社会問題・リテラシー

食料自給率のカラクリ

 

農林水産省が目標に掲げている食料自給率の向上

令和12年度(2030年度)までに

  • カロリーベース食料自給率を45%(令和2年度:37%)
  • 生産額ベース食料自給率を75%(令和2年度:67%)

に上げることを目標にしているみたいです。

 

んでね。

 

僕も昔は「食料自給率って上げた方が良いよね!そしたら安心だもんね!」って単純に考えていたんですけど、

食料自給率について勉強すればするほど「なんで食料自給率の向上に農水省はこんなにこだわってるの?」って疑問に思えてきました。

 

ということで、食料自給率に関して僕が学んだことをまとめたいと思います。

 

望岡 慶
望岡 慶
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食料自給率とは?

まず、食料自給率とは何なのか?というと、、、

簡単に言うと、「食料のうち、どれくらいの割合を国産でまかなうことができているか?」を表す指標です。

 

この食料自給率には

特定の品目の自給率(「コメ」とか「じゃがいも」とか)

食料全体の自給率

があって、社会科の教科書とかで「食料自給率が低くてヤバいっす!」ってアピールするために使われているのは「食料全体の自給率」の方です。

 

 

んで、「食料全体の自給率」を計算する際には、「コメ」とか「じゃがいも」とかのそれぞれの食品を統一の基準で扱わなければいけません。

そこで統一の基準として使われるのがそれぞれの食品の「カロリー」もしくは「生産額」で、こうして

  • カロリーベース食料自給率
  • 生産額ベース食料自給率

の2種類の「食料全体の自給率」が計算されるわけです。

 

 

食料自給率の計算方法

具体的な計算方法がこちら(農水省のHP参照)

カロリーベース食料自給率

=「国民1人1日当たり国産熱量(kcal)」÷「国民1人1日当たり供給熱量(kcal)」×100

 

生産額ベース食料自給率

=「食料の国内生産額(円)」÷「食料の国内消費仕向額(円)」×100

 

このうち、「日本の食料自給率は低い!」ってのをアピールするために使われるのはカロリーベース食料自給率の方です。

令和2年度のカロリーベース食料自給率は37%。

 

なんてこった!!!!

って思うかもしれませんが、僕はこの食料自給率の低さ(=農水省が「国民の皆さん!ヤバいですよ!」って危機感を煽るために使っている数字)に対して、いろいろ思うところがあります。

 

食料自給率について疑問に思っていること

  1. ホントはもうちょっと高いんじゃないの!?
  2. 低いのは仕方ないんじゃないの!?
  3. 農水省は本気で食料自給率を上げようと思ってるの!?
  4. てゆーか低いままでもいいんじゃないの!?

 

①ホントはもうちょっと高いんじゃないの!?

まず、これはいろんな書籍で指摘されていることなんですけど、食料自給率にはカラクリがあって、

分母=「国民1人1日当たり供給熱量(kcal)」

には実際に摂取されていない食品のカロリーも含まれているんですよね。あくまで「流通に出回った食品のカロリー」を人口で割っているだけなので、廃棄された食品のカロリーも分母には含まれているわけです。そして実際、日本では日々、大量の食品ロスが生じています。

 

また、

分子=「国民1人1日当たり国産熱量(kcal)」

には農家が生産している農作物がすべて含まれているわけではありません。

例えば自給農家(自分の家で食べるためだけに農作物を作っている農家)の農作物は、自給率の計算には含まれていませんし、農家が近所の家におすそ分けした分の農作物も、自給率の計算には含まれません。実際に日本人の胃袋に入っているのにもかかわらず、です。

 

それに農家の方々は、「たくさんとれすぎちゃった!すべてを流通させちゃうと値段が下がりすぎちゃう!」「この作物は形が悪くて規格外だから売れない!」って時は、畑で農作物を廃棄していたりもします。

 

 

以上の事実を踏まえると、「食料自給率の数値は低いけど、実際にはもうちょっと『自給』できてるんじゃないの!?」って思っちゃいます。

 

 

②低いのは仕方ないんじゃないの!?

あと、日本でカロリーベース食料自給率が低いのはある程度仕方ないんじゃないの?って気がしています。

カロリーベース食料自給率は、カロリーが高い食品を国内で生産すれば高くなるわけなので、なんとしてもカロリーベース食料自給率を上げたい!って思ったら、カロリーが高い油脂類や肉の自給率をもっと上げればいい!ってことになります。

自給率(令和2年度)

  • 油脂類:13%
  • 牛肉:9%
  • 豚肉:6%
  • 鶏肉:8%

※日本は頑張って肉を生産していますが、肉の自給率は家畜のエサとなる飼料作物の自給率を乗じる(×)ことで計算するので、飼料作物を輸入に頼りまくっている日本の肉の自給率はかなり低くなっています(とうもろこしなどの質が高い飼料の自給率=12%)。

 

あと、小麦や大豆の自給率も上がればなお良し!です。

自給率(令和2年度)

  • 小麦:15%
  • 大豆:6%

 

 

じゃあなんで、これらの食品の自給率は低いのでしょうか?

日本が、これらの食品を作るのはそんなに得意じゃないからですよね?国土が狭くて小規模な農家がたくさんいる日本では、広大な土地を使って大規模に作るのはムリです。日本で作らないのには理由があるわけですよ。

 

一方、日本はどちらかというとカロリーが高くない野菜や果物の生産に力を入れています。その方が得意だし儲かるからです。

 

つまり、高カロリーでカロリーベース食料自給率を押し上げる食品の生産は苦手で、低カロリーでカロリーベース食料自給率の向上に大きくは寄与しない食品の生産が得意なわけです。

 

 

って考えたら、日本でカロリーベース食料自給率が低いのはある程度仕方ないんじゃないの?って思えます。

結局、「食料自給率を上げるぞ!」っていう農水省の掛け声のもとに、日本が不得意な農作物の栽培に税金が投入されているわけです。これって本当に正しいんですかね?

 

 

③農水省は本気で食料自給率を上げようと思ってるの!?

それに、農水省が本気で食料自給率を上げようと思っているのか?も疑問です。

 

ホントに食料自給率を上げようと思ったら、日本の農業の生産性を上げたり、国産の農作物の品質を上げて輸出産業にしたりする努力をすればいいわけですけど、

非効率的な小規模な農家を温存するような保守的な政策ばっかりやってません?

 

農協と農水省と小規模な農家ががっちりタッグを組んで、それぞれの利益のために日本の農業の発展を二の次にしているんじゃない?って疑っちゃいます。

 

 

④てゆーか低いままでもいいんじゃないの!?

最後に、そもそも食料自給率って別に低いままでもいいんじゃないの?って思ったりもしています。

 

食料自給率の向上を叫ぶ人って「輸入がすべてストップしたらどうするの?」って感じで、とてつもなく危機的な状況を想定して叫んでいるんだと思うんですけど、

まず輸入がすべてストップするなんてことは現代の世界では考えにくいし、そもそもそんな緊急事態に「今までの食生活を維持しよう」だなんて思わないですよね?

 

食料自給率の分母は「流通に出回った食品のカロリー」です。つまり、国民の食生活のニーズを反映した数値なわけですから、輸入がすべてストップするなんていう超緊急事態においては、国民の食生活のニーズ自体が変わるはずなんです。

それなのに、平時の食料自給率の数字を使って「輸入がすべてストップしたら大変なことになる!」って叫ぶのはなんか変な感じがしませんか?

輸入がすべてストップしたら、どの国だって今までの食生活を維持することなんてできないですよ。維持できる国があるとしたら、外国ともともと一切関わっていない”鎖国”状態の国だけです。

 

 

食料自給率のカラクリ

食料の安全保障において大切なのは、輸入ルートをたくさん用意することと、食料を十分に備蓄することだと思うんです。各国がそれぞれ得意なものを作って、お互いに交換しあう…ってのが現代の世界経済の原則です。

 

「食料自給率の向上」を目的に、苦手なものを作るために税金を大量に投入することが、ホントにそんなに重要なのでしょうか?僕にはそうは思えません。

もっと大切なことがあると思うんです。日本の農業を本当の意味で発展させることこそが、今やるべきことなんじゃないでしょうか?

 

で、農水省だってホントはわかっているんじゃないですかね?食料自給率の向上にそんなに躍起になる必要はないってことを。

でも、農水省は「食料自給率を向上させないとマズイ!」って叫びます。たぶんそこには、「食料自給率の向上を訴えた方が得だ」っていうなんらかのカラクリがあるのでしょう。。。

 

望岡 慶
望岡 慶
最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

 

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