社会科の目標とは?社会科で身につけたい力とは?
社会科は「社会の問題を発見し、解決して、幸せを増やす」ためにある。
そして、そのために「地理」「歴史」「公民」を学ぶのだということはすでに述べた。
では、「地理」「歴史」「公民」の教科書の内容を理解すればそれで十分なのだろうか?
社会の問題は発見され、解決され、みんなが幸せになるのだろうか?
僕はそうは思わない。
大切なのは「自分はこう思う」と言えること
たしかに、教科書に書かれている内容を理解することは必要。
でも、それだけで社会がより良くなるわけではない。
僕は、「地理」「歴史」「公民」の内容を理解したうえで、「自分はこう思う」と言えるようになることこそが、社会科の学びの目指すところだと思っている。
なぜ「自分の考え」が大切なのか?
第一に、社会の中で起きている出来事を「問題」ととらえるかどうかは、人によって違うから。
たとえば、ある出来事に対して「このままでいい」と思えば現状維持でいいし、「ここは変えたほうがいい」と思うならそれは社会問題になる。
歴史を見ても、かつての社会では奴隷制度のように、今では考えられないような制度が当たり前とされていたことがある。多くの人がそれを問題だと考えていなかった時代には「社会問題」として認識されていなかった。
しかし、ある時から少しずつ「それはおかしい」「変えるべきだ」と声を上げる人が現れ、やがて社会全体でも「これは問題だ」という認識が広がっていった。
このように、「社会問題」は客観的に決まるものではなく、人びとの意識によって生まれるもの。
だからこそ、まずは自分がどう思うのかをはっきりさせることが大切になる。
第二に、社会問題の解決策に「唯一の正解」はないから。
どんな解決策にもメリットとデメリットがある。ある人たちにとっては良い方法でも、別の誰かにとっては困る方法かもしれない。
しかも、解決策が本当にうまくいくか?は実行してみないとわからない。解決策を実行した結果、思わぬ結果が(良くも悪くも)出たりする。
社会は実験室ではない。マウスを使って何度も実験を重ねれば「正解」が見つかる、というわけにはいかない。
だからこそ、「このやり方がベストかどうかはわからないけれど、今の時点では自分はこうするべきだと思う」というように、迷いながらでも自分の立場をはっきりさせることが大事になる。
ポジションを取ることが社会科学習の目標
このように、実際に「社会の問題を発見し、解決して、幸せを増やす」ためには、自分の考えや価値観に基づいて、自分なりのポジションをとることが必要になる。
複雑なことに対して「わからない」で終わるのではなく、「自分はどう考えるか」を表現しなければならない。
- いろいろな立場の人が
- それぞれの意見を持ち寄り、
- より多くの人が納得できるような方法を考え、選び、実行していく。
このように人々が「自分はこう思う」と言い合い、解決策を模索することで、社会の中で生まれてしまう“生きづらさ”や“不公平”を少しずつ減らし、「みんなの幸せ」を増やしていくことができる。
「地理」「歴史」「公民」の教科書の内容を理解しただけでは、より良い社会はつくれない。
それらの知識をもとにして、自分なりのポジションを取り、行動しようとすること。
それこそが、社会科の学びが目指すべき姿だと僕は思う。
→社会科教員の役割とは?「わかりやすく教える」以外に何があるのか?