世界

中国の民族をわかりやすく:多民族国家ゆえの悩み、少数民族の抑圧

モチオカ(望岡 慶)

中国といえば、世界でも人口が極めて多い「ひとつの国家」というイメージがあるかもしれない。

でも実際には、中国は文化も言葉も民族もバラバラな「多民族国家」である。

そして、この多様性(と人口の多さ)こそが「安定した統治」を難しくさせている

もちおか
もちおか

モチオカです。noteTwitterYouTubeやってます!【お問い合わせ自己紹介

中国の民族

人口の9割は「漢民族」…でも言葉が通じない?

上海にて(2024.2撮影)

中国の人口の約9割は「漢民族」である。

「じゃあ、みんな同じ民族だし、意思疎通はスムーズなのでは?」と思うかもしれないが、実はそうでもない。

なぜなら、同じ漢民族でも、話し言葉(口語)は地域によって大きく異なるから。

たとえば、

  • 北京周辺→北京官話(マンダリン)
  • 上海→上海語
  • 広東省→広東語

これらは方言というよりもはや別言語レベル。特に南部では方言が細かく分かれていて、「同じ漢民族なのに、話しても通じない」というケースも少なくない。

ただし、書き言葉(文章語)は共通なので、筆談なら通じるという不思議な状況である。

中国には50以上の「少数民族」が暮らしている

漢民族以外にも、中国には約50の少数民族が存在する。それぞれが異なる文化・宗教・言語を持っており、生活様式や価値観もさまざま。

中国政府は、いくつかの少数民族に対して「民族自治区」として特別な地域を設けている。

民族地域宗教特徴
ウイグル族新疆ウイグル自治区イスラム教トルコ系。アラビア文字を使う。
チベット族チベット自治区チベット仏教(ラマ教)高地に暮らす。
モンゴル族内モンゴル自治区チベット仏教牧畜が主産業。
コワンシーチョワン族コワンシーチョワン族自治区民族宗教など南部山地に分布。
ニンシヤホイ族(回族)ニンシヤホイ族自治区イスラム教漢民族と近い文化を持つ。
主な少数民族とその特徴

※ウイグル自治区:8カ国と国境を接する緩衝地帯、原油の産出地、核実験場

※チベット:インドと直接国境を接している(→中国は常にチベットを管理)

しかし中国政府は、2001年に「中国語」を全国共通の言語とすることを正式に定めた。以後、学校教育やメディアなどでの中国語教育の強化が進められている。

要するに、中国は「ひとつ」ではない

ここまで見てきたように、中国は文化も言語も民族もバラバラ

人口の9割を占める漢民族ですら、地域によって話す言葉が違い、通じないこともある。さらに、50以上の少数民族がそれぞれの暮らしを営んでいる。

つまり、中国は決して「ひとつ」ではない。実態は、さまざまな民族と文化が共存する「多民族国家」なのである。

なぜ多民族国家なのか?

では、なぜ中国にはこれほど多くの民族が暮らしているのか?

そもそも広大

まず、中国はとにかく国土が広大である。面積は日本の約25倍。この広さ自体が、文化の多様性を生み出す土台になっている。

適度に分断される地形

中国の大地は広いだけでなく、起伏があり、さらに黄河と長江という2本の大河が流れている。

山や川によって自然に区切られた土地ごとに、人々が独自の文化や社会を築いてきた。

周囲との境界があいまい

また、中国は四方を完全に囲まれているわけではない。

北はモンゴル高原、西は中央アジア、南は東南アジアと接しており、周辺部には異民族が多く住んでいた。

それらの民族が交流・定住・融合する中で、今の多民族社会が形づくられていった。

「領土拡大」の歴史がある

歴代の王朝は、力をつけると周辺の乾燥地域や山岳地帯を征服していった。

たとえば、ウイグル族が暮らす新疆(しんきょう)や、チベット族のチベット高原などは、歴史的に中国の中央政権が後から取り込んだ地域である。

多民族国家ゆえの「悩み」

中国が「多民族国家」であることは、豊かな文化を生み出す一方で、国家としての安定にとっては大きな課題にもなっている。

その最大の理由は、民族ごとに異なるアイデンティティや歴史観を持っているということ。特に、中央政府の力が弱まったときには、民族単位で独立を求める動きが活発化するリスクがある。

現代でも、中国国内のいくつかの地域では独立を求める声が根強く残っている。

新疆ウイグル自治区トルコ系のイスラム教徒であるウイグル族が多数派。独自の文化・言語・宗教を持ち、独立志向が強い。
チベット自治区チベット仏教を信仰し、独自の歴史と宗教的リーダー(ダライ・ラマ)を持つ民族。こちらも独立を目指す運動が続いてきた。

つまり、中国政府、特に中国共産党は、「多民族国家のまとまり」がいつ崩れてもおかしくないという危機感を常に抱えているのである。

Q
実際に周辺地域が独立した事例がある

実際、中国の歴史を振り返れば、何度も異民族に支配されたり、周辺地域が独立したりしてきたことがわかる。

  • モンゴルは20世紀初頭、中国の混乱に乗じて独立した(※ただし、ソ連との関係から「緩衝国」として存在させておいた方が都合がよかった、という中国側の事情もあるだろう)。

中国は「ひとつ」ではなく、「まとめられている」にすぎない

中国を外から見ると「13億人以上が暮らす、巨大で統一された国家」という印象を受けがち。

しかし実際には、中国は言葉も文化も民族も多様な多民族国家である。

多様で分裂しやすい構造をもつこの国を「ひとつ」にまとめ上げているのは、政治的な強制力に他ならない。

  • 少数民族には強い締め付けを行う
  • 必要があれば、文化や言語を漢民族に同化させようとする
  • 漢民族社会の混乱を防ぐために、情報統制や思想教育も徹底する

現代中国を理解するためには、「多民族国家という前提」に立ち返って考える視点がとても大切である。

上海にて(2024.2撮影)

16章で「中国はいかにして中国になったのか」が論じられている。面白い。

参考文献

木村靖二他(2023). 『世界史探究 詳説世界史』. 山川出版社.

帝国書院編集部(2025). 『最新世界史図説タペストリー 二十三訂版』. 帝国書院.

矢ケ﨑典隆他(2023). 『新詳地理探究』. 帝国書院.

帝国書院編集部(2021). 『新詳 資料地理の研究』. 帝国書院.

ジャレド・ダイアモンド(2013). 『銃・病原菌・鉄 上巻』. 草思社.

ジャレド・ダイアモンド(2013). 『銃・病原菌・鉄 下巻』. 草思社.

もちおか
もちおか

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事、悪くないな、結構いいなと思っていただけた方はSNSでのシェアなど、お願いします!

Xnoteもやっています。ぜひフォローお願いします!

記事URLをコピーしました