勉強が苦手な人は大学に行くべきではないのか?
モチオカ(望岡 慶)
「大学は高等教育機関なのだから、勉強が苦手な人は行くべきではない」
そんな意見がある。
でも、本当にそうなのだろうか?
高校までの学びは「できているか」より「年齢」で決まる
日本の教育制度では、中学・高校・大学といった区分は、学力ではなく年齢で決まっている。
- 15歳になれば、中学校の内容を身につけていなくても卒業
- 18歳になれば、高校の学習内容が不十分でも卒業
つまり、「その学年の学力がちゃんと身についているか」は、卒業の条件にはなっていない。(実質的には)
それにもかかわらず、「大学は勉強ができる人の場所。できない人が行っても無駄」と言われてしまうことが多い。
「できていない」人はどうする?
たとえば、こんな人がいたとします。
- 高校は卒業したけれど、内容はほとんど覚えていない
- もう一度しっかり学び直して、大学や専門学校にも行ってみたい
そんな人が安心して学び直せる場は、今の日本にはほとんどない。
状況 | 現在の制度 | 課題 |
---|---|---|
高校を出ていない人が学びたい | 通信制・定時制、または高認 | 学びのモチベーションが続きにくい |
高校は出ているが、内容が不安 | ほぼなし | 公的な支援や通学型の学習機関がない |
大学に行きたいけれど不安 | 自学、予備校、塾 | 経済的・心理的ハードルが高い |
「大学」ではない、新しい学び直しの場を作れないか?
だったら、大学とは別の枠組みで、18歳以上の人がもう一度学び直せる場をつくったらどうだろうか?
- 入学資格は“やる気”だけ。試験なし
- 高校までの基礎をイチからやり直せる
- 年齢制限なし。何歳からでもOK
- 学び直しながら、自分の将来も考えられる
- 大学や専門学校への橋渡しとしても機能
こうした教育機関ができれば、今の「大学か、自学か」の二択に新しい選択肢が生まれる。
現在、いわゆる「Fラン大学」と呼ばれる大学の中には、中学・高校の基礎内容に近い学び直しを担っているような実態もある。
けれど本来、大学は「高等教育機関」であり、高校の学び直しを前提にする場ではない。
だったら、そういった役割を新たな枠組みの教育機関に移していく方が、制度としてもスッキリするだろう。
具体的には:
- 高校までの基礎教育を再学習するための「学び直し専用の教育機関」を新設する
- これまで基礎教育を担っていた大学の一部は、その新たな枠組みに再編・移行してもらう
- その上で、「大学向けの助成金」と「学び直し機関向けの助成金」を制度的に分ける
こうすれば、高等教育に対する公的支援の名目で、実は基礎教育に補助を出しているという現状のゆがみも解消できるし、本来の大学教育の水準も守ることもできる。
参考:イギリスのFurther Education(FE)
参考:アメリカのCommunity College