ベネズエラはどんな国?重要なポイント・地理・歴史をわかりやすく【南アメリカ】

モチオカ(望岡 慶)

南アメリカ大陸の北部に位置する「ベネズエラ」。

地理的なポテンシャルや歴史的背景、そして現在この国が直面している深刻な状況について解説する。

ベネズエラは南米屈指のポテンシャルを持つ

地理的に有利

そもそも南米大陸は、物流の観点で見ると極めて「厳しい」環境にある。

  • 西側:北米のロッキー山脈よりも険しいアンデス山脈がそびえ立ち、太平洋側への移動やトンネル掘削を困難にしている。
  • 中央部:赤道付近には広大なアマゾン熱帯雨林が広がり、道路を敷設するのも容易ではない。
  • 東側(ブラジル):リオデジャネイロ周辺などは断崖絶壁の地形であり、広い平野がないため港の構築が難しい。
  • 南部:乾燥した極寒のパタゴニア砂漠が広がり、居住には適さない。

こうした厳しい条件が並ぶ中で、ベネズエラはオリノコ川流域に広大な平原(リャノ)があり、地形的に使い勝手が良い。さらに北側はアメリカ合衆国やヨーロッパにも比較的近い。

ベネズエラは物流や貿易の面で「南米の中で最もポテンシャルが高い国」と言える。

世界有数の産油国

ベネズエラは、世界有数の原油埋蔵量を誇る国として知られている。その理由は、この地域の複雑な地質構造にある。

カリブ海プレートの境界に位置するため、北部一帯の地層は地殻変動の影響を受けている。こうして地層がグニャリと曲がる「背斜(はいしゃ)構造」が形成された。

原油は水より軽いため、この曲がった地層の上部に溜まる性質がある。 ベネズエラは石油が溜まりやすく、採掘しやすい構造を持った土地。

ベネズエラは「格差と貧困」が深刻

高いポテンシャルを持ちながら、ベネズエラは深刻な貧困と所得格差に苦しんできた。その背景には、ラテンアメリカ共通の「大土地所有制」という歴史的経緯がある。

大土地所有制

かつてスペインからの入植者が王から土地の支配を認められ、奴隷を使いながら農業を行っていた。この「支配者と非支配者」という構造が、独立後も「エリート層」と「持たざる貧困層」という形で残ってしまった。

外国資本による開発

さらに、石油開発には高度な技術と莫大な資金が必要なため、アメリカなどの外国資本に頼らざるを得なかった。その結果、利益の多くは外国企業や現地の特定のエリート層に流れ、一般の貧困層には恩恵が届かないという経済構造が定着した。

チャベスからマドゥロへ:独裁と経済崩壊の道

貧困層の怒りの中から登場したのが、チャベス大統領である。彼は民主的な選挙で選ばれ、「貧困撲滅」を掲げて国営石油企業の利益を国民に配る「ばらまき政策」を推し進めた。反米・社会主義的な姿勢を貫き、当初は貧困層から絶大な支持を得た。

しかし、2013年にチャベスが急死し、後継者のマドゥロがその路線を引き継ぐと状況は一変する。

  • 中国経済の減速:主要な輸出先であった中国の経済に陰りが見え始めた。
  • シェール革命:アメリカで新たな採掘技術(シェールオイル)が確立され、原油価格が暴落した。

石油が高く売れることで成立していた「ばらまき」のサイクルが崩壊し、ベネズエラ経済は完全に破綻した。

「Homeland Card」による国民管理

現在、マドゥロ政権は「Homeland Card」というQRコード付きのカードを使って国民を管理していると言われている。

これは日本のマイナンバーカードをさらに極端にしたようなもので、食料配給の管理に使われる一方で、「誰が選挙で誰に投票したか」や「反政府デモに参加したか」といった記録とも紐付けられていると指摘されている。

政権に従わない者には食料を配給しないといった、政治的なコントロールの道具として悪用されている側面がある。

より詳しく知りたい場合には、現地でのリアルな状況が描かれた『ポピュリズム大陸 南米』という本がおすすめ。ベネズエラの状況について非常に深く学ぶことができる。

トランプ大統領から見たベネズエラ

トランプ政権によるベネズエラへの介入の際、不動産実業家出身のトランプ氏の目には、ベネズエラが「管理さえしっかりすれば価値が跳ね上がる、最高の優良物件」に見えていたのかもしれない。

参考文献

外山尚之(2023). 『ポピュリズム大陸 南米』. 日経BP.

ティム・マーシャル(2016). 『恐怖の地政学 ―地図と地形でわかる戦争・紛争の構図』. さくら舎.

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