ヨーロッパ

ユーロ導入で得るもの、失うもの【メリット・デメリット・問題点】

モチオカ(望岡 慶)
モチオカ
モチオカ

モチオカです。Twitterやってます!【お問い合わせ半生振り返りこのブログについて

ユーロ(€)とは

ユーロ(€)とは、ヨーロッパの多くの国(ユーロ圏)が使っている共通通貨のこと。

導入は段階的に進められ、1999年にまず「通貨単位」としてスタートし、2002年には紙幣や硬貨が実際に流通し始めた。

欧州中央銀行にて(2025.6撮影)

ユーロを発行するのは欧州中央銀行(ECB)

ユーロを発行できるのは欧州中央銀行だけ。

欧州中央銀行の本部は、ドイツの金融都市フランクフルトにある。

欧州中央銀行 @フランクフルト(2025.6撮影)

ユーロ導入のメリット

いろいろな面倒が消え、貿易・投資が活発化する

両替の手間がなくなる

ユーロ圏内で同じ通貨を使えるため、旅行・ビジネス・輸出入が圧倒的にスムーズ。

為替の手間がなくなる

ユーロ圏内の取引なら、「通貨安の今がチャンス!」「通貨高の今がチャンス!」と考える必要がなくなる。通貨の変動に左右されずに計画的な経済活動ができる

特に輸出企業にとっては、通貨リスクを気にせず中長期的な戦略を立てやすくなる。

価格比較がしやすくなる

各国の商品やサービスの価格を直接比較できる。例えば、ドイツとスペインで同じ車を買うとき、「どっちが安いか」がすぐにわかる。

これにより、企業側にも価格競争の意識が働き、市場全体の効率性が高まる。

経済が強い国には、「割安な通貨」という恩恵

経済が強い国(例:ドイツ)にとっては、本来のマルクより「割安な通貨」で輸出できるので、輸出競争力が上がる。

※ユーロの価値(為替レート)は、ユーロを使っている国全体の平均的な経済力をもとに決まる。そのため、そのため、ドイツのように経済が強い国から見ると、「実力よりも安い通貨」で輸出できることになり、輸出が有利になる(※※)。

※※通常、経常黒字(輸出超過)が大きければ、外国からの需要によりその国の通貨は買われ、通貨高(為替の上昇)になる。

Q
なぜ経常黒字(輸出超過)になると通貨が買われるのか?

輸出すると、外貨で代金が支払われる

  • ドイツが例えば日本に車を輸出すると、ドイツ企業は「ユーロ」で代金を受け取りたい。でも、日本は「円」が流通している国。
  • →日本の会社は、円を売ってユーロを買う必要がある。

つまり、輸出が増えると「ユーロを買う人」が増える

  • ドイツが多くの国にモノを輸出しているということは、各国で「自国通貨を売ってユーロを買う」取引が多く発生しているということ。
  • つまり、ユーロに対する需要が高まっていることを意味する。

通貨も「需要が増えると価格が上がる」

  • たくさん欲しい人がいれば、モノの値段は上がる。
  • 通貨でも同じで、「買いたい人」が増えると通貨高になる

輸出が多い=その国の通貨を「買いたい人」が多い

結果としてその通貨が高くなる(=通貨高)

経済が弱い国には、「信頼ある通貨」という恩恵

経済が弱い国(例:ギリシャ、スペイン)にとっては、ユーロという「信頼性のある通貨」で借金ができるため、低金利でお金を借りやすくなる。

→これが2000年代の南ヨーロッパの経済成長と、のちのギリシャ危機につながった。

ギリシャ・アテネ(2025.6撮影)

ユーロ導入のデメリット

「自国のための政策」が打てなくなる

ユーロを導入するということは、通貨政策(金利操作や通貨発行)を欧州中央銀行(ECB)に任せることを意味する。つまり、自国の経済状況に合わせた独自の金融政策ができなくなる

たとえば

  • 不況に陥った際、お金をたくさん刷って景気を刺激する
  • 通貨を安くして輸出を増やす
  • インフレ傾向にある際、金利を上げて物価上昇を抑える

といった柔軟な対策が取れない

すべてが「ユーロ圏全体の平均」に合わせた政策になるため、個別の国が困っても、自力で立て直しにくくなる

これがユーロ導入の最大の弱点。

欧州中央銀行にて(2025.6撮影)

※ユーロは通貨の統合であって、国家の統一(政治的な統一)ではないため、ある国(たとえばギリシャ)が経済的に苦しんでも、他国(たとえばドイツ)の納税者は「なぜ自分たちの税金で?」と感じやすく、財政支援に非協力的になりやすい。

→その結果、強い国はますます強く、弱い国は立ち直りにくくなるという格差構造が生まれやすくなる。

参考:なぜドイツ経済は強いのか?ヨーロッパ最強の工業国になっちゃう理由

ユーロに関する疑問

では各国はどのように景気を調整する?

ユーロ圏の国々は「財政政策」で景気調整を行う。つまり、政府の税金・支出を使って景気のコントロールを試みる。

政策景気が悪いとき景気が過熱しているとき
政府支出公共事業を増やす、福祉支出を拡大支出を抑制、投資を絞る
税制減税して家計・企業の手取りを増やす増税して需要を抑える
補助金産業支援・雇用維持のために補助金を出す不要な補助金を削減

ただし制約がある。ユーロ圏の国々は「財政赤字を増やしすぎたらダメ」「政府債務は増やしすぎたらダメ」というルールに縛られている。

※ギリシャはこのルールを破り、さらにみんなに隠していたため、大惨事になった(ギリシャ危機)

なぜイギリスはユーロを導入しなかったのか?

金融政策を放棄したくなかったから。

なぜスウェーデンはユーロを導入していないのか?

記事URLをコピーしました