農業の担い手が減って誰が困るの?
「農業の担い手が減っていることが日本の農業の課題だ」的なことが教科書に書かれています。多くの人がそう学んだはずです。
でも、よくよく考えてみたら、教科書に書かれていることって正確ではないんじゃない・・・?って気がしました。
だってさ、、、
農業人口の減少が本当に悪いこと(=避けるべきこと)なのであれば、江戸時代以降の農業の発展が悪いことになってしまいません・・・?
江戸時代の百姓の人口比率は約80%です。当時の総人口は約3,000万人なので、約2,400万人が百姓だったっていうことになります。
(百姓=農民ではないので、2,400万人がみんな現代の農家と同じっていうわけじゃないです、、、が、だとしてもかなりの人数が農業に従事していたのは間違いないです)
一方、現代の農業人口は約168万人(2019年)。比率で言うと約1%です。
もし農業人口の減少が悪いことなのであれば、江戸時代と比べると現代は「農業人口がむっちゃ減ってヤバい!」ってことになるわけです。
でもそんな感じはしないですよね。
化学肥料や農業機械が導入されたり品種改良が行われたりした結果、現代の方が圧倒的に農産物の生産量が多くなっています。
江戸時代は飢饉が起こりまくって餓死する人がたくさんいたけど、現代ではそんなことはまず起こりません。
このような農業の発展にともなって、農業に必要な労働力が減り、他の産業に労働力が移転して、他の産業が成長してきた。
これが日本の(っていうか世界の)歴史です。
つまり、農業の効率化と労働力減少はセットなんです。
そう考えると、農業の担い手が減ること自体が問題ではないってことがわかります。むしろ農業の担い手が減ることは望ましいことです。
問題なのは、(農業の担い手が減ることによって起こり得る)農地の荒廃や農産物の生産量の減少です。農業の担い手が減ることではありません。
※農業は人間の生活を支える超重要な産業なので、「担い手が減ったら困る!」って主張するのはわからなくはないですが、、、それって正確じゃないよね?ってことです
僕たちが真剣に考えるべきことは、
農地の荒廃や農産物の生産量の減少を防ぐためにはどうしたらいいか?
なんです。
具体的には、
- 条件が悪い農地(放棄されやすい農地)を少ない人数でどう活用するか?
- 離農後の農機具や借金、耕作放棄地をどうするか?(農地や事業承継をどう円滑化するか?)
あたりでしょうか。
日本の農家はかなり高齢化しています。
で、そう遠くない未来に農家が一気に離農する…っていう恐ろしい現象が起きます。
「農業人口を増やすためにはどうしたらいいか?」っていう表面的なことじゃなくて、本質的な問題を直視してマジで真剣に考えないといけません。
★★★
ところで、なぜ教科書には「農業の担い手が減っていることが日本の農業の課題だ」的な不正確なことが書かれているのでしょうか?
小学生・中学生・高校生にはその方が単純でわかりやすいから?・・・僕はそうは思いません。
僕は「農業人口の減少は悪いことだ」って子供に教えたい人がいるからだと思います。
日本には農家の協同組合である農業協同組合(農協)っていう組織があるんですけど、その農協にとって、農家が多い方が組合員が増えて都合がいいと言われています。
農家が減ったら、農協は肥料を売ったり農業機械を売ったりする相手が少なくなってしまう
→儲からない
農家が減ったら、農家が農協に預けるお金(農協預金)が減ってしまう
→活動資金が減る
農家が減ったら、農協は政治力を失ってしまう
→自分の思い通りに政府を動かせなくなってしまう
一方、現在政権を担っている自民党にとっても、農家が多い方が都合がいいと言われています。
農協は自民党の支持基盤
→農協に加入している農家が減ってしまったら、自民党の獲得票数も減ってしまう
このように、農協と自民党は「農家が減ったら困る」という点で利害が一致しています。日本の未来を担う子供たちが「農業の担い手が減ったらマズイよね!」って学習すると都合がいいんですよね。
だから教科書に「農業人口の減少は悪いことだ」って書かれてるのかも・・・?