与党が選挙で圧倒的な勝利を収め続けるには、一体どうすればいいのか?
その方法を、圧倒的な強さを誇るシンガポールの与党、人民行動党から学んでみたい。
Profile
千葉の公立中・公立高から、1年間の浪人を経て東大へ(文3→教育学部→大学院教育学研究科)。公立中学校の教員になった後、数年で退職。現在はブロガーとして生計を立てて8年目。★学生時代から教員時代にかけて、ずっと引っかかっていたのは、学校で学ぶ社会科と現実の社会とのギャップ。教科書を理解しても、ニュースを理解できない。このギャップを埋めたくて、今も社会の勉強を継続中。★目標は「世界一の社会科教員」——教えるのがうまい人ではなく、「この人といると自分も学びたくなる」そう思ってもらえる存在——になること。
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シンガポール与党は選挙で負けたことがない
シンガポールは1965年の独立以来、与党である人民行動党(PAP)が政権を維持し続けています。
2025年の選挙でも勝利し、これで14回連続の勝利です。勝ち方も圧倒的で、国会の総議席のうち、9割近くを常に与党が占めている状況。野党には数議席から多くても十議席程度しか与えない強さを誇っています。
では、なぜ人民行動党は選挙に強いのでしょうか。また、その中に日本が見習えることはあるのでしょうか。
理由1:野党の抑圧
1つ目の理由は、野党勢力に対する強力な締め付けです。
その象徴的な例が、ジェヤレトナムという政治家のケースです。
彼は1981年、独立後のシンガポールで初めて野党の政治家として国会議員に当選した(労働者党)。
1986年、党の資金の不正利用の容疑で人民行動党から告訴され、罰金の有罪判決を受けた。
賠償金を工面するために自宅を売却したが、最終的には2001年に破産宣告を受けた。
シンガポールの法律により、破産したことで彼は国会議員の資格を剥奪された。
つまり、「罰金や破産で議員資格を失う」という法の規定を、名誉毀損訴訟や刑事訴追という手段によって発動させたということ。
この事例に象徴されるように、シンガポールでは野党側のリーダーが育ちにくい環境が政治的に作られてきました。
By Jacklee; original photograph by Jacob George. – Cropped from Needs no introduction does he…., CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11950548
理由2:有権者への圧力
2つ目の理由は、市民社会や国民全体に対する抑圧・統制です。
その象徴的な例が、公共住宅の改修の優先順位に関する事例です。
与党の人民行動党は、与党候補を選出した選挙区の公共住宅(HDB)の改修を優先し、野党が勝利した選挙区は後回しにする」という方針を公式に掲げ、有権者に与党への投票を強く迫った。
シンガポール国民の約8割以上が政府の提供する公共住宅(HDB)に居住している。
実際、後回しにされた選挙区がある。
ホウガン(Hougang)選挙区(最大野党・労働者党の強固な地盤)
ポトン・パシール(Potong Pasir)選挙区(野党の重鎮チャム・シートンの地盤)
他にも、シンガポールには国内治安法(ISA:Internal Security Act)という強力な法律があります。
容疑者を逮捕令状なしに逮捕し、長期間(更新により無期限も可能)予防拘禁できる強力な権限を政府(内務省)に与えている法律。
国家の安全や社会秩序を脅かすテロ、過激派活動、人種・宗教間の対立などを防ぐことが目的。
1987年に、外国人労働者の人権救済活動を行なっていた社会運動家やキリスト教関係者らが、国家治安法によって裁判なしで拘束された。(マルクス主義者陰謀事件:スペクトラム作戦 )
理由3:選挙制度
3つ目の理由は、シンガポール独特の選挙制度である「集団選挙区制(GRC:Group Representation Constituency)」の存在です。
現在、シンガポールの選挙では2種類の選挙区制度が併用されている。
1つ目が小選挙区制。1つの選挙区から1名を選出する。
2つ目が集団選挙区制。1988年に導入された制度。
1つの選挙区に政党が複数人(3〜6人程度)のチームを組んで立候補し、最多得票を得たチームがその選挙区の全議席を総取りする。
チーム内には「必ず中華系以外の少数民族(マレー系やインド系など)の候補者を1名以上含めなければならない」と決まっている。
集団選挙区制の目的は、「中華系以外の少数派の民族も国会議員として選出するため」と説明されている。
が、人材と資金に乏しい野党にとっては、複数の候補者をそろえることは大変。
実質的には、与党を有利にする仕組みとして機能している。知名度の低い新人候補も当選させやすくなる、など。
By Huaiwei at en.wikipedia, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14952448
まとめ
日本の与党には見習ってほしくないことだらけですね。
野党政治家への厳しい追及
有権者への圧力
与党に有利な選挙制度
参考文献
岩崎育夫(2013). 『物語 シンガポールの歴史』. 中公新書.
運営者
千葉の公立中・公立高から、1年間の浪人を経て東大へ(文3→教育学部→大学院教育学研究科)。公立中学校の教員になった後、数年で退職。現在はブロガーとして生計を立てて8年目。★学生時代から教員時代にかけて、ずっと引っかかっていたのは、学校で学ぶ社会科と現実の社会とのギャップ。教科書を理解しても、ニュースを理解できない。このギャップを埋めたくて、今も社会の勉強を継続中。★目標は「世界一の社会科教員」——教えるのがうまい人ではなく、「この人といると自分も学びたくなる」そう思ってもらえる存在——になること。