都市圏に近いから、近郊農業ってことで野菜を栽培する畑・果樹園が多いってことかな?・・・この解釈が最も妥当だと思う。それ以外の解釈の仕方が思いつかない。ってことで、③はHで、④はG。
問題の要求は「Fに該当するもの」なので、GとHの判定はできていなくてもOK。優しい!
ということで答えは②。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
利根川下流域の地形と土地利用の特徴は?
利根川の北側(主に茨城県側)には、広大な低地と平坦な沖積平野が広がっている。かつて「香取海(かとりのうみ)」と呼ばれた広大な内湾・潟湖が、土砂の堆積や干拓によって陸地化された地域だからである。
標高が低く平坦な地形であるため、稲作が盛ん。
利根川の南側(千葉県側)は、下総台地と呼ばれる洪積台地が広がっている。
水はけが良い反面、水利が悪いため、古くから畑作(ネギ、サツマイモ、ラッカセイなど)や森林、近年では都市開発(千葉ニュータウンなど)や空港(成田空港)の立地に適した土地として利用されてきた。
首都圏という巨大な消費地に近い立地を生かし、施設園芸による高付加価値な野菜栽培も行われている。



解答番号28(地形図と利根川流域の交通)
問題を解いている最中の思考
1931年の地図を見ると、aは市街地の端、bは市街地の中心地。よってJはb。
渡船の数は減り、橋の数は増えたはず。また橋は満遍なく架かっていないと不便。一定の間隔で白丸が並んでいるシが1981年の橋の分布じゃないかな。
「1932年に橋が架かっていた地点は、川幅が比較的狭い所に限られていた」という文から、川幅が広いであろう利根川本流で橋を架けるのは困難で、その他の河川にしか架けられなかったということかな。
だとすると、その他の河川にしか白丸がないスが1932年の橋の分布だろう。残ったサが1981年の渡船の分布。
ということで答えは⑤。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
特になし
解答番号29(洪水対策)
問題を解いている最中の思考
Qはfかな。大きな河川の下流域にダムは建設しないだろう。ダムを作るなら上中流域。また、河川の下流域は傾斜と流れが緩やかになって、土砂は流出しにくい。わざわざ土砂の流出を防ぐためにダムを建設するというのはよくわからない。河川の下流域は支流の合流により流量が多くなりやすいので、決壊を防ぐために堤防を補強する必要に迫られることはあるだろう。
難しいのがP。わからん。でもこういうぱっと見よくわからない問題は、必ず問題文に手掛かりがある!
水害の年表を見ると、1906年と1910年は堤防の決壊が起き、1938年と1941年は浸水被害が起きている。堤防の補強により堤防決壊は起きなくなったが、その結果、大量の水が流れてくることになり、今度は排水が不十分で浸水が起きやすくなったってことかな。だから会話文で「1940年以降に排水ポンプの設置が進んだ」って書いてあるんだろう。
1910年と1938年の間に、堤防の決壊対策が行われた。会話文に「利根川の支流への逆流などにより、水害が発生していました。このような被害を防ぐために」と書かれている。だから1921年のPは堤防の決壊対策の話だろう。しかも「利根川の支流への逆流などにより」発生した堤防決壊だと思われる。
地図のタとチを見ると、利根川の支流への逆流が起きそうなのはチ。だからPはチかな。利根川の流量が増えた時、本来は流れ込むはずのないチの方に逆流し、そこで堤防の決壊が起きた。その結果、十六島で水害が起きた。・・・ということだと思う。
タの東には、田んぼへ水を引くための水路か何かが建設されている。タの位置には水を引くための設備があるはずだから、この辺りの水害対策はすでに行われていたんじゃないかな。1906年に八筋川の堤防が決壊しているので、その後、何かしらの補強が行われていても不思議じゃない。
ところが、1910年には八筋川の南側で、利根川の支流に逆流することによる予想外の水害が起きた。だからチでの水害対策がその後決定され、数年かけて建設し1921年にようやく水害対策施設が完成したのだろう。
よって答えは③。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
そっか、利根川の洪水って大災害をもたらすよな。全然考えたことなかった。
利根川は、関東地方の1都5県にまたがる日本で2番目に広い流域面積を持っている。広範囲に降った雨がすべて集まるため、流量が非常に大きくなる。
下流域の関東平野は広大で標高差が小さく、堤防が決壊した場合、水が広範囲にわたり、なかなか引かない特性がある。
国や自治体は、この巨大なリスクに対応するため、ダム建設、堤防強化、放水路の整備(例:首都圏外郭放水路)などの対策を講じている。

参考:利根川の主な災害
参考:1.利根川とは
参考:洪水浸水想定区域図 | 利根川上流河川事務所 – 関東地方整備局
濃尾平野の木曽三川流域や、大阪平野の淀川流域でも、大規模な治水対策はとても重要。ここで大事なポイントは、水害対策は1つの自治体だけでは完結できないということ。川は複数の県や市をまたいで流れるため、上流・中流・下流が連携しない限り、十分な効果は得られない。
この視点で見てみると、バングラデシュの洪水や、東南アジアの大河川で起きる水害の対策って難しいんだなあって思うわ・・・。
| バングラデシュ(ガンジス川・ブラマプトラ川) | これらの河川は、インドや中国を源流としている。上流国が洪水を防ぐためにダムの水を一斉に放流すると、バングラデシュで壊滅的な洪水が発生する原因になる。 |
| 東南アジア(メコン川) | メコン川は、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムの6カ国を流れる国際河川。→メコン川委員会(MRC) |
解答番号30(ウナギの漁獲・養殖・輸入)
問題を解いている最中の思考
ウナギについての知識ないなー・・・。問題文に手掛かりがあるはず!
「ニホンウナギは、河川などで成長した後、海へ下り産卵する」ということは、ウナギの稚魚は海で生まれ、その稚魚を河川や湖に持ってきて養殖するということかな。
養殖生産を増やすためには稚魚の漁獲量を増やすしかない。ウナギの産卵量のコントロールは難しそう。稚魚を獲りまくることでウナギの養殖量は増やせるけれど、そうすると自然に成長するウナギの数が減り、海で産卵するウナギも減り、結果的にウナギの水産資源はどんどん減少してしまうだろう。だから、いくらウナギの需要が大きいからといって、稚魚を獲りまくるのはダメだ!・・・っていう話をしたい問題だよね。おそらく。
稚魚を乱獲する業者が登場して、その後、稚魚の乱獲を規制する法制度が整備された・・・っていう流れがありそう。
って考えると、1985年から2000年にかけて急増し、2015年にかけて急減しているミが国内での養殖生産かな?2000年代にウナギの稚魚の乱獲に関する何らかの規制が入ったんだと思う。
マは1985年に値が増えている。これは1985年に円高が進んで、輸入しやすくなったから?一方、ミが輸入量だとすると、輸入量が2000年までに急増して、そのあと急減したことの納得のいく説明が思いつかない。やっぱりマが輸入量で、ミが国内での養殖生産量だろう。
Xはtかな。石材を用いて整備された護岸がウナギや川魚の水産資源の回復に寄与する理由が謎すぎる。
よって答えは④。→間違いでした…(答えは②)
解き終わった後の復習(なぜ間違ったのか?)
国内でのウナギ養殖生産量に関する知識がなかった。「国内での養殖生産量は減少傾向にあり、これを補うように中国や台湾からのウナギ輸入が増大した」ということが全くわかっていなかった。
あと、今考えてみるとミが国内での養殖生産量なわけはないか。いくらなんでも急増しすぎ。そんなに拡大する余地があったとは思えない。それよりも、経済発展著しい中国からの輸入が増えたって考える方が確かに自然か。
ただ、それでも2015年に輸入が急減したことの説明が思いつかない。やっぱり、ウナギの養殖に関する基本的な知識がなかったことが、間違ってしまった最大の理由だと思う。
ってことで、ウナギの養殖についてちゃんと勉強しよう。
解き終わった後の復習(事後学習)
そもそもなぜ養殖を行うのか?
需要が大きい水産物の場合、天然漁獲だけで需要を満たそうとすると、天然資源の枯渇が懸念されるから。
完全養殖が待たれるのは、特にどんな水産物?
特にクロマグロやニホンウナギのように、高価で国際的な需要が非常に高い水産物ほど、資源枯渇のリスクが高く、天然資源に依存しない完全養殖の成功が強く求められる。
※高値で売れないと、養殖にかかったコストを回収できない。
養殖を成功させるためには何が必要?
その水産物の生態(何を食べて成長するのか?など)を理解すること。ウナギの場合、幼生(レプトセファルス)が海で何を食べているか?の解明が長年の最大の課題だった。この生態の解明が、人工的な飼料(餌)の開発と、適切な飼育環境の構築につながる。
水産物は常に目視できるわけではないので、生態の全体像を解明するのが難しい。
海は広大で深いため、ウナギやマグロのように回遊性が強く、ライフサイクルの特定の時期に深海や特定の遠洋域へ移動する魚種については、産卵場所や稚魚期の生態を追跡することが極めて困難となる。
完全養殖に成功しているのは、淡水魚や回遊性が弱い水産物が多い?
完全養殖は淡水魚に限られるわけではないが、回遊性が弱く、生態が単純で飼育環境の制御が容易な魚種が技術的に先行している。
完全養殖の技術が確立・商業化しやすいのは、主に以下の特徴を持つ魚種。
- 淡水魚:コイ、アユ、ティラピア
- 沿岸性の海水魚:マダイ、ヒラメ
- 短期間で成熟する魚介類:一部の貝類やエビ
したがって「完全養殖の成否」は、「淡水・海水」の区別よりも、その魚種が「閉鎖された人工的な環境下で世代交代を完結できるか」によって決まる。
カツオやサーモンも回遊魚だから完全養殖は困難?
カツオの完全養殖は困難。
- カツオはマグロと同様、泳ぎ続けないと呼吸ができない。非常に高速で活発に泳ぐため、生け簀内でのパニックや衝突による死亡が多く、大規模な飼育環境の維持が難しい。
- 高値で売れないため、養殖にかかるコストを回収できない。
サーモンの完全養殖技術は確立されている。
- サケ・マス類は、川で生まれ海に下る(またはその逆)という回遊性を持つが、このライフサイクルの大部分は人工的な環境下で制御可能。
淡水での養殖(内水面養殖業)と海水での養殖(海面養殖業)はどちらが難しい?
一般的に、海水での養殖(海面養殖業)の方が、淡水での養殖(内水面養殖業)よりも管理が難しい。
- 内水面養殖は養殖池、水槽などで飼育するため、水質、水温、病原菌の管理が比較的容易。
- 一方、海面養殖は、海の生け簀(いけす)が主体で、潮流、赤潮、水温変化など自然環境の影響を強く受けるため制御が困難。
中国で「淡水での養殖業」が盛んなのは、比較的容易だから?
中国には長江や黄河などの巨大な河川や、湖沼が広大に分布しており、養殖に必要な水資源が非常に豊富。
また、中国の食文化では、海魚だけでなく、コイ(鯉)などの淡水魚が重要なタンパク源として古くから消費されてきた。
魚類は肉類よりも効率よく生産できるため、安価で安定した動物性タンパク質を国民に提供する上で、淡水魚養殖は不可欠な手段と見なされた。
1970年代以降、日本国内のウナギの漁獲量が減少したのはなぜ?
日本だけでなく、中国、台湾、韓国でもウナギの需要が高まり、稚魚の取引価格が高騰した。
この経済的動機により、産卵資源となる親魚の数を回復させる間もなく、稚魚(シラスウナギ)の乱獲が助長された。
ニホンウナギは、海で生まれて川や湖で育ち、再び海へ戻るという複雑なライフサイクルを持っている。
ダム、堰(せき)、水門などの人工構造物が、ウナギの親魚や稚魚(シラスウナギ)の自由な回遊を妨げた。
また、農地開発や都市化に伴う河川改修(コンクリート化など)や水質汚染により、ウナギが成長する場所が減少した。
なるほどー!この問題は利根川の治水と関係している話なのか!!!!
日本のウナギ漁獲量が減った大きな理由の一つは、河川の治水対策が進んだことにある。治水対策のおかげで人々は安全に暮らせるようになったが、ウナギの生息環境には悪影響が出てしまった。
一方でウナギの需要は依然として高いため、養殖でなんとか支えようとしている。しかし、過去の乱獲で稚魚(シラスウナギ)そのものが減っており、養殖の材料確保さえ難しい。そこで輸入に頼っているものの、その輸入ウナギも乱獲に支えられているため、根本的な解決にはならない。
持続可能にするには、漁獲量の適切な管理と河川環境の改善、そして完全養殖の技術確立が欠かせない。
今回の問題は、こうした背景を理解しているかどうかを問うものだったのね!
中国からのウナギ輸入が増えたのはなぜ?
中国南部はウナギの養殖に適した温暖な気候と豊富な淡水資源があり、養殖コストを低く抑えることが可能。
関連:ウナギの輸入の状況について教えてください。(農林水産省)
日本でウナギ養殖が盛んな場所と、その理由は?
日本でウナギ養殖が特に盛んな場所は主に九州南部と東海地方。現在の生産量トップ4は鹿児島県、愛知県、宮崎県、静岡県であり、この4県で全国の9割以上の養殖ウナギを生産している。
浜名湖周辺はウナギ養殖発祥の地。明治時代に日本で初めて養殖が試みられ、成功した。
解答番号31(地域調査の方法)
問題を解いている最中の思考
①OK。
②OK。
③人口の変化を見ても、防災意識の変化はわからないんじゃないかな。関係なくはないと思うけど、防災意識の変化を調べたかったら聞き取り調査をした方がいいと思う。
④OK。
答えは③。→正解でした!
解き終わった後の復習(事後学習)
特になし




